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- iNPH(特発性正常圧水頭症)
- まずは疑ってみて欲しい-特発性正常圧水頭症ガイドラインの背景
「手術で治療できる認知症」といわれる特発性正常圧水頭症。しかし、まだ広く知られていないために見逃されている可能性も。特徴的な症状についてチェックしよう!
「軽い物忘れ」や「足元がふらついて歩きにくい」などの症状は、お年寄りにはよくあるもの。しかし、なかには手術により治療できるものがあることをご存知だろうか?「特発性正常圧水頭症」(iNPH)と呼ばれるこの病気は、脳に過剰な髄液がたまることが原因。高齢者に多く、認知症患者の約5~10%を占めるといわれている。
特発性正常圧水頭症は本人や家族が早く気づき、医師が正しく診断・治療を行えば、症状が改善する可能性が高い病気。にもかかわらず、今まであまり注目されてこなかったのは、老化による症状と見過ごされたり、アルツハイマー病やパーキンソン病などとよく似ていて診断が難しかったため。実際には診断・治療されないままになっていることも多いのだそう。こうした背景から、医師たちはガイドラインを作成し、患者が見過ごされることのないよう、適切な診断・治療を広めるための活動を積極的に行っている。少しでも気になる症状があれば、まずは可能性を疑ってみよう。
特発性正常圧水頭症の主な症状は、歩行障害・認知症状・尿失禁。特にこれといった原因もないのにこのような症状がある場合は、早めに脳神経外科や神経内科で受診しよう。
最初にあらわれることが多く、アルツハイマー病などほかの認知症と区別するポイントになる。パーキンソン病や脊椎の病気などでもみられるので間違われることもあるが、特発性正常圧水頭症の症状としては最も多く、90~100%の人にみられるといわれている。外見からでもわかる症状なので家族や周囲の人も注意し、気づいてあげよう。
歩行障害の次に多い症状。軽い物忘れ、自発性や意欲・集中力の低下などの症状がみられる。例えば、周囲の呼びかけに対して反応が悪くなったり、趣味をしなくなったり、一日中ボーっとした状態になったり。さらに症状が進むと様々な認知症状があらわれる場合もある。症状が出てから何年も経っていても改善することも多く、あきらめないことが大切。
歩行障害や認知症と比べ、わりと遅くあらわれる症状。トイレが非常に近くなったり(頻尿)、我慢できる時間が短くなる(尿意切迫)症状に、歩行障害も重なり、トイレに間に合わないことも。症状がさらに進むと、無関心さから失禁するようにもなる。
尿失禁は加齢とともによくみられる症状だが、なかなか人にはいいづらく、本人にとっては深刻な問題。しかし、勇気をもって打ち明けることが治療への第一歩だ。
一般にはまだあまり広く知られていない特発性正常圧水頭症だが、医師たちの間での関心はどうなのだろうか?この病気について全国の病院(脳神経外科)に対して2009年10月に行われたアンケート調査では、関心も高くなっており、年々治療数も増えていることが分かった。
同時に、アンケート結果からは、ほとんどの施設でiNPHの治療が開始され、専門外来の数も年々増加している。高齢者の増加や診断・治療技術の進歩に伴い、医師たちの関心も次第に高まってきているといえそうだ。