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全身を激しい痛みが襲う病気「線維筋痛症」セルフチェック

線維筋痛症は、全身を激しい痛みが襲う原因不明の病気です。線維筋痛症の痛みは激しく、3ヵ月以上も続くため、病気の程度によっては寝床から起き上がることができないケースもあります。また、疲労感やうつ病などの精神症状、痛みによる不眠、ドライマウスなど、痛みのほかにもさまざまな症状を伴います。発症するきっかけや、性別や年齢別での患者数の違いをご紹介します。

線維筋痛症とは、全身を激しい痛みが襲う、原因不明の病気

全身を激しい痛みが襲う「線維筋痛症」

肩こりや筋肉痛など、体の特定の部位に痛みを感じることは、日常生活を送るうえで決して珍しくありません。一時的な痛みであれば、安静にしたり、湿布薬の力を借りたりすることで、治まるようになるでしょう。それに対して、全身を激痛が襲う「線維筋痛症」(せんいきんつうしょう)という病気では、そのような対処が通用しません。

線維筋痛症の痛みは激しく、3ヵ月以上も続くため、病気の程度によっては寝床から起き上がることができないケースもあります。また、疲労感やうつ病などの精神症状、痛みによる不眠、ドライマウスなど、痛みのほかにもさまざまな症状を伴います。
線維筋痛症は、なぜ発症するのでしょうか。その原因は、いまだ不明のままとなっています。

発症のきっかけは外傷やストレスなど

線維筋痛症は原因が不明なことに加え、一般的にも、その認知度は高いとは言えません。そのため、痛みなどの症状に苦しむ患者さんがいろいろな診療科をまわる「ドクターショッピング」の状態になり、診断までに時間がかかってしまうことが多いようです

はっきりした原因はわかっていないものの、細菌やウイルスなどから体を守る免疫と呼ばれる仕組みや、神経のはたらきなどに異常が生じることで、激しい痛みを感じるようになるということまではわかっています。また、線維筋痛症を引き起こすきっかけも、ある程度明らかにされていて、次のように分類することができます。

線維筋痛症を発症する主なきっかけ

  • ●遺伝的な要因
    親子や双子の兄弟など、近い身内に線維筋痛症の患者さんがいる場合、発症する確率が比較的高くなると考えられています。
  • ●外部からの要因
    外傷やウイルスの感染など、体の外側から起きたできごとが引き金となって、線維筋痛症を発症することが確認されています。また、むちうち症などの骨に関わる病気のほか、抜歯や外科手術などの治療を受けることによって引き起こされることもあります。
  • ●心理的な要因
    精神的なストレスを抱えることも、線維筋痛症を発症するきっかけとなります。離婚や肉親との死別のほか、解雇や転職などの仕事に関すること、経済的な問題などに直面すると、大きなストレスを抱えることになり、発症しやすいようです。成年に達するまでに受けた虐待やいじめなども、きっかけとして考えられます。

…など

患者さんの多くは女性だが、その理由も不明

線維筋痛症の患者さんは、日本国内に200万人以上いると推定されています。この病気の特徴として挙げられるのが、患者さんの多くを女性が占めているということでしょう。日本では、女性が男性の4.8倍だと言われています。ただし、欧米では女性が8~9倍だと言われているため、それと比べれば男性の割合は多いです。この欧米との違いがなぜ生じているのかについても、現在のところ理由は不明のままとなっています。

年齢別で見ると、患者数がもっとも多くなるのは50歳代です。年齢とともに増えていく傾向がありますが、小児科を受診する年齢で発症が認められることもあります。

グラフ:日本国内の線維筋痛症患者数(出典:線維筋痛症ガイドライン2011)

線維筋痛症セルフチェック

線維筋痛症の代表的な症状として挙げられるのが、長期にわたって続く、全身の激しい痛み。しかし、実際にはそのほかにもさまざまな症状が現れます
早期発見のためにも、痛みのほかに症状がないか再度チェックリストで確認をして、医師に話してみましょう。

筋肉・骨格に関わる症状

  • ●疼痛(とうつう:痛み)
    線維筋痛症の患者さんの90%以上が、3ヵ月以上続く全身の痛みを訴えています。
    また、関節痛や筋肉痛のほかに、頭痛や胸痛、肩の痛み、背中の痛み、胃のあたりの痛み、腰痛、膝(ひざ)の痛みなど、各部位の痛みが現れることも多いようです。
  • ●圧痛(あっつう)
    何もしていない状態では痛みを感じないものの、指で圧迫するなど、ある程度の力を加えると感じる強い痛みを、圧痛と言います。
    圧痛を感じる部位は圧痛点と呼ばれ、線維筋痛症の診断をするうえで、その場所と数が重要なポイントとなります。
  • ●こわばり
    手足が硬く、力が入らなくなって、動かしにくくなります。
    特に朝に発生することが多く、痛みとともに現れることで、目が覚めても起き上がることができないケースもあります。
    ただし、同じ症状が現れる関節リウマチほど長時間は続かず、1時間以内に治まることが多いです。

