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線維筋痛症の治療法は?薬物療法と非薬物療法

線維筋痛症の治療の中心は、全身の痛みを抑えることです。治療法には「薬物療法」と「非薬物療法」があります。線維筋痛症の薬物療法に用いられることが多い薬と、その特徴について紹介します。

線維筋痛症の薬物療法に用いられることが多い薬

線維筋痛症は原因不明の病気なので、全身の痛みをはじめとする各症状を抑えることが、治療の中心となります。
線維筋痛症の治療には、薬を用いる「薬物療法」と、精神療法や運動療法などの「非薬物療法」の2つがあり、両方をあわせて行うことが勧められています。
ここでは、線維筋痛症の薬物療法に用いられることが多い薬と、その特徴について紹介します。
これらのほかにも、症状に応じて抗不安薬や睡眠導入薬、医療用麻薬などが用いられることがあります。

線維筋痛症の薬

種類 薬剤名 特徴
抗うつ薬 三環系抗うつ薬(TCA) 古くからうつ病の治療に用いられてきた飲み薬。痛みを抑え、線維筋痛症の症状のひとつである、気持ちの落ち込みを改善させる効果をもちます。
選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) 痛みを抑える効果と、気持ちの落ち込みを改善させる効果がある飲み薬。三環系抗うつ薬(TCA)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)と比べると、痛みを抑える効果は弱いとされています。
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) 痛みを抑える薬と、気持ちの落ち込みを改善させる効果がある飲み薬。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)より、痛みを抑える効果は強いです。
神経性疼痛緩和薬 プレガバリン 糖尿病による神経障害や、帯状疱疹による神経痛の治療に用いられる飲み薬。米国では線維筋痛症の治療薬として認められていて、全身の痛みを抑える働きがあるとされています。日本では、線維筋痛症の治療薬としてはまだ承認されていません(2012年4月現在)。
抗けいれん薬 ガバペンチン プレガバリンと同じように作用する薬。ただし、同じ程度の効果を期待するには、プレガバリンの3~4倍の量を飲む必要があります。日本では、線維筋痛症の治療薬としてはまだ承認されていません(2012年4月現在)。
鎮痛薬 ワクシニアウイルス接種家兎炎症皮膚抽出液 痛みを抑える効果がある飲み薬および注射薬。帯状疱疹による神経痛や、腰痛の治療などにも用いられます。線維筋痛症の治療薬として使用する場合は保険が適用されません。

薬物療法以外の線維筋痛症の治療法

線維筋痛症の治療において、主に痛みや線維筋痛症のさまざまな症状を改善させる薬物療法が行われますが、医師と相談のうえ、ほかの治療法と併用されることがあります。薬物療法以外の治療法という意味で、それらは「非薬物療法」と総称されます。

統合医療

非薬物療法の中でも、日本で昔から実践されてきて、西洋医学と統合して行われるものは特に、「統合医療」と呼ばれます。次に挙げる主な手法のほかにも、野菜中心の食事をする食事療法や、お灸などが行われることもあります。

  • ●鍼治療
    長い歴史を誇る東洋医学の手法。全身の痛みのほかに、頭痛や睡眠、便通の改善も期待できます。ただし、治療に慣れると効きづらくなってしまいます。治療者の立場では、刺激するツボや、使用する鍼の長さや太さがはっきりと記載されていない医学論文が多いため、治療を再現できないということが問題となります。
  • ●運動療法
    適度な有酸素運動を長年にわたって続けることで、痛みが軽減され、圧痛点が少なくなると考えられています。後述する認知行動療法(CBT)との併用で、痛みのコントロールに成功した例もあります。ゆるやかな動きの太極拳でも、効果が得られたという報告もされています。
  • ●温熱療法
    関節リウマチや、慢性的な腰痛などの治療として知られる治療法。薬物療法との併用も行われ、サウナが利用されることもあります。全身の痛みだけでなく、線維筋痛症の多岐にわたる症状や合併症を抑える効果が期待されます。

…など

精神療法

医師や臨床心理士などによるカウンセリングを通して心にはたらきかけ、症状を軽減させる手法です。心理療法とも呼ばれます。線維筋痛症の場合、次に挙げる手法が、痛み、睡眠障害や抑うつ状態などの症状を軽減するのに役立つとされています。

  • ●認知行動療法(CBT)
    パターン化された、ものごとに対する受け止め方や考え方を修正することで、気持ちや行動をうまくコントロールできるようにする治療法です。痛みに対して否定的な思い込みをしている人には、「痛みがあっても日常に楽しみは見出せる」というような、肯定的な考えをもってもらうことを目指します。抑うつ症状と痛みが軽減されたという報告もされています。ただし、この手法を行っている施設は少なく、また1回ごとの治療時間が長いという難点もあります。
  • ●オペラント条件付け行動療法(OBT)
    「人間は、望ましい結果が得られた行動を繰り返すようになる」という原理に基づいて行われる治療法です。痛みを訴えるなどの痛みの存在を周囲に伝える行動を減らすことによって、線維筋痛症の症状として起きる痛みのコントロールを目指します。痛みを感じることや、受診の回数を減らせたという報告もされています。

…など

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