疾患・特集

腸の病気が増えている!若い世代の腸が危ない

外出先で急に下痢になったり、慢性的な便秘などでお腹が痛くなるのは、腸にトラブルがあるサインです。とくに、若年層に増えている潰瘍性大腸炎やクローン病を中心に、どんな病気なのか、症状などをご紹介します。

腸の病気が増えている

グラフ:腸の病気が増えている
出典:「潰瘍性大腸炎」
福島恒男著 保健同人社

食生活の欧米化に伴って、大腸がんの患者が増えている、と言われているが、増えているのは大腸がんだけではない。それと同時に腸疾患、例えば過敏性腸症候群や、潰瘍性大腸炎やクローン病などにかかる人も増えているのだ。
あまりなじみのない病名かもしれないが、潰瘍性大腸炎やクローン病は厚生労働省から難病指定を受けている病気で、しかも若い世代に増えているというからやっかいだ。

ところで、腸ってどんなはたらき?

口から入った食べ物は、胃や腸を通って肛門から便となって出る。その通り道は口から肛門まで約6mあり、消化管と呼ばれる。胃で消化された食べ物は、小腸へ送られ、その後大腸へ送られる。

小腸、大腸のはたらき

消化管

  • ●小腸
    長さ3~4mの臓器。前半を空腸、後半を回腸といい、食べ物を細かく攪拌して約90%の栄養分や水分を吸収する。
  • ●大腸
    長さ1~1.5mの臓器。小腸から送られてきた残りかすは、回腸(上行結腸→横行結腸→下行結腸→S状結腸)から結腸、直腸へと送られる。小腸で吸収されなかった水分が吸収され、だんだん便になっていく。直腸に一時的にためられた後、肛門から便となって排出される。

潰瘍性大腸炎やクローン病って?

若者の間で流行りつつある、潰瘍性大腸炎やクローン病。日本ではなじみは薄いが、欧米ではかなり有名な病気だ。
さて、どんな病気だろう?この2つの病気は、突発性炎症性腸疾患(IBD)とも言われる。

潰瘍性大腸炎

  • ■どんな病気?
    大腸粘膜にびらんや潰瘍ができる病気。進行する順序は、たいてい肛門からいちばん近い直腸から炎症が始まり、大腸をさかのぼるように広がっていく。原因は、はっきりしないが、自分の体の一部であるはずの大腸粘膜を自分の敵として攻撃してしまった結果、起こるとも言われている。専門的に言えば、「自己免疫の異常」ということ。大腸の粘膜や粘膜下層にのみ炎症が起こる。
  • ■症状
    とくにこれと言った誘因もなく、下痢や血便が見られることがある。いったんよくなったりもするが、また再発する。症状が進むと、粘血便や下腹部痛を伴い、たびたび下痢に悩まされる。重症の場合は、嘔吐、頻脈、貧血、1日10回以上の下痢(血便)、脱水症状などが起こる。
  • ■どんな人に起こる?
    2歳以下、または70歳以上の発症例もあるが、20歳代に高いピークがあり、患者全体の3分の1を20代が占めているとも言われている。

クローン病

  • ■どんな病気?
    潰瘍性大腸炎と同様、腸に炎症が起こる病気。潰瘍性大腸炎が大腸にしか起こらず、直腸からさかのぼるようにして炎症が進むのに対し、クローン病は、大腸から小腸にかけて断続的に炎症が起こることがある。腸の壁をつらぬいてまわりの臓器に及ぶことも。炎症が起こると腸管が狭くなり、腸閉塞を起こしやすくなる
  • ■症状
    主症状は慢性の下痢。潰瘍性大腸炎が初期にはほとんど痛みがないのに対し、クローン病は最初から腹痛を伴う。また、血便もそれほど出ず、多くの場合、ドロっぽい便が出る。
公開日:2001年11月5日