疾患・特集

転ばぬ先の杖「予防接種」

天然痘、結核…。かつて人々を脅かした多くの伝染病が、ワクチンの開発により、あたかも地上から姿を消したかのように思われている。しかし近年になって、忘れ去られていた感染症がとつぜん、流行し始めてもいる。予防接種は大切な「転ばぬ先の杖」。感染を広げないためにも、なるべくなら受けておこう。

予防接種にはどんな種類があるの?

●生ワクチン

生ワクチン

生きたままの病原菌を、毒性を弱めてつくったワクチン。接種することでその病気にかかったときと同じ状態にし、免疫を作り出す。ただし、きちんと免疫ができるまでは時間がかかるので注意が必要。また、接種後は発熱、発疹などが起きやすい。
…BCG、ポリオ、麻疹(はしか)、風疹(ふうしん)など

●不活化ワクチン・トキソイド

ウィルスや細菌をいったん殺し、必要な成分だけを抽出してつくったワクチン。病原菌は体内で増殖しないので、何度か接種することで、細胞に抗原を記憶させ免疫をつくる。
…日本脳炎、DPT・DT(3種混合・2種混合)など

予防接種はみんなが受けなくてはいけないの?

もちろん、予防接種を受けることは義務ではない。厚生労働省は、ぜひ受けるように努力してほしい予防接種「勧奨接種」として以下の7つを挙げている。ちなみに対象者なら無料だ。そのほか、できれば受けておきたい任意の予防接種もある。

  接種回数 標準的な接種年齢 対象年齢
BCG 1回3~4ヵ月4歳未満のツベルクリン反応陰性者
ポリオ 2回3ヵ月~1歳6ヵ月3ヵ月~7歳6ヵ月
DPT 3種混合
(DT 2種混合)
1期初回3回3ヵ月~7歳6ヵ月
1期追加 1回1期終了後1年~1年6ヵ月後3ヵ月~7歳6ヵ月
2期(DT)1回小学校6年11~12歳
麻疹(はしか) 1回1~2歳未満1~7歳6ヵ月
風疹(ふうしん) 1回1~3歳未満1~7歳6ヵ月
日本脳炎 1期初回 2回3歳6ヵ月~7歳6ヵ月
1期追加 1回4歳6ヵ月~7歳6ヵ月
2期 1回小学校4年9~13歳
3期 1回中学校2年14~15歳
インフルエンザ※ 1回
毎年接種が必要
65歳以上、60~65歳の一部

※65歳以上、60~65歳未満の人の一部には、「2類勧奨接種」とされている

できれば受けておこう(任意)

  接種回数 対象年齢
おたふくかぜ 1回1歳~
水痘 1回1歳~
インフルエンザ 13歳未満2回
13歳以上1回
毎年接種が必要
指定なし(通常6ヵ月~)
A型肝炎 3回16歳~
B型肝炎(母子感染予防) 3回0歳~
B型肝炎(一般) 3回

予防接種は大人も必要なの?

●高齢者はインフルエンザワクチンを

高齢者

インフルエンザは重症化すると気管支炎、細菌性肺炎などを引き起こしかねない怖い病気。ワクチンは、その年の冬、流行する可能性のあるA型インフルエンザウイルス2種と、B型インフルエンザウイルス1種を混合したものが、毎年あらたに製造される。流行株とワクチン株が一致すれば、予防効果は期待できる。2001年の予防接種法改正以来、高齢者への接種が一部公費負担で実施されるようになった。

●妊娠・出産を考える女性は風疹、麻疹ワクチンを

妊娠・出産を考える女性

これから妊娠・出産をひかえる女性におすすめなのが風疹(ふうしん)、麻疹(はしか)ワクチン接種。ことに大人の麻疹は最近、日本各地でみられるようになり、油断はできない。また、1979年4月2日~1987年10月1日生まれで、風疹にかかったことがない女性も、ぜひ予防接種を受けておこう。ただし、接種後3ヵ月間は避妊が必要。詳しくは専門医に。

●海外旅行前に予防接種を

海外旅行に行く人

このほか海外旅行に行くときにも、ぜひ予防接種を受けておこう。感染症が流行している地域を訪れる場合はなおさら。破傷風、A型肝炎、日本脳炎、ポリオ、ジフテリア、麻疹(はしか)、狂犬病の予防接種を受けたことのない人は、流行状況を調べたうえで、積極的に受けるとよいだろう(ただし、A型肝炎予防接種を受けられるのは16歳以上のみ)。 東南アジア、インド、南アフリカなど、入国に際し、黄熱ワクチンの接種済み証明書を求める国もある。

こんなときは接種を避けよう

不健康な状態では予防効果どころか、危険な状態に陥ることも。こんなときは予防接種を避けよう。

  • ●発熱している
  • ●重い急性疾患にかかっている
  • ●アレルギーを持っている
  • ●妊娠している

予防接種の実施は、市町村によって方法や時期が異なる。集団接種をおこなう場合もあれば、個別接種をする所もある。詳しくは地域の保健センターなどに問い合わせよう。

参考サイト:国立感染症研究所 感染症情報センター

公開日:2004年3月15日