性感染症はかつては「性病」といわれ、遊んでいる人がかかる特殊な病気というイメージが強かったのですが、今日ではありふれた感染症のひとつにすぎません。危険な性行為をしないから「自分だけは大丈夫」などと安易に構えず、ぜひ正しい知識を持っておきましょう。
あなたは「STD」という言葉を聞いたことがありますか?「性感染症(STD=sexually transmitted diseases)」のことで、セックスによってうつる病気全般をいいます。かつては「性病」と呼ばれ「遊んでいる人の病気」というイメージが強かったのですが、現在はインフルエンザなどと同じ感染症のひとつと考えられ、セックスをしたことのある人なら誰でもかかる可能性のある病気となっています。
性感染症の範囲はとても広く、クラミジア、性器ヘルペス、淋菌感染症、毛じらみ・疥癬(かいせん)、子宮頸がんの原因になる尖形(せんけい)コンジロームやウイルス性肝炎(B型・C型肝炎)などがあり、さらにHIV感染症(エイズ)や白血病の一種(ATL)まで含まれます。
「新宿さくらクリニック」院長・澤村正之氏によると、「性感染症とはもともと感染力が弱い病原体が、濃密な接触によって感染していくもの」だといいます。
「概念的には性感染症の病原体は特定の『誰か』に寄生するのではなく、セックスという『行為』に『寄生』することによって、古来から今日まで生き残り、世界中に広まってきたともいえるのです。人類存続にかかわる行為に寄生する病気だと考えると、恐ろしいですよ」。
危険な性行為をしないから「自分だけは大丈夫」などと安易に構えず、ぜひ正しい知識を持っておきましょう。
性感染症の罹患者のピークは女性では20代前半で人口の2.6%、男性では20代後半で人口の1.8%となっており、この世代では「ありふれた病気のひとつ」と言われています(罹患者とは医療機関を訪れて診断のついた人。無症状の感染者はこれの5倍に相当すると推定されます)。
性感染症が増え続けている原因は次のことが考えられます。
出典:2001年度STD・センチネル・サーベイランス報告
注:統計にでているのは調査医療機関で診断がついた患者のみ。
無症状の感染者はこれの約5倍に相当すると推定される。
2001-2002年の全国統計によると、全年齢層で性感染症の男女比は女性が男性の1.2倍、クラミジアについては1.9倍。20代に限れば、全STDで1.5倍、クラミジアは2.4倍でした。さらに10代では男女差がもっと顕著で、全STDで1.8倍、クラミジアは4.1倍にものぼります。女性は性器の内側が感染経路となる粘膜で覆われているため、感染しやすくなっています。さらに性器が体の奥の方にあるため感染に気づきにくく、進行しやすいこともあります。男女ともに性感染症を放置しておくと不妊症や果てはガンの一因ともなり、問題は深刻です。女性の場合は特に流産の危険性もあります。
出典:2001年度STD・センチネル・サーベイランス報告
注:統計にでているのは調査医療機関で診断がついた患者のみ。
無症状の感染者はこれの約5倍に相当すると推定される。
性感染症はとにかく予防が肝心。そのためには「コンドームを使用すること!」につきます。妊娠を望まないセックスなら、インサート時だけでなく最初から最後までコンドームを装着しておきましょう。
また、セックスパートナーが複数いたり、出血を伴うセックスをすることは、リスクの高い行為と心しておきたいところです。
最近の性感染症の検査は痛くなく簡単に済む方法も普及してきていますし、もしも陽性と診断されても専門医によってきちんと処方された薬を服用することでほとんどの性感染症は治せます。「症状が軽いから」とか「恥ずかしいから」という精神的な抵抗感から病院に行かずに病気を進行させてしまうことだけは避けましょう。
以下の点に心当たりがあるなら、迷わず専門医に診せることをおすすめします。