疾患・特集

喘息を上手にコントロールするには?

監修:昭和大学医学部内科学講座 呼吸器・アレルギー内科部門教授 足立 満 先生

まずは治療の目標を確認しよう

慢性の病気である喘息は、患者さんにとって、長い付き合いになる相手だといえる。
うまく付き合っていくためには、はっきりとした治療の目標を意識しておきたい。

喘息治療の目標

  • ●健康な人と変わらない日常生活を送れる
  • ●肺の機能を、正常に近い状態に保ち続ける
  • ●夜や早朝に咳や呼吸困難が起きず、十分に眠ることができる
  • ●喘息発作が起きず、それで命を落とすこともない
  • ●薬の副作用がない
  • ●炎症が起きた気道が修復される際に、空気の通り道が狭くなり、喘息の原因となる刺激に反応しやすくなる「リモデリング」が起きて、元の状態に戻れなくなるのを防ぐ

「喘息予防・管理ガイドライン2009」より

目標を達成するには、喘息を上手にコントロールすることが必要となるが、それには症状の程度にあった薬が欠かせない。問診に基づいて治療を開始したうえで、どの薬を使うのが良いかは医師が判断するが、判断の材料として、患者さんが記録した「喘息日誌」や「喘息コントロールテスト」(ACT)が重要な役割を果たすことになる。

喘息日誌は、発作の程度、咳やたんなどの症状の有無、服用した薬などを患者さんが毎日記録するもので、医師はこれを見れば、症状の程度や変化を知ることができる。また、患者さん自身も、発作が起きやすい状況を把握できるようになる。地道ではあるが、喘息をコントロールするうえで、大きな助けとなるツールだといえる。

簡単!役立つ!ピークフロー値の測定

ピークフロー値

喘息日誌に記録すべき項目のひとつに「ピークフロー値」がある。ピークフロー値とは、思い切り息を吸い込んでから、できるだけ強くはき出したときの、息の速さの最大値のこと。これを測定すると、気道がどれくらい狭くなっているかを知ることができる。測定は、息の吹き込み口であるマウスピースと目盛りが一体化した「ピークフローメーター」という医療器具が用いれば、誰でも簡単にできる。

ピークフロー値の測定で、喘息の重症度や治療の効果の客観的な判定が可能となる。さらに、患者さん自身が、喘息の状態の理解と、薬の効果の実感ができるようになる。ここに、ピークフロー値を測定することの意義があるといえるだろう。
喘息日誌およびピークフロー値の測定は、簡単ではあるが、毎日記録をつけるのが難しい場合もある。それに対して喘息コントロールテスト(ACT)は、月に1回、診察の日に待合室で待っている間にできてしまう。5項目の質問に答えれば、25点満点で喘息コントロールの状態を知ることができる。

小さなことからコツコツと!日常でできる工夫

喘息を引き起こす原因となるものと、できる限り接触しないように気をつけることも、喘息をコントロールするコツだといえる。

掃除機をかける

室内でできる代表的な工夫として、こまめに掃除をすることが挙げられる。掃除機がけでも拭き掃除でも、喘息を引き起こすダニやホコリを除去するのに有効となる。ダニは布団に住みつきやすいので、布団に掃除機をかけるのも効果的。可能であれば、年に1度で良いので、クリーニング店などに依頼して布団を丸洗いするのが望ましい。

マスクを着用する
タバコの煙も発作を悪化させる要因のひとつ

外出先で何よりも重要なのは、発作を悪化させる要因となる風邪をひかないように、マスクの着用や、体を冷やさないようにすること。外出先から帰宅したら、手洗いやうがいも欠かせない。
また、タバコの煙も発作を悪化させる要因のひとつなので、自分が吸わないのはもちろん、可能であれば、喫煙スペースにはなるべく近づかないように心がけたい。

ここで紹介したのはどれも簡単で、小さなことのように思えるかもしれない。しかし、喘息とは長い付き合いになることを思えば、小さな積み重ねこそ大切だといえる。まずは小さな一歩を踏み出し、いずれ習慣と呼べるようになるまで継続してはいかがだろうか。