認知症は大きく分けて2種類。脳の血管が詰まって起こる脳血管性認知症とアルツハイマーに代表される脳の変性による認知症です。原因は親しい人との死別、引越しなどによる精神的なものや、病気によるケースも。原因を早く突き止め、適切な治療を受けることが大切です。
(監修:多摩南部地域病院・副院長 和智明彦先生)
実際の認知症患者の7割はアルツハイマー型認知症と脳血管性認知症に分けられる。
脳の実質の変性により、神経細胞が脱落し、脳が萎縮して生じる。代表的な病気がアルツハイマー型認知症。アルツハイマー型認知症の場合、原因についてはまだ明らかではないが、危険因子についてはいくつかわかっている。
脳梗塞や脳出血などによって脳の神経細胞に酸素や栄養が行き届かなくなり、障害が起こる。梗塞や出血の程度が大きければ一度の発作で認知症が生じるが、自覚症状がないような小さな発作を繰り返すうちに神経細胞が広範囲で傷つけられ、やがて認知症がおこる。脳梗塞、脳出血の原因となる脳動脈硬化をまず防ぐことが肝心。そのほか高血圧、高脂血症、糖尿病などいわゆる生活習慣病も危険因子に数えられる。
アルツハイマー病 | 脳血管性認知症 | |
---|---|---|
発症しやすいのは? | 女性に多い | 男性に多い |
進行状況は? | なだらかに進行する | 発作などにあわせて階段状に進行する |
神経症状は出るのか? | 神経症状は少ない | しびれやマヒ、動きの低下などを伴う |
物忘れの自覚は? | 物忘れの自覚は失われる | 初期は物忘れを自覚している |
人格は? | 人格が変わることもある | 人格は保たれやすい |
画像診断でわかることは? | 画像診断で脳の萎縮がわかる | 画像診断で梗塞などの病巣がわかる |
認知症を発症したり悪化させたりする主な理由は、病気によるものと、心理的な動揺や喪失感などが考えられる。
認知症の症状を招く病気はいくつかあり、なかには原因となる病気を治療することで認知症の症状も改善されるケースがある。先ずは原因を見つけて正しく対処することが肝心。
認知症の発病や悪化には心理的な影響も大きく関わっている。親しい人との死別や、退職や引退、住み慣れた土地からの引越しなどによる生活環境の変化に対応しきれず、寂しさがつのったり戸惑いや不安が高じて認知症のきっかけとなるケースもある。そのほか、服用している薬の量が多すぎることで物忘れや注意力散漫、物覚えが悪くなるといった認知症に似た症状が出ることも。
認知症の症状が出てくると「もう治らない」と諦めてしまいがちだが、以下の例のように改善する認知症もある。
頭を打った際血管が切れ、1~2週間かけてゆっくりと硬膜とくも膜の間に血液がたまる病気。たまった血液(血腫)が脳を圧迫して頭痛、吐き気、手足のマヒに続いて物忘れなどの認知症状が現れる。たまった血腫を手術で取り除くと認知症の症状が改善される。
甲状腺疾患が原因で記憶障害や意欲の低下が見られる認知症。甲状腺ホルモンを服用することで改善される。
頭蓋骨の中の脳脊髄液(のうせきずいえき)が何かの理由により流れが悪くなってたまり、脳を圧迫することで起こる。歩行障害や認知症の症状を表すが、最近では効果的な手術によって症状を改善させるケースも増え、注目が集まっている。近年、これまで考えられていたよりも、有病率が高いことが分かってきた。