疾患・特集

薬剤師さんに聞く漢方薬学入門

近頃あちこちでおしゃれな漢方薬局が増えている。西洋医学との違いから、私たちが普段の生活で料理に使ったりするおなじみの素材まで、疲れが溜まりやすい現代人にピッタリな漢方的生活ススメをご紹介。

漢方医学は西洋医学とどう違う?

近頃、あちこちでおしゃれな漢方薬局が増え、冷えなどに悩む女性を中心に人気を呼んでいる。そんな薬局のひとつ、東京・青山にある「むつごろう薬局」の薬剤師、村瀬さんに、漢方薬について教えていただいた。原料の品質が効き目を左右する生薬の一部を、無農薬で栽培まで手がけているお店である。

西洋医学で使われる薬は、ひとつの成分を精製、抽出して作り出した粉や錠剤が中心である。頭痛にはこの薬、風邪にはこれと、症状によって処方する薬が決まっている。これに対し漢方薬は、その人の体質などに合わせて天然の生薬をいくつか組み合わせて処方する

症状そのものを治そうとする西洋医学に対し、漢方では、症状を引き起こす原因を探り取り除こうとするため、治療には時間がかかることが多い。むつごろう薬局の場合、効果が現れてくるのが、だいたい1ヵ月。その後、薬を減らして自然治癒力を利用しつつ、数ヵ月かけて体質改善を行う治療を続ける、というパターンが中心だという。

身近なところにも、こんな漢方薬

漢方薬の原料は、樹皮、葉、根、実などの植物由来のものが9割以上。そのほか、竜骨など化石や鉱物、牡蠣(ぼれい)など動物性のものもある。生のものを乾燥させ、煎じて作るのが基本である。漢方薬として使われる植物はたくさんあるが、中には私たちが普段の生活で料理に使ったりするおなじみのものもある。代表的なものを紹介しよう。

部位と名称 薬効
樹皮 肉桂(シナモン) 桂皮(けいひ)、桂枝(けいし)ともいう 香りが強く、「気」を押し下げる。 のぼせ、皮膚の症状を抑える。
葉 蘇葉(そよう)紫蘇の葉 香りにリラックス作用がある。風邪、精神的な落ち込みに効く。
根 生姜、乾姜(かんきょう)ともいう 胃腸の水分を除いて内臓機能を高める。

疲れやすい現代人の味方!

漢方が注目されるのは、西洋医学では病気とみなされないような、さまざまな体の不調に対応してくれるという側面もある。例えば、仕事を持つ人たちに多い悩みとして「疲れ」がある。仕事のやる気が起こらない、なんとなく体がだるい、階段を昇るのがつらい……など。こんなとき、漢方では「気」「血」「水」と大きく3つに分けて原因を考える

「気」「血」「水」

「気」は、自律神経のバランスが崩れるなど精神的なもの。「血」は貧血など血液循環が悪くなっている状態。「水」は夏バテなど新陳代謝が悪くなっている状態だ。

漢方薬局では、疲れを感じ出した時期や症状についてくわしく聞き、食事、睡眠などの生活習慣についてもたずねる。年齢や体格、表情なども診断の材料とする。

漢方的生活のススメ

昔の人は、雑穀や玄米、芋、豆、野菜など、一見粗末に思えるが命あるものを食べていた。しかし、科学技術が発展した今、私たちが口にするのは、米も白米、砂糖や小麦粉なども精製したものや、加工食品といった「死んだもの」が増えてしまっている。冬場でも、体を冷やす夏野菜であるトマトやきゅうりが店先に並ぶなど、季節に関係なく食べ物が手に入る。 現代人の弱さや不妊などは、もしかするとこういった食生活が原因かもしれない。できるだけ、旬のものを中心に食べ、自然塩や玄米を使うなど、自然に近いものを食べるように心がけよう
そして、体の調子が悪いが病院に行っても「どこも悪くない」と言われたなら、一度漢方薬局に相談してみるのもよいかもしれない。

体を冷やす食べ物、温める食べ物

温める冷やす

玄米じゃがいもこんにゃくもち米
大豆納豆にら干ししいたけ
自然塩日本酒
ご飯とうもろこしソラマメかぼちゃ
にんにくたまねぎきのこなし
植物油ハトムギ茶  
ほうれん草パンそばバナナ
ヨーグルトコーヒービール緑茶
砂糖もも  

取材協力・資料提供:むつごろう薬局

公開日:2004年5月31日