線維筋痛症は、全身を激しい痛みが襲う原因不明の病気です。線維筋痛症の痛みは激しく、3ヵ月以上も続くため、病気の程度によっては寝床から起き上がることができないケースもあります。また、疲労感やうつ病などの精神症状、痛みによる不眠、ドライマウスなど、痛みのほかにもさまざまな症状を伴います。発症するきっかけや、性別や年齢別での患者数の違いをご紹介します。
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肩こりや筋肉痛など、体の特定の部位に痛みを感じることは、日常生活を送るうえで決して珍しくありません。一時的な痛みであれば、安静にしたり、湿布薬の力を借りたりすることで、治まるようになるでしょう。それに対して、全身を激痛が襲う「線維筋痛症」(せんいきんつうしょう)という病気では、そのような対処が通用しません。
線維筋痛症の痛みは激しく、3ヵ月以上も続くため、病気の程度によっては寝床から起き上がることができないケースもあります。また、疲労感やうつ病などの精神症状、痛みによる不眠、ドライマウスなど、痛みのほかにもさまざまな症状を伴います。
線維筋痛症は、なぜ発症するのでしょうか。その原因は、いまだ不明のままとなっています。
線維筋痛症は原因が不明なことに加え、一般的にも、その認知度は高いとは言えません。そのため、痛みなどの症状に苦しむ患者さんがいろいろな診療科をまわる「ドクターショッピング」の状態になり、診断までに時間がかかってしまうことが多いようです。
はっきりした原因はわかっていないものの、細菌やウイルスなどから体を守る免疫と呼ばれる仕組みや、神経のはたらきなどに異常が生じることで、激しい痛みを感じるようになるということまではわかっています。また、線維筋痛症を引き起こすきっかけも、ある程度明らかにされていて、次のように分類することができます。
…など
線維筋痛症の患者さんは、日本国内に200万人以上いると推定されています。この病気の特徴として挙げられるのが、患者さんの多くを女性が占めているということでしょう。日本では、女性が男性の4.8倍だと言われています。ただし、欧米では女性が8~9倍だと言われているため、それと比べれば男性の割合は多いです。この欧米との違いがなぜ生じているのかについても、現在のところ理由は不明のままとなっています。
年齢別で見ると、患者数がもっとも多くなるのは50歳代です。年齢とともに増えていく傾向がありますが、小児科を受診する年齢で発症が認められることもあります。
線維筋痛症の代表的な症状として挙げられるのが、長期にわたって続く、全身の激しい痛み。しかし、実際にはそのほかにもさまざまな症状が現れます。
早期発見のためにも、痛みのほかに症状がないか再度チェックリストで確認をして、医師に話してみましょう。
線維筋痛症の症状は多岐にわたるため、これらのほかにも多くの症状があります。
痛みや圧痛とともに次の症状が当てはまる場合は、やはり線維筋痛症を疑ってみることが勧められます。
線維筋痛症には、診断のための基準となるものが、近年まで存在しませんでした。そのため日本では多くの場合、1990年に米国で定められた「米国リウマチ学会分類基準(1990)」が診断に用いられてきました。疼痛と圧痛点という2つの観点から線維筋痛症を確かめるこの基準は、有用な反面、次のような問題点も含んでいます。
…など
上記の問題点を踏まえ、2010年に米国で新たに「米国リウマチ学会診断予備基準(2010)」が、提唱されました。この基準では、身体症状も考慮に入れられていて、米国リウマチ学会分類基準(1990)で懸念されていた前述の問題のいくつかが解決されることとなりました。
…など
※身体症状の数については各施設にゆだねられる
下記の条件1~3をすべて満たす場合、線維筋痛症と診断される
より正確な診断が可能になった米国リウマチ学会診断予備基準(2010)ですが、それでもまだ問題は残っています。そのひとつとして挙げられるのが、すべてが自己申告であるということ。これはすなわち、患者さんの申告によって、病気が作り出されてしまう可能性があることを意味します。また、この基準を検証する際に、炎症を伴うリウマチ性の病気や、心療内科や精神科で診断される病気が比較対象とされなかったこと、男性や小児の患者さんが検証の対象に含まれていなかったことなども、完全な基準とはいえない要因とされます。
これらの問題から、米国リウマチ学会診断予備基準(2010)の診断だけではなく、圧痛点や、筋の把握痛(筋肉をつかんだ際に感じる痛み)に対する反応の有無や程度も、補助的に確かめることが望ましいといえます。いずれにしても、線維筋痛症が疑われる場合は、専門医に診てもらう必要があるでしょう。
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