ますます高齢化が進む日本。総務庁の人口統計によれば、2002年10月現在、65歳以上の人口は2,363万人に達している。総人口の18.5%と、およそ2割を占める計算だ。こうした事情を背景に、介護問題は国民的課題として深刻さを増しつつある。そこで2000年4月、あらたにスタートを切ったのが介護保険制度だ。しかし、制度のシステムはかなり複雑なもの。施行されてはや3年が経ったものの、どんな仕組なのかよくわからない…、という人も少なくないのではないだろうか?
介護保険制度が適用されるのは、65歳以上の「1号被保険者」と、40歳~64歳の「2号被保険者」。ただし、1号保険者には、全員に被保険者証が交付されるが、2号保険者では、被保険者証交付は申請した人にのみ行われる。
被保険者は、介護保険制度を利用するしないにかかわらず、全員が保険料を支払わなくてはならない。料金は市区町村別に決められており、まちまちだ。さらに1号被保険者では、所得に応じて負担額が変わる。2号被保険者の場合も、加入している健康保険によって料金は違っている。ちなみに2003年度の1号被保険者の保険料は、全国平均で月額3,293円である(読売新聞2003年5月27日による)。また、実際にサービスを受けた際に自分で払う金額は、料金の1割である。
STEP1 | 市区町村の介護保険窓口に要介護認定を申請する |
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STEP2 | 後日、調査員による家庭訪問調査がおこなわれる。心身の状態、最近受けた医療内容などさまざまな質問をされる。 |
STEP3 | この調査結果をもとに、専用のコンピュータソフトで要介護レベルが割り出される。これが1次審査だ。 |
STEP4 | 2次審査では各自治体の介護認定審査会によって、1次審査の判定を検討される。このとき、本人や家族は、参考資料としてかかりつけ医の意見書も提出しなくてはならない。 |
判定レベルは、「要支援」「要介護度1~5」の計6段階に分かれている。要介護度が高い人ほど、サービス利用料の支援費は高くなる。反対に、「要支援」に達しなかった人は、介護保険の適用を受けることができない。
要介護度が決まると、いよいよ利用するサービスの内容を選ぶ。このサービスの計画「ケアプラン」を作成するのは、ケアマネージャーという専門家。在宅で介護するのか、施設入所するのかを決め、それにかかわるさまざまなサービスを盛り込んでゆくのである。
要支援 社会的支援を要する |
日常生活の能力は基本的にあるが、身の回りのことで、一部に何らかの介助が必要。 | 在宅サービスのみ利用可能 |
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要介護度1 部分的介護を要する |
身の回りのことに何らかの介助が必要。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えが必要。 移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。 |
在宅サービス・施設サービスが利用可能 |
要介護度2 軽度の介護 |
身の回りのことに何らかの介助が必要。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えが必要。 移動の動作に何らかの支えが必要・排泄や食事に何らかの介助を必要とすることがある。 |
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要介護度3 中等度の介護を要する |
身の回りのことが自分ひとりでできない。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作が自分ひとりでできない。 移動の動作が自分ひとりでできないことがある。 排泄や食事が自分ひとりでできない。 |
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要介護度4 重度の介護を要する |
身の回りのことがほとんどできない。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。 移動の動作が自分ひとりでできない・排泄がほとんどできない。 |
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要介護度5 最重度の介護を要する |
身の回りのことがほとんどできない。 立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。 移動の動作がほとんどできない・排泄や食事がほとんどできない。 |
介護保険制度をいかに効率よく活用できるかは、おもにケアマネージャーの手腕にかかっているといってもいいだろう。地域の家族会、介護に関するNPO(非営利組織)に情報をもらうなどして、実力ある、公正なケアマネージャーを探そう。
要介護認定に不服がある場合も、 異議の申し立ては可能だ。ただし、認定結果が知らされてから60日以内におこなわなくてはならない。裁決までにさらに時間がかかることを考えると、不服申請は早めにしたほうがよい。
国で決められた介護保険制度の決まり以外に、市区町村によっては独自の「オマケ」を設けている。プラスアルファのサービスを付け足す「上乗せ」と、基準を緩める「横出し」だ。どんなサービスがあるかは、それぞれの自治体の窓口に確認しよう。
いざという時にあわてないよう、あらかじめ長期的な計画を立てておきたいもの。家族だけではなく、周囲の協力者や頼れるサービス機関をおさえたうえで、かしこく介護保険制度を活用しよう。