皮膚のしわやシミ、白内障や網膜炎、認知症などの老化現象と活性酸素の関係が注目されています。
老化とは一般的に「歳をとるにつれて体の機能が衰えること」とされています。この原因について「活性酸素によって体の細胞や組織が酸化して変質し、機能が衰える」のではないかという「活性酸素説」が注目されるようになってきました。
この説を最初に主張したのはアメリカの研究者です。彼らの研究で、活性酸素が体内に次のような影響を与えることがわかりました。
老化現象としては具体的に、運動機能や内臓の機能の低下、物忘れ、眼の白内障、皮膚のしわなど、病気とまではいかない衰えのほか、血管が衰えて動脈硬化などにかかりやすくなるといったことが挙げられます。最近では、こういった現象に活性酸素が深く関わっていることがわかってきています。
太陽の紫外線は体の表面を通り抜けます。そして、皮膚細胞内の水分やスーパーオキシド、過酸化 水素などを刺激して、最も有害なヒドロキシラジカルを大量発生させてしまうのです。ヒドロキシラジカルは、皮膚の弾力を保つたんぱく質コラーゲンなどに取り付いて破壊してしまいます。結果、皮膚のハリがなくなって、しわになってしまうのです。
眼のレンズのはたらきをする水晶体という部分が黄色や灰白色ににごる病気です。レンズがにごるのですから、そのままにしておくと視力を失ってしまいます。
眼も皮膚と同様、常に紫外線にさらされている、活性酸素発生量の多い器官です。この攻撃から自らを守るため、水晶体の表面には活性酸素の影響をおさえる酵素やビタミンCが豊富に含まれています。ところが歳をとるにつれて酵素の量が減り、活性酸素の影響をおさえられなくなるため、白内障になりやすいのではないかと考えられています。
ひじやひざの関節が痛むリウマチ性関節炎も老人に多い病気です。この病気は体の免疫機能がおかしくなってしまうのが原因です。白血球が自分の細胞を敵とみなし、活性酸素を撒き散らして攻撃するため、炎症や痛みが起こります。関節には活性酸素に対抗する酵素などが少ないため、集中的にやられてしまうのです。
認知症には「アルツハイマー性認知症」と「脳血管性認知症」があります。「アルツハイマー性認知症」の原因はまだはっきりとはわかっていません。ただ、活性酸素によって脳の脂質が酸化されてできる「老人斑」が異常に多いため、活性酸素が原因ではないかと疑われています。
「脳血管性認知症」の場合、大元の原因は動脈硬化です。活性酸素などが動脈硬化を促進させた結果、脳の血管がつまって脳梗塞や脳出血になり、後遺症として起こる認知症です。
中年以降かかりやすくなる、動脈硬化、糖尿病やがんなどの生活習慣病の発生にも、活性酸素が大きな役割を果たしていることがわかってきています。