疾患・特集

激痛とともにやってくる。「痛風」ってどんな病気?

風が当たっただけでも痛い、というほどの激痛を伴う痛風。患者は95%が男性で、30~50代に多い。痛風の原因は、尿酸値が高くなることだが、その尿酸のもとになっているのは「プリン体」と呼ばれる物質である。

痛風は「とにかく痛い!」

ある日突然足の親指のつけ根が激痛に見舞われる。この発作が起こるとたちまち赤く腫れてしまい、ほんの少し動いたり、近くを車が通りすぎる音さえも足に響き、新たな激痛を覚えてしまう。まさに、字のごとく「風が当たっただけでも痛い」病気が痛風だ。

これほど痛い痛風なのに、激しい痛みは一時的なもので、長くても1~2週間しか続かない。その後は何事もなかったかのように痛みが治まってしまうので、「あれ、治ったんだ」と勘違いしてしまうことも多い。しかし、発作が治まったからと言ってこの病気が改善されたわけではない。痛みがなくても症状が進行中ということがあるので、注意が必要だ。

痛風はぜいたく病!?

西洋では古くからよく知られた痛風だが、日本で初めて痛風患者の報告があったのは、約100年前のこと、第二次世界大戦以降の1960年ごろから痛風にかかる人が急増し、現在では約50~60万人にものぼると言われている。
当時、痛風は「ぜいたく病」とも言われたように、美食や大酒が関係した病気であり、毎晩のように晩餐会を開いてぜいたくをした上流階級の人がかかる特別な病気だと考えられていた。しかし、最近では食生活が変化し、ごく一般的な病気へと変わってきたのだ。

尿酸がたまると痛風に

痛風のおこりやすい箇所 痛風のおこりやすい箇所

食生活と深い関わりのある痛風は、血液中に「尿酸」という物質が増えてしまうことによって起こる。
尿酸は、健康なときには液体に溶けた形で存在しているが、これが過剰に増えてしまうと針状の結晶になって体のいろいろな場所に沈着する。とくに関節などに沈着した場合に激しい痛風発作を起こすのだ。
「痛風」は約70%が足の親指のつけ根が痛くなる。それ以外にはひじやひざ、かかと、足の親指以外の関節、くるぶしなどで発作が起こり、最初の発作では約90%が足の指の関節周辺で起こると言われている。

尿酸の産生と排泄のバランスが崩れると痛風になる

尿酸は体内で「プリン体」と呼ばれる物質が分解されてできるもの。プリン体とは、動植物の細胞の核や染色体の中にある、遺伝に関わる核酸という物質の成分だ。
プリン体は食事から摂りこまれるだけではなく、新陳代謝によっても産生される。そして、肝臓で代謝されて尿酸となる。尿酸は腎臓で老廃物となり、結局のところ排泄されてしまう。つまり、人の細胞が生命活動をする中で、その老廃物として尿酸が作られているのである。

尿酸が増えてしまう理由のひとつは体内で尿酸がつくられ過ぎる場合。これは、体内の尿酸合成が多すぎたり、プリン体を含む食べ物を摂り過ぎてしまうことが原因だ。
もうひとつは尿酸の排泄がうまくいかず、たまってしまう場合。日本人はこのタイプで痛風になることが多いようだ。

健康な人の場合は常に約1,200mgの尿酸が蓄積されている。そのうち半分以上の尿酸が毎日入れ替わっている。排泄される尿酸のうち、4分の3は尿として、残りは汗や便として排泄される。しかし、この排泄がうまくいかなくなるとバランスが崩れてしまい、尿酸が体内にたまってしまうのだ。

尿酸の産生と排泄のバランスが崩れると痛風になる

尿酸値が高いまま放っておいてはダメ

尿酸が高いかどうかは健康診断や人間ドックの血液検査で分かる。

■尿酸値の基準値

正常値 7.0mg/dl以下

尿酸値の平均値は年齢や性別によって多少変動があり、男性で4.0~6.5mg/dl、女性では3.0~5.0mg/dlが正常と言われている。ただし、男女ともに7.0mg/dl以上になると「高尿酸血症」と呼ばれる。
しかし、高尿酸血症だからといってすぐに痛風の発作が出るわけではなく、長年放置しておくと尿酸の結晶が関節などに蓄積して激痛をもたらす痛風になってしまうのだ。

ちなみに、痛風発作が起きても治療をせずに放っておくと、関節だけではなく関節の周囲や軟骨、皮下組織などにも尿酸の結晶がたまり、「痛風結節(つうふうけっせつ)」といわれるこぶができる。触っても痛みはないため、気がつかないうちに大きくなってしまうこともある。

また、尿酸は腎臓から尿として排出されるので、尿酸が増えれば腎臓にも負担がかかる。処理しきれなかった尿酸が結晶化して腎臓の中にたまってしまい、腎障害を起こしてしまうのだ。腎障害を気がつかずに放っておくと腎不全、さらに尿毒症を起こし、死に至ることもある。
また、高尿酸血症の人が、高血圧や糖尿病、高脂血症などの合併症を起こしていることも少なくない。
いずれにせよ、検査で尿酸値が高めだと診断されたら、専門の医療機関を訪れて異常がないかチェックしよう。

痛風結節のできやすい箇所

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公開日:2003年7月22日