疾患・特集

姿勢が悪いと体がゆがむ

背中や腰が痛い、だるい、肩がこりやすい、頭痛がするなど、日常生活の中で何となく感じる不調。これらの原因は、実はあなたの姿勢にあるのかもしれません。

2本足で立てる歩ける、人間の「姿勢」の仕組み

人間の頭脳が、ほかの動物と比べ格段に進化をとげたのは、2本足で立ち上がる「姿勢」をまず手に入れたため、というのが定説です。この進化が脳の発達を促し、現在の生活を築くモトとなりました。

ところが、2本足で直立する姿勢は、地球の重力に対してかなり無理がある状態だといいます。それを何とか支えるために、背骨、骨盤、それを支える筋肉、足部の骨や筋肉などが発達してきました。

直立姿勢を支える体の仕組み

背骨

背骨

上半身を支える核となる部分です。専門用語では、「脊椎」または「脊柱」と呼びます。約26個の骨(堆骨:ついこつ)と椎間板という弾力性のある組織が交互に並んでいます。上半身を前後左右に曲げられるのは椎間板がゴムのようなはたらきをするためです。 堆骨や椎間板は中が空洞になっていて、このトンネル中に脳からの指令を体に伝える中枢神経(脊髄)が走っています。
脊椎は、首から胸のあたり(頚椎:けいつい)が前に出っ張り(前彎:ぜんわん)、胸のあたり(胸椎:きょうつい) が後ろに出っ張り(後彎:こうわん)、腰のあたり(腰椎:ようつい)が再び前に出っ張っています(前彎)。横から見るとゆるやかなS字型のカーブを描いているのが自然な姿です。

靭帯、腹筋、背筋など

靭帯、腹筋、背筋など

背骨の堆骨と椎間板は、それ自体は積み木のように重なっているだけなので、そのままでは簡単にバラバラになってしまいます。これをしっかりと留めるテープのはたらきをしているのが、靭帯(じんたい)や腹筋、背筋などの組織です。

一般的に「腰」と呼んでいる部分は、脊椎の下部から骨盤にかけての部分です。上半身にかかる力を骨盤を介して両足に伝えています。また、歩行を始め、立ったり座ったり、物を持ち上げたりなどの運動の要となります。腰の部分も骨を支える臀部(でんぶ)や大腿部の筋肉などが体のバランスを安定させるために重要な役割を果たしています。

足部

足部

言わずと知れた、2足歩行の要。大腿骨と脛(けい)の骨(頚骨)は、新生児のときは膝が外を向くO脚ですが、成長するにつれ、真っ直ぐな形になります。また、足の裏(底)の部分はゆるやかなアーチ状になっていて、歩くときの衝撃を吸収する役割をしています。

現代生活が人の姿勢を退化させる!?

悪い姿勢

2足歩行の姿勢が人間の頭脳を進化させ、その頭脳が現代の便利な生活をうみました。しかし、この生活はいまや人間の姿勢を支えるシステムに危機的な影響を与えようとしています。生活の便利さゆえに骨や筋肉が衰え、重力に対して無理のない直立姿勢(良い姿勢)がとれない人が増えてきたこと。デスクワークなど、不自然な姿勢を長時間とることによって起こる体のゆがみ…。

悪い姿勢が我々の体にどのような影響を与えるのか例をあげてみましょう。

悪い姿勢の例その1

字を書くとき、食事をするときなど背中を丸めた姿勢をとる、いわゆる猫背です。姿勢の悪い子の多くがこのタイプ。高さが合わないキッチンで仕事をする主婦にも多くみられます。

体が受ける影響(ゆがみ)
胸椎の後彎が極端になったり、本来前彎している腰椎が後彎気味になるなどのゆがみが生じます。また、資料を見ながら文字を書くなどの作業で、常に資料を体の同じ側に置いていると、胸椎や腰椎に横方向のゆがみも生じます。

ゆがみによる体の不調
腰痛や背中の痛み、肩こりのほか、脊髄に負担がかかると、心筋、肺、消化器官のトラブルをもたらすこともあります。歯の噛み合わせが悪くなったり、呼吸が胸式呼吸になり血流量が減少します。

悪い姿勢の例その2

パソコンに文字を打ち込むとき、顔を斜め下の方に向けている人が多いのですが、横からみると背中から腰にかけては真っ直ぐですが、首から上が下を向いている姿勢となります。

体が受ける影響(ゆがみ)
本来後彎している頚椎に前方への力がかかり、頚椎が平らな状態になってしまいます。

ゆがみによる体の不調
真上を見づらくなります。歯が浮くような感じになり、いつもポカンと口をあけています。脳の血管障害や、目の障害などをもたらす恐れもあります。