最近人気のスプラウト。姿はひょろひょろっとしているが、スプラウトは立派な野菜。特に、ブロッコリーのスプラウトは、がん予防に効果があると言われている。スプラウトの見た目以上のパワーを紹介する。
最近、スーパーなどで見かけるようになった「スプラウト」という野菜をあなたは知っているだろうか。実は、「スプラウト」とは、植物の新芽のこと。見た目の姿はかいわれ大根とそっくりで、ひょろひょろっとしたものを束ねたパックがスーパーなどで売られている。
スプラウトは、テレビや雑誌などでも取り上げられ、人気急上昇の野菜である。どうやらそのヒミツは、成熟した野菜よりはるかに多くのビタミンやミネラルなどの栄養分を含み、体にいい成分がいっぱい詰まっているところにありそうだ!
1982年にアメリカ科学アカデミーより『食と栄養とがん』という有名な報告書が提出され、がん予防に期待される食品成分が発表された。その内容は、がん予防には食物繊維をたっぷりとることが必要で、その他ビタミンA、C、Eなどの抗酸化ビタミンやカロチン類なども重要であるというもの。ほかにもイオウ化合物やポリフェノールなどにもがん予防が期待できるそうだ。
この報告書は世界中の研究者に大きな影響を与え、のちにアメリカ国立がん研究所を中心にスタートした「デザイナーフーズ計画(植物性食品によるがん予防)プロジェクト」の支えにもなった。
このプロジェクトが注目したのがアブラナ科の植物。アブラナ科の植物には、発がん性物質の活性化を抑制する可能性があるというのだ。数あるアブラナ科の植物の中でも、最近注目されているのがブロッコリー。ブロッコリーには「スルフォラファン」という成分があり、この前駆物質の配糖体(グルコシノレート)がブロッコリーの新芽「スプラウト」に大量に含まれ、発がん抑制効果が確認されている。
「スプラウトを食べればがんが予防できる」。これが、人気のヒミツだったのだ!
キャベツ、ブロッコリー、ケール、カリフラワー、芽キャベツ、ダイコン、ハクサイ、カブ、コマツナ、チンゲンサイ、ワサビなど
スプラウトの成分、スルフォラファンはどのようにしてがんを予防するのだろうか。
「スルフォラファン」のがん予防作用
発がん性物質は、大気汚染や化学物質、食物、たばこの煙など数多く存在し、人間は毎日それらを取り込んでいる。取り込まれた発がん性物質が体内の細胞を攻撃し、細胞内の遺伝子に異常を起こす。その傷を受けたDNA細胞が分裂して突然変異のがん細胞が発生する。さらにがん細胞が増殖して周囲の組織を侵していく。こうしてがんが進行していくのだ。
通常ならば、体内にある酵素類の2段階のはたらきを経ることで発がん性物質は解毒され、体外に排出される。それぞれ主に肝臓で作られるフェーズ1(第1相)、フェーズ2(第2相)という酵素だ。フェーズ1酵素が体内に入った発がんの外的因子を分解して発がん物質に変えるというはたらきをするのに対し、フェーズ2酵素は活性化された発がん物質を無毒化するはたらきがある。
このフェーズ2酵素を活性化させるはたらきが「スルフォラファン」にはあり、発がん物質を無毒化して体外へ排出するというのだ。
スルフォラファンは、アブラナ科の野菜に含まれる、イソチオシアナートの一種。イソチオシアナートとは、ブロッコリー、大根、わさびなどのアブラナ科の野菜や、スパイスなどに豊富に含まれている、ピリッとする辛味成分だ。