歯医者さんに通っている間は「これからは甘いものも食べず、歯をきちんと磨こう!」と心に誓うのですが、いつの間にかまた虫歯ができてしまう…。そんなことを繰り返していませんか?実は虫歯にも発生するタイミングとメカニズムがあるのです。
虫歯は紀元前からあった病気で、医学の父・ヒポクラテスは、歯の中に悪液がたまると虫歯ができると主張していたといわれる。長い長い間、人間を悩ませ続けてきた虫歯。医学の進歩とともに、現在では虫歯はミュータンス菌などによる感染症の一種であることや、ほかにもいくつかの要因が重なって発生することがわかっている。
さらに、新たに注目されているのは「脱灰」と「再石灰化」のバランス関係。「歯にミネラルを補給して結晶化させる状態(再石灰化)」よりも「酸などによって歯からミネラルが溶かしだされてしまう状態(脱灰)」のほうに傾いた場合に、虫歯は発生しやすいと考えられている。まずは知っているようで知らなかった虫歯発生の要因からみてみよう。
「甘いものを食べるから虫歯になる」。多くの人がそう信じているが、実は虫歯の発生にもちゃんとメカニズムがある。
下の4つの重要因子がそろったときに、虫歯が発生するのだ!
口の中に砂糖が長時間滞在していると、ミュータンス菌などの細菌がこれを食べてネバネバした不溶性グルカンを形成。グルカンは歯にこびりつくと同時にさまざまな細菌を抱き込んで歯垢(プラーク)をつくる。歯垢の中で糖分やでんぷんが分解されると酸が発生、歯の表面を溶かし始める。
ミュータンス菌などの細菌は、糖分を食べて乳酸を排泄する。歯垢(プラーク)内にたまった乳酸は、歯のミネラル(カルシウムなど)を溶かしてしまう。
ひとりひとり顔が違うように歯の性質も千差万別。人によっては歯の質が弱い、歯並びが悪いなど、虫歯にかかるリスクが高い場合もある。
歯に歯垢がついている時間が長いほど虫歯になりやすくなる。食べたり飲んだりするたびに歯の表面は酸性に傾いてしまうので、いつも何か口に入れている人はかなり危険!食事や間食は規則正しくとることが大切。
ニューブランの輪
カリフォルニア大学サンフランシスコ校歯学部口腔生物学科の
アーネスト・ニューブラン教授が提唱した虫歯の発生理論
残念ながら、虫歯になりやすい人、なりにくい人がいるのは事実。以下の点に多く該当する人は虫歯になりやすいといわれている。
エナメル質 | 体の中でもっとも硬い組織。水晶よりもやや硬い! |
---|---|
象牙質 | 歯の中心部にあり、骨とほぼ同じ硬さ。 |
歯髄 | 象牙質の内側にある部分で、いわゆる「神経」と呼ばれる部分。多数の血管や神経を含んでいる。 |
セメント質 | 歯根の象牙質の一部をおおっている薄くて硬い組織。歯を顎骨に固定するのに役立っている。 |
歯肉(歯ぐき) | 歯が植わっている歯槽骨をおおい、歯の周りを取り囲む粘膜などの軟組織。 |
歯槽骨 | 顎骨の中で歯が植わっている部分。歯のない所には存在しない。歯が抜けた後に、顎の骨がやせてくるのはそのため。 |
歯根膜 | 歯根の表面にあるセメント質と歯槽骨を結ぶ結合組織。歯が納まっている穴(歯槽)の中で歯を囲むようにして支えている。また、歯ごたえなどの感覚を認識し、脳に信号として送るはたらきもある。 |
参考:「歯の不思議サイエンス」五十嵐清治監修 ダイヤモンド社刊
虫歯になると、まず一番外側のエナメル質に穴があき、次に象牙質、歯髄と順々に侵されてしまう。ズキズキする痛みとともに、最終的には歯肉から上の部分がほとんどなくなり、二次的に腐敗菌の感染を引き起こして悪臭がすることも。
虫歯になっても軽度のうちに治療をすれば、歯はきちんと機能するようになり、その後も長く使い続けることができる。早期発見、早期治療が不可欠なのだ。乳歯の場合は、永久歯に比べて虫歯の進行のスピードが速いので、要注意!