筋肉・骨格と直接はかかわりがない症状

  • ●疲労感・疲れ
    全身の痛みと同様、線維筋痛症の患者さんの90%以上に現れる症状です。
    症状が軽い場合は仕事をすることもできますが、重い場合は寝たきりの状態になってしまいます。
  • ●睡眠障害
    痛みによってなかなか眠りにつけない、夜中や早朝に目が覚めてしまうなど、熟睡できない状態となります。
    痛みで眠れず、その結果として生じるストレスや疲れによって痛みを感じやすくなるというような、悪いサイクルを繰り返すこともあります。
  • ●抑うつ状態
    「誰も痛みを理解してくれない」「疲れて動けないのに怠けていると思われる」などと考えることが精神的なストレスとなり、落ち込んだ気分になります。
    痛みが悪化してと抑うつ状態になると、より痛みを感じるようになるため、さらに落ち込むという負のサイクルに陥ることもあります。

線維筋痛症の症状は多岐にわたるため、これらのほかにも多くの症状があります。
痛みや圧痛とともに次の症状が当てはまる場合は、やはり線維筋痛症を疑ってみることが勧められます。

その他の症状

  • ●皮膚の乾燥
  • ●頻尿
  • ●思考・記憶障害
  • ●手足のしびれ
  • ●耳鳴り
  • ●めまい
  • ●息切れ
  • ●筋力低下
  • ●ドライマウス
  • ●ドライアイ
  • ●吐き気
  • ●下痢
  • ●神経質/神経過敏
  • ●不安感
  • ●もの忘れ
  • ●集中力の低下

疼痛や圧痛点だけでは診断できない。線維筋痛症の診断基準

線維筋痛症には、診断のための基準となるものが、近年まで存在しませんでした。そのため日本では多くの場合、1990年に米国で定められた「米国リウマチ学会分類基準(1990)」が診断に用いられてきました。疼痛と圧痛点という2つの観点から線維筋痛症を確かめるこの基準は、有用な反面、次のような問題点も含んでいます。

■米国リウマチ学会分類基準(1990)の問題点

  • ●線維筋痛症はさまざまな身体症状が現れる病気であるため、疼痛と圧痛点だけでは、全ての線維筋痛症の患者さんを診断し切れていない可能性があります。
  • ●圧痛点での診断には多くの時間が必要であり、圧痛点の使用が広く浸透していない可能性があります。

…など

米国リウマチ学会診断予備基準(2010)の登場

上記の問題点を踏まえ、2010年に米国で新たに「米国リウマチ学会診断予備基準(2010)」が、提唱されました。この基準では、身体症状も考慮に入れられていて、米国リウマチ学会分類基準(1990)で懸念されていた前述の問題のいくつかが解決されることとなりました。

米国リウマチ学会の線維筋痛症診断予備基準(2010)
※日本人を対象に一部改変

(1)過去1週間における、下記19ヵ所のうち疼痛を感じる部位の数

過去1週間における、下記19ヵ所のうち疼痛を感じる部位の数

(2)次の症状の度合い

  • ●疲労感がある…疲れを感じる
  • ●起床時に不快感がある…起きたときに不快感がある
  • ●認知症状がある…時間や場所を忘れやすい

(3)次の身体症状の有無

  • ●疲労感・疲れ
  • ●眼や口が乾く
  • ●不眠
  • ●しびれ・刺痛
  • ●筋肉痛
  • ●筋力低下
  • ●息切れ
  • ●めまい
  • ●よく物を忘れる・集中できない

…など

※身体症状の数については各施設にゆだねられる

下記の条件1~3をすべて満たす場合、線維筋痛症と診断される

  • 条件1:(1)の疼痛と(2)(3)の症状の度合いが、一定基準を超える
  • 条件2:症状が少なくとも3ヵ月間続く
  • 条件3:疼痛は、ほかの病気によるものではない

それでもまだ残る、繊維筋痛症の診断における問題点

より正確な診断が可能になった米国リウマチ学会診断予備基準(2010)ですが、それでもまだ問題は残っています。そのひとつとして挙げられるのが、すべてが自己申告であるということ。これはすなわち、患者さんの申告によって、病気が作り出されてしまう可能性があることを意味します。また、この基準を検証する際に、炎症を伴うリウマチ性の病気や、心療内科や精神科で診断される病気が比較対象とされなかったこと、男性や小児の患者さんが検証の対象に含まれていなかったことなども、完全な基準とはいえない要因とされます。

これらの問題から、米国リウマチ学会診断予備基準(2010)の診断だけではなく、圧痛点や、筋の把握痛(筋肉をつかんだ際に感じる痛み)に対する反応の有無や程度も、補助的に確かめることが望ましいといえます。いずれにしても、線維筋痛症が疑われる場合は、専門医に診てもらう必要があるでしょう。