疾患・特集

がんは遺伝する?

がんはどのように発生するのでしょうか?がんには遺伝的な要素によるものもありますが、生活習慣などの環境的な要素のほうが、がん発生のより強い引き金になるようです。

がん遺伝子とがん抑制遺伝子

がん遺伝子とがん抑制遺伝子

人間の体内には、がん発生の原因となる遺伝子が存在し、「がん遺伝子」と呼ばれています。 これらの遺伝子の本来の役目は、細胞が正常に増殖するために必要なたんぱく質を作ることです。ところが、何らかの影響で遺伝子が変化し、細胞を異常に増殖させてしまうのが、がんの発生に関係あるのではないかと考えられています。
一方、体内には、がん発生をおさえる「がん抑制遺伝子」も存在しています。この遺伝子はおかしくなったがん遺伝子を正常に戻すはたらきがあると考えられています。つまり、この遺伝子に傷がついたりして、正常なはたらきができなくなると、がん化を促進する結果となってしまうのです。

遺伝子に影響を与えるのは何?

人間を取り巻く環境の中には、体を素通りして遺伝子に傷をつけてしまう物質が存在します。代表的な例を紹介します。

  • ●化学物質
    飲食物や呼吸などを通して体内に取り込まれた化学物質が、体内で化学反応を起こし、遺伝子の変異の原因となります。現在、発がん性のある化学物質は約2,000種ほどあるといわれています。発がん物質として有名なのは、たばこに含まれる化学物質ですが、ピーナッツやトウモロコシに生えるカビなど、自然にできる物質にも含まれています。
  • ●放射線
    原子爆弾が落とされた広島、長崎や、原発事故があったチェルノブイリなどで、白血病や甲状腺がんが高率に発生しています。放射線と発がんの関係は実験でも確認されています。
  • ●紫外線
    紫外線と皮膚がんとの関係は、動物実験などで確認されています。また、紫外線の強いオーストラリアの白人に世界一皮膚がんが多いのもこのためではないかと考えられています。
  • ●ウイルス
    ウイルスにも遺伝子に異常を起こすはたらきがあると考えられています。例えば、肝炎の原因であるC型、B型ウイルス(肝臓がん)、ヒトパピローマウイルス(子宮がん)などです。

がんになりやすい体質は遺伝するの?

がんは遺伝子の異常が原因で起こる病気ですが、親から子へ遺伝する病気ではありません。遺伝するがんは、網膜芽細胞腫(小児の目にできるがん)などごく少数です。ただし、証明されたわけではないものの、がんになりやすい体質が遺伝する可能性は否定できません
現在は、遺伝よりも生活環境要因のほうが、がんを発生させる大きな原因になっていると考えられています。