疾患・特集

古くて深いヒトとミツバチの関係

ミツバチ社会と人間との関わりの歴史から、ミツバチ社会での「ハチミツ」「ローヤルゼリー」「プロポリス」の違い、そして、それぞれで異なる成分や効能についてご紹介します。

古代エジプト時代には、すでにはじまっていた養蜂

ミツバチの世界

休日もなくよく働く人のことを「働きバチ」と言うが、ところで、実際の働きバチはみ~んなメスだということにお気づきだろうか。ミツバチの世界は圧倒的な女系社会。女王バチ一匹に対して、何万匹もの働きバチが仕え、オスはほんのわずか全体の約10%と言われている。

このミツバチたちと人間との関わりは、想像以上に古くて長い。古代エジプト時代にはすでに人の手によって養蜂が行われ、採蜜されていたことがわかっている。また、古代ギリシャの哲学者アリストテレスの「動物誌」からは、その頃すでに打撲症や化膿したキズの治療にプロポリスが使われていたことが伺えるという。
パリのオペラ座の屋根の上でミツバチが飼われていることをあげるまでもなく、ヨーロッパの人々の暮らしと養蜂の結びつきもなかなかに深い。ヨーロッパの作家の小説を読むと、自宅の庭などで養蜂している話が出てきたりするが、実際に家族のようにミツバチを飼っている人も多いようだ。

特にイギリスでは、飼い主が死んだときには家の鍵で巣箱を3回たたき、死のいきさつを詳しく説明して巣箱に黒い布を掛ける古い風習があるとか。これをしないと悲しんだミツバチが巣から逃げ出したり、巣箱の中で「殉死」したりすると言われている。また、飼い主の娘が結婚するときも同様。新郎の名前なども含めてきちんと伝えておかないと、怒ったミツバチが誰かれ構わず人を刺すと言われている。
もちろん日本での養蜂も実に千年を越す歴史を誇る。特に盛んになったのは江戸時代から。あの「養生訓」で知られる貝原益軒が著した「大和本草」によると、土佐産のものが最高級だったとか。ただし、この頃に蜜を取っていたミツバチは、現在主流の西洋ミツバチではなく、日本ミツバチ。
日本ミツバチは習性や採蜜法が西洋ミツバチとは異なるため、たくさんの種類の花の蜜を集めた「百花蜜」タイプが多く、江戸時代には「百花ノ精」などと呼ばれていたとか。何とも雅趣ある名前である。種類は違えど、ミツバチのくれる滋味あふれる恵みは、日本でも昔から愛されていたと言えよう。

さて、こうして古今東西、古くから利用されてきたミツバチの恵みだが、最も広く親しまれているのは何と言ってもハチミツだろう。そして今日、ローヤルゼリーが脚光を集め、さらにプロポリスが人気を博している。ところで、これらはミツバチの社会では一体どんな役割を果たすものなのだろう。

ハチミツ、プロポリス、ローヤルゼリーの違いはここにあり

ミツバチの巣の構造

ミツバチの社会では、ハチミツ、ローヤルゼリー、プロポリスはまったく別モノ。当然、使われ方が違うし、含まれている成分も違う。

簡単に言うと、ハチミツは働きバチの主食、ローヤルゼリーは女王バチだけの、そして女王バチ唯一の食べ物。プロポリスは、あの独特の六角形をした巣穴の中を清潔&無菌に保つために作られる成分、つまりプロポリスはミツバチにしてみれば食べ物ではないのである。

参考:「21世紀こども百科」小学館

公開日:2003年2月24日