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- iNPH(特発性正常圧水頭症)治療の今を知る~広がる専門外来~
iNPH(特発性正常圧水頭症)は、認知症と診断された患者さんの5~6%を占める※1と考えられているが、私たちの周りには、iNPHを診察してくれる医療施設がどれくらいあるのだろうか。気になる診療状況の実態についてアンケート調査を行った。
調査対象 | 日本脳神経外科学会A項C項専門医訓練施設※2(1,141施設) |
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調査方法 | FAXによるアンケート調査 |
実施期間 | 2009年10月19日(月)~10月30日(金) |
有効回答数 | 264件(回答率23%) |
原因は明らかではないが、脳室に脳脊髄液(髄液)がたまり、歩行障害・認知症・尿失禁の3つの症状が進行する高齢者の病気。手術で改善する病気のひとつとして知られている。
回答した264件の施設のうち、「積極的に診療している」施設は73件で28%を占め、「診療している」施設は174件で66%を占めた。
日本脳神経外科学会が認定した施設(専門医訓練施設)の9割以上で、iNPHを診療していることが分かる。
iNPHの可能性のある人は、高齢者人口の1.4%を占める※3との報告があり、日本では39万人と推計される。各都道府県のiNPH患者における治療指数※4をみてみると、2008年にもっとも治療指数が高かったのは、鹿児島県の2.0、次いで沖縄県の1.0、兵庫県の0.7という順であった。今回の結果では、他都道府県と比べ、鹿児島県の医療機関または自治体がiNPHの治療に積極的に取り組んでいると考えられる。
積極的に診療している」と回答した73件の施設のうち、「専門外来を設置している」施設は11件で15%、「設置準備中または設置予定」施設は4件で5%であった。今後、日本の高齢化が進むとともに、こうしたiNPHの専門外来が増加していくことが予想できる。
また、積極的に診療している施設の2割が専門外来を設置するという背景には、iNPH専門外来を標榜することによって診療施設としての差別化を図るとともに、iNPHの疾患としての存在を啓発していこうとする意図もあると考えられる。
また、調査により専門外来の名称がさまざまであることが分かったため、いくつか紹介しよう。
※その他iNPHの症状にもとづいた外来名としている施設も。
2004年にiNPHの治療指針が明記された「特発性正常圧水頭症ガイドライン」が発刊されたことにより、iNPHの治療を行う施設数や患者数が増えているといわれている※5。
今回の調査でも、回答のあった9割の施設で、治療できる現状であることが分かった。iNPHは、認知症の中でも手術によって改善する病気のひとつだ。
症状チェックリストで確認し、歩行障害を中心に当てはまる症状があれば、高齢だから仕方がないとあきらめるのではなく、まずは近くの神経内科や脳神経外科、iNPHの専門外来を受診してはどうだろう。
症状のタイプ | 状態 | チェック |
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歩行障害 | 小刻みに歩く、すり足で足が上がらない |
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足が外側へ開きぎみに歩く | ||
不安定で転倒することがある | ||
認知症 | もの忘れ | |
一日中ぼんやりする、趣味などをしなくなった | ||
呼びかけに対して反応が遅くなった | ||
尿失禁 | 尿を我慢できずに漏らしてしまう | |
その他 | 声が小さくなる、表情が乏しくなる |