お話し手
国家公務員共済組合連合会
虎の門病院 分院長
熊田博光 先生
1972年岐阜大学医学部卒。
虎の門病院消化器科部長、同病院副院長を経て、2007年から現職。
日本肝臓学会理事、厚生労働省「肝硬変を含めたウイルス性肝炎疾患の治療の標準化に関する研究」班長など役職多数。
Q. C型肝炎にはどんな治療法がありますか。
熊田先生:
C型肝炎の治療には大きく分けて、抗ウイルス療法と肝庇護療法があります。
抗ウイルス療法は、インターフェロンを使って体からウイルスを駆除するもので、C型肝炎を完全に治すことができる治療法です。
肝庇護療法は副作用や合併症など、なんらかの事情で抗ウイルス療法ができない場合に、肝機能を維持しながら肝がんを発症しないように努める治療法です。
Q. 治療法の選択は、何を基準にするのですか。
熊田先生:
C型肝炎の治療をする際には、まずウイルスの持つ遺伝子の型(ジェノタイプ)とウイルスの量を調べる必要があります。これはどちらも血液検査でわかります。遺伝子の型は日本人の場合、大きく分けて1型と2型があります。2型はインターフェロン治療が効きやすく、1型は効きにくいという性質があります。日本人は患者さんの7割が1型です。ウイルス量は、少ないとインターフェロンが効きやすく、多いと効きにくいといえます。
インターフェロンを使った治療には、いくつかの方法があり、遺伝子の型とウイルス量に応じて使い分けるのが原則です。インターフェロン治療の中で現在、中心となっているのはペグインターフェロンとリバビリンの併用療法で、1型、2型の高ウイルス量の人、以前インターフェロン治療を受けて効果が得られなかった人には、この併用療法の48週間または24週間投与が勧められます。
1型、2型とも低ウイルス量の場合は、インターフェロンもしくはペグインターフェロンの単独療法をするのが標準治療です(下表参照)。
ジェノタイプ 1型 | ジェノタイプ 2型 | |
---|---|---|
高ウイルス量 | ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法 48週間 | ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法 24週間 |
低ウイルス量 | インターフェロン 24週間 またはペグインターフェロン 24~48週間 |
インターフェロン 8~24週間 またはペグインターフェロン 24~48週間 |
Q. ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法の方法と、治療効果について教えてください。
熊田先生:
ペグインターフェロンはそれまで週3回必要だった注射を週1回ですむように工夫した薬です。リバビリンは、1日2回の飲み薬です。副作用を見極める必要があるので、治療の初めの2週間は入院を原則とします。その後は通院で大丈夫です。仕事をしながら治療することができます。
ペグインターフェロンとリバビリンの併用療法をすると、1型で高ウイルス量の場合、50~60%の人が治ります。2型で高ウイルス量の場合は90%の人が治ります。
Q. インターフェロン治療に踏み切るタイミングについて教えてください。
熊田先生:
インターフェロンは若い人ほど、また肝炎も進行していない人ほどよく効きます。
C型肝炎は肝臓が硬くなる病気であり、これを肝臓の線維化といいます。線維化の程度は肝臓に針を刺して組織を採取し、顕微鏡で調べる肝生検をするとわかりますが、血液検査で血小板の数を調べることでも、おおよその見当がつきます。
また、肝機能を示すALT(GPT)も治療の重要な指標です。ALTは医療機関によって基準値にばらつきがありましたが、最新の研究では30を超える場合は、インターフェロンによる治療を検討すべきであるということになりました。また、ALTにかかわらず、血小板が15万未満となった場合も、インターフェロンによる治療を検討すべきです。
できるだけ若いうちに、また肝炎が進行する前に治療に踏み切れるよう、専門医とよく相談してください。