疾患・特集

お正月料理を楽しもう!おせち料理の由来と栄養バランス

おせち料理は保存がきくだけでなく栄養バランスもばっちり。今年1年の食生活もこんな風にいきたいものです。昔の人の知恵にはホントに脱帽してしまいます。

おせち料理の由来

「おせち」という言葉のルーツは、平安時代の朝廷行事にさかのぼる。年の始め(当時は1月7日)のほか、3月3日、5月5日などの五節句に、神前に食物を供え悪魔払いを祈願したことから始まった節句の料理、「節会(せちえ)料理」をさす言葉。
「おせち料理」の原形が作られたのは江戸時代後半。料理の文化が発達したこともあり、野菜や山海の幸を利用して、豪華な正月料理が生まれたらしい。
このお正月料理を「おせち料理」と呼ぶようになったのは明治以降。平安時代の風習と江戸時代の料理を組み合せて呼ばれるようになったようだ。

おせち料理は健康料理

おせち料理は、正月元旦の朝に出す。年神さまを迎えて健やかな新年をお祝いし、1年の幸福を祈りながら食する料理。1年最初の料理にふさわしく、野菜、たまご、肉、魚と満艦飾のごちそうだ。ここでは、栄養学的な面からもおせち料理を見てみよう。

野菜、海草、豆、芋…、1日に摂取したい食品がすべて登場。ここまで豪華でなくても、1年間、おせち料理と同じようなバランスの食生活を送れば、健康に過ごせること間違いない

三つ肴/おせちの代表格

黒豆 1年を「まめ」に暮らせるようにと願うもの 黒豆は大豆の一種。肌を美しくする良質なたんぱく質を含む。また、コレステロールや脂肪酸の増加を抑えるリノール酸、リレイン酸を含む(大豆も同様)。さらに、ビタミンBを多く含むため、疲労回復に効果的。ただし、市販の煮黒豆は、砂糖を多く含むので、たくさん食べると逆効果。できれば手作り、砂糖ひかえめにしたいもの
かずのこ たまごの数にあやかり、子孫繁栄を願う かずのこはにしんの卵。コレステロールを多く含む。血中のコレステロール値が高い人は、縁起をかつぐ程度に抑えたほうがいい。
ごまめ(田作り) カタクチイワシの稚魚を塩水で洗って干した物。田の肥料にしたことから「田作り」とも呼ばれる。ごまめは「五万米」とも書き、五穀豊穣を祝う食べ物 小魚だけあって、カルシウムやミネラルが豊富。15g程度で1日の必要量600mgの3分の1を摂取することができる。

そのほかの代表的なおせち料理

きんとん きれいな黄色は金貨の色。財産が貯まるようにとの願いがこもる きんとんはマッシュしたサツマイモにクリを合せたもの。さつまいもは食物繊維の量が芋類の中では最も多い。また、便秘に効くヤラピンという物質も含まれている。ビタミンCも豊富。クリの甘露煮を使う場合は、さつまいもの砂糖をひかえ目にしても大丈夫。
たたきごぼう 黒いごぼうは、豊作のときに飛んでくるといわれる黒い瑞鳥をさす。豊作と1年の息災を願う。また、細長い形から、細く長くつつましくという祈りもこもる 食物繊維を多く含む。また、タンニンや鉄を含み、血の巡りをよくする。貧血などにも効果がありそう。
かまぼこ 半円形の形が初日ノ出を連想させ、縁起がいいと考えられている かまぼこの材料は魚のすり身。魚のたんぱく質が手軽にとれる。
伊達巻 江戸料理としては目新しく、形もきれいだったことから「伊達巻」と名付けられたよう。「伊達(粋で目立つこと)」という言葉から、教養や文化が身につくことを願う 卵と白身魚のすり身で作っているので、たんぱく質は豊富。しかし、食べ過ぎるとコレステロールのとり過ぎに。糖分も多いので注意。
八つ頭 親芋が大きく、外側はでこぼこがあって、八方に頭があるように見える。人の上に立てるようにという願いをこめて 食物繊維はさつま芋に次いで多い。カルシウムやミネラル分も芋類の中では豊富。
レンコン レンコンの穴を通して未来の見通しがきくという縁起をかついだもの レンコンを空気にさらしておくと黒くなるのは、タンニンや鉄を多く含むから。このほかビタミンCや食物繊維も豊富。
昆布巻 昆布は昔「広布(ひろめ)」と言った。ひろめは「広がる」に、こぶは「喜ぶ」にかけて、福が授かるとして、祝いの席に欠かせない食物となった 昆布に多く含まれるヨードは、体内の代謝を活発にする。また、利尿作用を促して塩分を排泄するカリウムの含有量は食物中最高。食物繊維はごぼうの2倍以上だ。
紅白なます 紅白の彩りがおめでたさを演出し、平安、平和を祈る縁起もの にんじんはビタミンA、B、Cを多く含む野菜の優等生。特にカロチン(体内でビタミンAに変わる)を多く含んでいる。大根はでんぷん消化酵素のジアスターゼなどが多く含まれている。
海老 腰を曲げて進む海老の姿を老人にたとえ、長寿の願いを表わす。紅白の彩りもおめでたい 高たんぱく低脂肪でダイエットに適している。カルシウム、ヨード、ミネラルなども豊富。コレステロール値を下げるタウリン(アミノ酸の一種)も多い。

参考文献:「華やかな初春 祝・美・膳」白井操 ひかりのくに社
「四訂 食品成分表 こんなときこの食べ物が効く」木下 勤 ブックマン社
「続 こんなときこの食べ物が効く」木下 勤 ブックマン社

公開日:2000年12月25日