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胃の悩みはこれで解消!「胃のウソ・ホント

あなたはどれだけ「胃」のこと知っていますか?

Q1 胃は空腹の時は50ml程度の容量だが、食物が入ると約10倍に膨らむ。

Q2 胃の主なはたらきは送られてきた食物を一時貯留して消化し、小腸へ送り出すことである。

Q3 胃液は塩酸を含んだ消化液なので、胃の中に細菌が棲みつくことはない。

Q4「胃炎」とは、胃の粘膜に炎症の起こった状態をいう。

Q5「胃潰瘍」とは強力な消化液である胃液によって胃壁が自己消化を起こしてしまう病気である。

Q1 胃は空腹の時は50ml程度の容量だが、食物が入ると約10倍に膨らむ。

胃の構造

胃は空腹のときは50ml程度の容量ですが、食物が入ったときには、1500ml~1800mlまで膨らみます。つまり、約30倍~36倍まで膨らむのです。
胃の形はアルファベットのJの形に似ていて、入り口は食道、出口は十二指腸とつながっています。横隔膜の下(みぞおちのあたり)にありますが、体型の変化などによって位置は変わります。
また、胃を形づくっている壁を胃壁といいますが、厚さは数ミリで大きく3つの層に分かれ、内側から粘膜層、筋層、漿膜(しょうまく)といわれています。粘膜と筋層を結ぶ結合組織の層を粘膜下層(粘膜下組織)といい、ここに血管や神経などが分布しています。胃の粘膜には小さな穴が開いており、胃液や粘液を分泌しています。

というわけで、正解は「ウソ」

Q2 胃の主なはたらきは送られてきた食物を一時貯留して消化し、小腸へ送り出すことである。

胃の役割は主に食物を貯蔵して攪拌することです。口の中でよく噛まれて、唾液と混ざった状態で胃の中に入ってきた食物はいったん胃に蓄えられ、強力な塩酸である胃液や、胃の収縮や弛緩などの規則的な運動によって、さらに消化・攪拌されるのです。消化とは、食物に含まれる栄養素を身体が吸収しやすくなるように分解することで、最終的には胃の中でお粥のようにどろどろになります。そして、すこしずつ小腸へと送り出して行くのです。
食物が胃から十二指腸に送られる速度はその食物の量や質、種類によって異なります。固形物だとだいたい1~4時間ほどかかりますが、同じ固形物でも炭水化物で2~3時間、たんぱく質で4~5時間、脂肪は7~8時間もかかります。また、空腹状態に戻るには、5~6時間を要します。

というわけで、正解は「ホント」

Q3 胃液は塩酸を含んだ消化液なので、胃の中に細菌が棲みつくことはない。

胃液の主成分は塩酸、ペプシン、粘液であり、ペプシンはたんぱく質を分解する消化酵素です。このペプシンが作用しやすいように、胃内はpH1.0~2.5という強い酸性を示し、酸に弱い細菌は殺菌され胃内の発酵を防いでいます。
ところが、強酸であっても胃の中に棲む細菌があることが最近発見されました。それが、「ヘリコバクター・ピロリ(以下ピロリ菌)」です。このピロリ菌は胃炎や胃潰瘍・十二指腸潰瘍と密接な関係があり、特に日本人は約5000万人の人が感染していると推定されています。実際、炎症や潰瘍などの異常がないのに、むねやけや痛みなどの不快な症状だけはある、といったケースもあり、それらはピロリ菌が関係しているのではないかと言われています。
このピロリ菌の発見によって今までの治療法も根本から変わりつつあります。例えばピロリ菌発見前の胃潰瘍の治療には胃酸を弱める薬を服用したりしていましたが、発見後には感染源であるピロリ菌を「除菌する」という治療法が加えられています。

というわけで、正解は「ウソ」

Q4「胃炎」とは、胃の粘膜に炎症の起こった状態をいう。

胃炎は大きく急性胃炎と慢性胃炎に分けられますが、どちらも胃の粘膜に炎症が起こった状態をいいます。
急性胃炎はなんらかの原因により急激にみぞおちあたりに強い痛みや吐き気、嘔吐などの症状があり、胃の粘膜がただれたり、ひどいときには出血することもあるものです。ただ、原因さえ取り除けば一般的には数日で症状が消えます。具体的には、アルコールや薬剤(アスピリンやインドメタシンなどの非ステロイド系消炎鎮痛剤が多い)、精神的ストレスなどが原因で起こります。
一方、慢性胃炎は胃が悪くて病院に通っている人に多く付けられる病名であり、その状態によって表層性胃炎と萎縮性胃炎に分けられます。表層性胃炎は表層粘膜の炎症であるが、粘膜細胞自体には潰瘍ができるなどの大きな変化は見られません。萎縮性胃炎は胃の粘膜細胞が全体的に萎縮していて胃がすっきりしない、もたれる、などの症状が多いようです。萎縮が進むと胃酸の分泌が低下し、胃の運動が落ちてくるので、食事をするときには、柔らかいものや、消化のよいものを食べたり、ゆっくりよく噛んで食べたり、1回の食事量を減らして回数を増やす、などの注意が必要です。

というわけで、正解は「ホント」

Q5「胃潰瘍」とは強力な消化液である胃液によって胃壁が自己消化を起こしてしまう病気である。

人の体には空気に触れる部分とそうでない部分があり、見えてはいないけど空気に触れる部分というのが、口から始まってお尻に終わる消化管などです。この空気に触れる部分は1枚の膜で覆われており、この膜を「上皮」といい、この上皮の一部が欠損した状態が「潰瘍」です。つまり、胃の粘膜も空気が触れる部分であり、その胃の上皮粘膜が炎症を起こした状態が「胃潰瘍」なのです。
胃の粘膜細胞はたんぱく質でできています。胃液が強酸を示し、たんぱく質を消化する役割があるにも関わらず、胃液によって胃壁が溶け出さないのは、粘膜細胞自身が粘液などを分泌して膜をつくって覆っているからです。しかし、この粘膜がなんらかの原因で正常に作られなかったり、胃酸の分泌が多すぎたりすると胃壁など粘膜細胞を攻撃し、潰瘍ができてしまいます。
潰瘍にかかりやすい年代は40歳~50歳代と言われています。潰瘍は治療しても再発することも多く、この再発にはピロリ菌が大きく関係していると言われています。

というわけで、正解は「ホント」

参考文献:「胃のことがよく分かる本」山下克子著 小学館
「胃の話」宮田道夫著 悠飛社