疾患・特集

背が低いのは個性?なかには病気がひそんでいることも

気になりませんか?子どもの低身長

子どもの成長を語るときに使う「すくすく」という言葉。樹木のように勢いよく成長して欲しい、それはどの親にも共通の願い。身長の伸びは、子どもの成長をはかる上でもっともわかりやすいモノサシだ。

たとえ自分の子どもの背が低くても、「それも個性のうち」「元気ならそれでじゅうぶん」ととらえる親は多い。身長が低くても健康ならそれでじゅうぶんという考えからだ。たしかに、子どもの身長には個人差があるもの。生まれた当初は目立たなくても、成長過程において、周囲との身長差がうまれるのは当然だ。

ただし、子どもの低身長のなかには、医学的な原因が隠れているケースがまれにあることがわかっている。それらのケースにはどんな原因があるのか、くわしくみてみよう。

要注意!なかには病気が原因の低身長も

低身長の子どもは両親も背が低いなど、ほとんどが遺伝的・体質的な原因によるもの。身長は低いが、健康にはまったく問題がないというケースだ。
しかし、なかには成長をうながすホルモンが出ていないことや、染色体や骨の異常によって、子どもの成長にブレーキがかかっている場合がある。低身長のなかでもまれなケースなだけに、見逃される可能性が大きい。

  • 1. 子どもの成長を調節している成長ホルモンや甲状腺ホルモンの分泌不足
  • 2. 染色体の異常や先天性の奇形。女の子では染色体異常によるターナー症候群によって身長の伸びだけでなく二次性徴に障害が起こることも
  • 3. 骨や軟骨の異常
  • 4. 心臓・腎臓・肝臓などの主な臓器の異常
  • 5. 親からのネグレクトなどによる心理的ストレス(愛情遮断症候群)

1. 成長ホルモン分泌不全性低身長症

典型的には、生まれたときに脳の下垂体付近にダメージを受けると、成長ホルモンがうまく分泌されなくなる。生まれたときの身長は平均値でも、1歳を過ぎたころから低身長が明らかになり、3歳以降にめだって低くなるのが特徴。出生時に問題がなくても脳下垂体の近くに腫瘍ができるなどの病気が原因で、正常に成長していた子どもがある時点で身長の伸びが鈍くなることもある。また、軽度の成長ホルモン分泌不全では、とくにエピソードはなくても徐々に低身長がめだってくる。

2. ターナー症候群

X染色体の欠失が原因で女の子だけにおきる。2本のX染色体のうち1本しかなかったり、一部が欠けていたりする。ターナー症候群の女の子は低身長であっても均整のとれた体に成長する。しかし8割に二次性徴が見られず、また心臓病や難聴などの合併症の問題もある。

3. 軟骨異栄養症

骨や軟骨そのものに異常があるために身長が伸びない病気。胴体にくらべ手足が極端に短いのが特徴で、この病気は遺伝するが、8割以上が家族に同じ病気がないのに、子どもだけに軟骨の異常が起こる突然変異。

4. 臓器の異常

心臓、肝臓、消化器管などの臓器に異常があると体内に栄養をとりこめず、身長の伸びに影響をおよぼす。低身長から逆に、臓器の異常が発見されるケースも多い。

ほかにも小児慢性腎不全が子どもの低身長の原因となっている場合がある。

チェック!標準身長と比較してみよう

「うちの子は友達の中で頭ひとつ小さい」「同い年のイトコより幼く見える…」そんな不安をもつご両親は、下記のグラフを使って子どもの身長をチェックしてみよう。

男女別標準成長曲線

このグラフは、「男女別標準成長曲線」といって、子どもたちの身長データを集め、年・月齢別に平均値と基準値を線でつないだもの。これをみれば年齢ごとの標準的な身長の範囲がわかる。

異常をみつける目安は「SD」。SDとは標準偏差を意味し、平均値からどれくらい離れているかをあらわす。子どもの身長が+2SD~-2SDの範囲内にあれば正常で、-2SDを下回るようならば、注意をはらうべき低身長であるとされている。