疾患・特集

卵のコレステロールは善か悪か?卵とコレステロールの気になる関係

卵は栄養バランスの取れた完全食品。しかし、コレステロールが高くなるからと敬遠している人も多い。そんな卵とコレステロールの気になる関係を解説する。

日本人は卵が大好き!?

卵

さて問題。私たち日本人は年間どのくらい卵を食べている?

農水省の資料によると、平成9年の1人当たりの卵の供給量は17.6kg。これを卵の個数に換算(※)すると、なんと335個。1日1個、食べている計算になるのだ。
確かに、目玉焼きや卵焼きなど食事だけでなく、デザートやマヨネーズなど、あらゆる場面で卵は活躍している。
世界的に見てもイスラエルに続いて第2位と、日本人は卵が大好きなのだ。

※1人当たり鶏卵供給量個数=1人当たり鶏卵供給量÷殻換算0.86÷61g

卵はコレステロール値を高くする悪者?

しかし、卵が大好きという人も、「卵は1日1個まで」と決めている人が多いはず。
その理由は、「卵を食べ過ぎるとコレステロールがたまる」と思っているからだろう。しかし、コレステロールは必ずしも悪者ではないのだ。

コレステロールはなぜ必要?

コレステロールは人間にとってなくてはならない存在なのだ。

  • ●コレステロールとは脂質の一種で、本来人間の細胞の細胞膜をつくったり、脂肪の消化に必要な胆汁酸の原料に欠かせない栄養素だ。
  • ●コレステロールが少なくなると、血管が破れやすくなったり、免疫力が低下するなどの障害が現れる。
  • ●人間はコレステロールを食物から摂取するだけでなく、体内でも合成している。

なぜ嫌われている?

これほど人間にとって必要なコレステロールなのに、なぜ悪者扱いされてしまうのだろう。それは、過剰なコレステロールがさまざまな疾患をもたらすからだ。

  • ●血中のコレステロール値が高くなると「高コレステロール血症(高脂血症)」と言われ、血管の内壁に余分なコレステロールを付着させてしまう。
  • ●その結果、動脈硬化を引き起こし、さらに心疾患や脳血管疾患を招く恐れがある。
  • ●血中コレステロール値を上げてしまう原因のひとつに、高コレステロール食品の摂り過ぎが考えられている。

コレステロールは悪者?

そもそも、コレステロールが悪者のように言われるようになったのには、ある説がある。
1913年、ロシアの病理学者ニコライ・アニチコワがウサギにコレステロールを与えた実験を行い、大動脈にコレステロールが付着して動脈硬化が起こったことから、コレステロールが動脈硬化の原因であるとして発表した。
しかし、その後の研究で、ウサギは草食動物であり、普段はコレステロールなどまったく摂取しない動物であるため、ウサギにコレステロールを投与した場合、そのまま反映されて血中コレステロールが急上昇してしまうことが分かった。
一方、人間は普段から肉などを食べることでコレステロールを摂取しており、その量に応じて体内で合成する量を調節し、コレステロール値を一定に保つ仕組みができているため、ウサギの実験がそのまま当てはまるわけではないのだ。

さまざまな研究により、現在では高コレステロール食品が必ずしも悪者ではないと言われている。
ちなみに、健康の面から1日に摂取するコレステロールは300mg以下が望ましいとされているのに対し、卵黄1個に含まれるコレステロールは約250mg。これでは卵が高コレステロール食品として敬遠されてしまうのも無理もないだろう。しかし、最近では卵は栄養バランスのとれた完全食品であると言われている。

卵を食べてもコレステロールは大丈夫?

卵とコレステロールの関係を調べるための実験は、今日までに数多く行われている。
例えば、東海大学医学部の本間康彦氏らにより、卵黄3個分のコレステロール(750mg)を毎日摂取した場合の2週間後の変化を調べる実験が行われた。この実験では、悪玉コレステロールが上昇した人は全体の35%程度で、残りの65%の人は変化しないか低下した、という結果が得られた。また、善玉コレステロールについては上昇した人が約44%もいたのである。

ただし、高コレステロール血症(高脂血症)の人や、普段からコレステロール値が高めの人は、体内で合成されるコレステロールと食物から摂取するコレステロールのバランスをうまく調節できていないことが考えられる。そのため、やはりコレステロール摂取量は控えたほうがよい

血液中の脂質の異常値

総コレステロール 220mg/dl以上だと高コレステロール血症
悪玉コレステロール(LDLコレステロール) 140mg/dl以上だと高LDLコレステロール血症
善玉コレステロール(HDLコレステロール) 40mg/dl未満だと低HDLコレステロール血症
中性脂肪 150mg/dl以上だと高中性脂肪血症

出典:動脈硬化性疾患診療ガイドライン 2002年版

公開日:2003年5月12日