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双極性障害の再発を防ぐために

再発を防ぐためには、治ったと思っても服薬を中断せず続けることが大切です。再発の予兆を把握しておきましょう。

治ったと思っても服薬を中断せず、続けることが大切

躁状態の人は多くの場合、病気の自覚がなく、調子が良いとさえ思っています(文献1)。そのため、双極性障害の診断を受けても、自分はどこも悪くないと考え、服薬を自己判断で中断してしまうことがあります。双極性障害の薬は症状を抑えるだけでなく、再発予防のためにも服用します(文献1)(文献2)(文献3)
双極性障害では、躁状態とうつ状態が繰り返されます。躁状態の高揚感が始まると、うつ状態が消えたように感じられ、病気が治ったと勘違いしてしまうケースもあります(文献2)。治ったと思っても自己判断で服薬を中断せず、医師と相談して、服薬をやめる時期を決めることが大切です。

つらい副作用が出ても、医師に相談すれば対応してもらうことが可能

双極性障害の治療薬を服用すると、下痢や食欲不振などの副作用が現れることがあります(文献2)副作用がつらいと感じたら、自己判断で服薬を中断するのではなく、まず医師に相談しましょう。状況に応じて、薬の量や種類を変えたり、副作用を抑える薬を処方したりする対応をしてもらえます。

再発の予兆を把握しておき、異変を感じたらすぐに受診を

再発を防ぐには、適度に運動したり、徹夜を避けたりして、生活リズムを整えることが大切です(文献1)(文献2)(文献3)。再発の前には、なんらかの予兆が現れることがあります。自分の再発の予兆をあらかじめ把握しておき、その予兆が出てきたと感じたら、医師に相談しましょう。

双極性障害の主な再発の予兆

本人が気付く予兆

うつ状態のとき

  • 今まで楽しめていたことが楽しめない
  • 疲れがとれにくい
  • 何をするにも、おっくうに感じて、やる気が出ない
  • 考えがまとまらない
  • 不安や恐怖の気持ちが強くなる
  • イライラして、気持ちが落ち着かない
    …など

躁状態のとき

  • アイデアが次々と思い浮かぶ
  • 自分はなんでもできると思う
  • 周囲の人より自分のほうが優れていると感じる
  • 爽快で、幸せな気分になっている
  • 眠りたいと思わず、ひと晩中活動しても平気
    …など

周囲の人が気付く予兆

うつ状態のとき

  • 以前より仕事の能率が悪い
  • あまり話さなくなる
  • 食欲が低下する
  • 身だしなみに気をつかわず、だらしなくなる
  • 以前より太る、またはやせる
  • 疲労感や体調不良(頭痛、肩こり、吐き気など)を訴える
  • 睡眠の悩み(眠れない、早くに目が覚める、寝すぎる)を訴える
    …など

躁状態のとき

  • 金づかいが荒くなる
  • 行動的で、落ち着きがない
  • おしゃべりで、とめどなく話し続ける
  • 無謀な計画を立てる
  • 陽気で、冗談をよく言う
  • 特におもしろいことがなくても、よく笑う
  • 高圧的な態度をとり、人と衝突することが増える
    …など

出典:『双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本』(講談社)

家族へのアドバイス

再発の予兆には、本人よりも、周囲の人のほうが気付きやすいものがあります(文献1)。日頃から気を配り、普段と違う様子がある一定の期間、あるいはずっとみられるようなときは、受診を勧めると良いでしょう。困ったことがあれば家族だけで抱え込まず、医師に相談してみましょう。

参考資料:
文献1:『双極性障害(躁うつ病)のことがよくわかる本』(講談社)
文献2:『よくわかる双極性障害(躁うつ病)』(主婦の友社)
文献3:『双極性障害(躁うつ病)とつきあうためにVer.6』(日本うつ病学会)

監修医:
独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 総長 樋口 輝彦 先生
九州大学大学院 医学研究院 精神病態医学分野 教授 神庭 重信 先生

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公開日:2017年1月10日