うつ病の治療の基本は、休養+薬物治療です。休養し、適切な薬物治療を早期に受けることにより、ほとんどのうつ病は回復するといわれています。心の病にかかった自分を受け入れないで我慢して治療が遅れてしまうと、悪化させてしまったり回復までに時間がかかってしまいます。心の病に気づいたら、早めに医療機関を受診しましょう。
私たち日本人は「忙しい」のが良いと考えがちです。特にうつ病はまじめな人が多く、「何もしない」でいることに罪悪感や劣等感をもってしまいます。けれどストレスなどで心の抵抗力が弱まっているときは、心と体の休養が不可欠です。仕事や家事、学校を休んでゆっくりすごすことも回復への重要なステップなのです。
うつ病の治療に使われる薬「抗うつ薬」とは、いったいどんな薬なのでしょうか?「やめられなくなってしまうのでは?」「副作用が恐い」…そんな不安を抱えている人も多いようです。でもご安心を。抗うつ薬に依存性の心配はまずありませんし、最近では副作用の少ないタイプの薬も登場しています。
そもそもうつ病は、脳内の神経伝達物質であるセロトニンやノルアドレナリンの不足により引き起こされると考えられています。抗うつ薬には、脳内のセロトニンやノルアドレナリン不足を解消して正常に近い状態に戻すはたらきがあるのです。
一言で抗うつ薬といっても、大きく分けて4つのグループがあり、それぞれで特徴も異なります。近年うつ病治療の研究開発はめざましく、SSRIやSNRIといった新しいタイプの登場により治療薬の選択肢は大きく広がりました。
第一世代の薬は効果が高いです。しかしセロトニン、ノルアドレナリン以外の神経伝達物質にも作用するので、口の渇きや便秘、たちくらみなどの副作用があらわれやすくなります。第二世代の薬はこの副作用を軽減する目的で作られましたが、その分、効果もやや弱いとされています。
比較的最近登場した薬で、セロトニンだけに選択的に作用するので、従来の抗うつ薬で問題となっていた副作用が少ないです。
新しいタイプの抗うつ薬です。セロトニンとノルアドレナリンの両方に作用し、効果があらわれるのが比較的早いです。強さは第一世代の薬と同じくらいありますが、副作用は少ないといわれ、期待がよせられています。
分類 | 一般名 | 販売名 | 主な副作用 | |
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第一世代 | 三環系抗うつ薬 | イミプラミン | トフラニールほか | 口渇、便秘、排尿障害、起立性低血圧(めまい、たちくらみ)、眠気、倦怠感(だるい)など |
アミトリプチリン | トリプタノールほか | |||
トリミプラミン | スルモンチール | |||
ノルトリプチリン | ノリトレン | |||
クロミプラミン | アナフラニール | |||
第二世代 | アモキサピン | アモキサン | 第一世代よりも副作用が軽減されている | |
ロフェプラミン | アンプリット | |||
ドスレピン | プロチアデン | |||
四環系抗うつ薬 | マプロチリン | ルジオミールほか | ||
ミアンセリン | テトラミド | |||
セチプチリン | テシプールほか | |||
その他 | トラゾドン | レスリン、デシレル | ||
第三世代 | SSRI | フルボキサミン | デプロメール、ルボックス | 従来薬の副作用は少ない。吐き気や胸やけ、胃のむかつきが多い |
パロキセチン | パキシル | |||
第四世代 | SNRI | ミルナシプラン | トレドミン | 副作用は少ない |
抗うつ薬の効果はすぐにはあらわれません。ときには効果より先に副作用が出てしまう場合もあります。症状の改善や副作用が見られればすぐにでも薬をやめたくなってしまいますが、自己判断で抗うつ薬の減量や中止をするのは危険です。うつ病は再発しやすい病気なので、再び症状が悪化してしまうことが多いのです。必ず医師に相談し、指示に従って服用を続けるようにしましょう。
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