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清楚な実力派「菜の花」を見直そう

本格的な春の訪れを教えてくれる春の花「菜の花」。緑黄色野菜としての実力も、あらためて見直すべきほどに高い。菜の花の栄養や利用法について紹介する。

早春の風物詩「ナバナ」は油菜!?それとも菜種!?

畑や土手などの一面に愛くるしい黄色い花を咲かせ、本格的な春の訪れを教えてくれる春の花「菜の花」。かつて作家・司馬遼太郎氏がこよなく愛した花としても知られる清楚で陽気な花だ。
この菜の花、植物分類学上では「アブラナ科アブラナ属」に分類される。同じ仲間に白菜やカブ、ブロッコリー、キャベツ、さらにはチンゲン菜やケールまで含まれるというから驚きだ。その数はアブラナ科だけで世界に約35属3,000種類もあるとか。

そうした数ある仲間のうち、現在、菜の花として日本で栽培されているものは2種類。遠い昔に中国から渡来した「油菜」と、明治時代に輸入された西洋種の「菜種」だ。どちらも種子から油を取るが、西洋種の菜種のほうが油量が多いことから、明治以来さかんに栽培されるようになり、現在は栽培の主流は菜種となっている。料理用として広く使われている「菜種油」は、この菜種から取れるオイルだ。

一方、油菜は野菜のひとつとして長く栽培されてきたが、平安時代に種子から油を取ることが知られるようになったという。この油菜から取る油は、料理用ではなく、灯油として使われ、江戸時代には行燈(あんどん)の普及とともに、行燈用の灯油として重宝されてきたという歴史を持っている。

今では油菜から取れた油が灯油として使われることはほとんどなく、栽培の主役の座も菜種に明け渡した格好だが、春だけは別。「菜の花」もしくは「菜花(ナバナ)」、「花菜(はなな)」として春の野菜売場に並んでいるのは、ほとんどが油菜のつぼみと茎なのだ。

カルシウムは牛乳の約1.5倍!侮れない栄養価

緑黄色野菜としての実力も、あらためて見直すべきほどに高い。
その筆頭としてあげられる特長が、カルシウムと鉄分を多く含んでいる点。カルシウムはなんと牛乳の1.5倍もあるのだ。
カルシウムは骨の生成に欠かせないほか、不足するとイライラの原因になり、鉄分は不足すると頭痛や集中力の低下、貧血の原因にもなるもの。

また、ビタミン類が豊富なところも見逃せない。特に、美肌や老化防止に効果のあるビタミンC、「目のビタミン」とも称されるビタミンA、そして抗酸化作用のあるカロチンが多いのが魅力だ。

食物繊維も豊富で便秘の改善も期待できるとあれば見逃せない。この春は、どんどん菜の花を食べよう!

ちょっと意外な利用法も

現在、利用されているのは、野菜としての「菜の花」ばかりではない。実は、欧米では昔からミツバチの集めた花粉を「パーフェクトフード」などと呼び、アミノ酸やミネラルなどが豊富に含まれるバランス栄養補助食品として愛用してきた。

また、菜種油といえば料理用と思いがちだが、石けんの材料や化粧品にもなっている。さらにアロマテラピーの世界では、肌のお手入れに良いキャリアオイル(マッサージなどの際に使用されるエッセンシャルオイルを薄めるためのベースオイル)として使われているとか。

もっとユニークなところでは、家庭で使われた後の菜種油を回収し、クルマの軽油代わりに使おうという取り組みがはじまっている。ドイツやフランスなどではすでに取り組みはじめているが、日本でも一部で実験がスタートし、すでに何台かのクルマが廃油で走っているという。まさに、循環型社会の体現といえる取り組みだ。今後、この取り組みが前進すれば、日本のいたる所で菜の花が見られ、新しい「環境にやさしい生活」がはじまるかもしれない。

公開日:2003年3月10日