紫外線はシミ、シワなど美容の観点から語られることが多いのですが、実は体にも深刻なダメージをひきおこすことをご存知ですか?皮膚の炎症や皮膚がんだけでなく、免疫機能や目への影響について紹介します。また、安全なほくろと皮膚がんとの見分け方についても取り上げます。
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初夏から真夏はさんさんとふりそそぐ日光の下、半そで、素足でさっそうと出歩きたくなる季節ですが、日焼けには用心しましょう。「日焼け」とひとことで言っても、その種類には大きく2種類あることをご存知でしょうか。皮膚の炎症が起こり、赤くなってヒリヒリ痛むのを「サンバーン」、その後3~4日たって色素沈着し、褐色になってしまうのを「サンタン」といいます。いずれもUV-Bの影響によって起こるものですが、まずはこの2つの特徴を把握しておきましょう。
日焼けの種類 | サンバーン | サンタン |
---|---|---|
肌の状態 | 赤くなってヒリヒリ痛む | 褐色になるが痛みはほとんどない |
発症する時期 | 強い日差しに当たった後、約半日~2日 | サンバーンを発症してから3~4日後。約7日で最も黒くなる。 |
日焼けのメカニズム | 表皮の角化細胞の細胞膜でつくられた活性酸素により、血管を拡張する作用をもつプロスタグランディンEという物質が真皮に作用して血管を拡張し、血流が増えるために炎症が起こる。 | サンバーンにより、プロスタグランディンEとともにつくられたサイトカイン、神経ペプチドなどの物質が、表皮の基底層にあるメラノサイト(色素細胞)に到達し、メラニンという褐色の色素をつくる。これが増えると皮膚が褐色になる。 |
皮膚への影響 | 皮膚の細胞のDNAが傷つけられるため、皮膚がんの原因になる。 | メラニンがたくさんできて表皮の基底細胞を覆うため、皮膚の細胞のDNAをUV-Bの影響から守ってくれる。 |
サンバーンからサンタンに移行するとメラニン色素がつくられ、UV-Bの影響でDNAが傷つくのを防ぐことができます。つまり、メラニンは肌を守るために大切な役割を果たしています。しかし、一度に大量にUV-Bを浴びるとメラニンの量が多くなるため、シミの原因になってしまいます。強い日差しを浴びるのは皮膚の美しさを保つには大敵というわけです。
それでは、紫外線によってひき起こされる皮膚がんには、どんな種類があるのでしょうか。大きく分けて以下の3つがあると言われています。
皮膚がんのなかでは最もポピュラーながんです。最初はほくろと間違えられやすく、年をとるとともに次第に大きくなっていきます。転移することはほとんどありませんが、治療しないでいると筋肉や骨にまで到達することも。
基底細胞がんの次に多い。暗紅色のしこりや潰瘍ができます。紫外線量の影響のほか、子供の頃の重度のやけどが原因になることもあります。治療が遅れると転移するので、早めの対策が肝要です。
悪性黒色腫ともいわれ、白人に多く見られます。メラノサイト(色素細胞)ががん化し、黒褐色や紅色のほくろのようなものができます。進行すると転移しやすく、手術では広範囲の皮膚やリンパ節も切除してしまわなくてはならないこともありあmす。
また、紫外線の影響によって起こる皮膚がんのがん前駆症として注目されているものに、「日光角化症」があります。顔や鎖骨の周辺、手の甲などに紅褐色の斑点ができたら要注意です。長い年月の間に紫外線を浴びてきた高齢者に多いのですが、約2割が有棘細胞がんになるといわれているので、早めに皮膚科医に相談するのがベストです。
紫外線の影響は皮膚ばかりではなく、体内の免疫機能へのダメージも深刻です。紫外線が免疫力に影響してひき起こされる病気に、ウイルス感染性の単純ヘルペスがあり、なかでも口唇ヘルペスが代表的です。口唇ヘルペスは、多くの場合お母さんが赤ちゃんにほおずりをしたりキスをしたときに感染し、体内にウイルスが潜伏します。風邪や睡眠不足、紫外線などによって免疫力が低下すると、ウイルスが再活性化し、唇にポツポツと現れます。
では、紫外線が免疫機能を低下させるメカニズムはどうなっているのでしょう。皮膚の表皮には、「ランゲルハンス細胞」という手のひらを広げたような細胞があります。この細胞は異物が侵入した情報をキャッチし、リンパ節に移動してその情報をリンパ球に伝え、異物をやっつけてもらう仲介役のような役割をしています。しかし、ランゲルハンス細胞が紫外線によってダメージを受けると、異物の情報をキャッチできなくなるためリンパ球に情報が伝わらず、免疫機能がはたらかなくなります。つまり、体の免疫力を保ち、ウイルスや細菌の感染から身を守るためにも、日焼け対策はしっかり行うことが肝心です。
紫外線は目にも影響を与えるといわれています。目のレンズの役割をしている水晶体がにごり、視力が低下してしまう白内障です。なかでも最も多いのが加齢によって起こる老人性白内障ですが、このリスクファクターのひとつにあげられるのが、紫外線となります。白内障に影響を与える紫外線は、おもにUV-Bであるといわれてきましたが、最近の研究ではUV-Aも加わるとダメージが大きくなることが明らかになっています。レンズはたんぱく質を主成分として構成されており、血管がないために新陳代謝が起こりません。長い年月をかけてレンズに紫外線が当たるとたんぱく質の変性が進み、弾力性や透明性が低下して白内障がひき起こされるというわけです。
加齢とともに進行する白内障を予防するには、まぶしい日差しの下ではサングラスを着用することが最も大切です。
メラノーマなどの皮膚がんは、最初はほくろと見分けがつかないことが多いようです。ほくろはメラニンを多く含んだ色素細胞が増えてできる「色素性母斑」というもので、がんになることはほとんどありません。短期間に以下のような変化があれば、ほくろではなく皮膚がんが進行している可能性があるので、十分に注意しましょう。