疾患・特集

キシリトール VS フッ素

キシリトールとフッ素。その性質、効果と注意点を知って、うまく使いましょう。

キシリトールとは?

砂糖に近い甘さを持つ天然の甘味料です。白樺や樫などの樹木からとれるキシランを還元し製造したもので、ソルビトール、マンニトールなどと同じ糖アルコールになります。
糖アルコールとは、ブドウ糖、麦芽糖などに水素を加えて還元しており、糖アルコールの中では最も甘く、砂糖と同じくらいです。
糖アルコールは砂糖とは異なり、虫歯の原因とはなりません

キシリトールの効果は?

  • ●虫歯・歯周病のもと、歯垢を減少させる
    細菌の大集団・歯垢(プラーク)のネバネバ(水溶性グルカン)が作られなくなり、集団は解散します。つまり、歯垢が減少し、その中に隠れていた虫歯菌が減ります。虫歯菌が、歯を溶かす酸を作ろうとしても阻止します。虫歯の進行を止めるだけでなく、歯垢の中にカルシウムを取り入れるはたらきもあるため、歯の修復(再石灰化)も促進されます。
  • ●唾液の分泌を促し、歯の再硬化を促進させる
    ガムでキシリトールをとる場合、噛むことで唾液が多く分泌され、唾液に含まれるカルシウム、リン酸が歯を強くしてくれます。唾液は発がんをおさえるなど、ほかにも自然の万能薬としてはたらきます。
  • ●糖尿病の人でも大丈夫
    キシリトールを食べると、小腸から体に吸収されますが、代謝するときにインシュリンに頼らないため、糖尿病の人でも大丈夫です。FAO(国連食料農業機関)やWHO(世界保健機構)でも安全性の高いものとされています。ただし糖アルコールは食べすぎると下痢する人もいるので、気をつけましょう。

キシリトールの注意点は?

  • ●カロリーが実はかなりある
    カロリー的には3.0kcal/g(砂糖が4.0kcal/g)で、決して低カロリーではありません。砂糖の75%もあります。いくら虫歯にならないからと言って、食べすぎればカロリーオーバーになってしまいます。
  • ●値段が高い
    キシリトールは砂糖の10倍の値段です。100%のものは値段が高いため、ほとんど歯医者でしか手に入れられません。日常の習慣とする場合は店頭でキシリトールの含有量をチェックして買いましょう。含有量が多いものほど、清涼感のある甘みになります。
  • ●一緒に含まれるものに注意!
    値段が高くて100%は無理な以上、ほとんどの商品にはほかの甘味料も使われています。特に注意すべきは「砂糖」「水あめ」という表記のあるものです。せっかくの虫歯予防用キシリトールガムも、虫歯を作りだす砂糖が含まれていては、歯みがきの後、特に寝る前に口にするのは危険です。
  • ●あくまで歯ブラシのサポートとして考える
    基本的に、歯垢は歯ブラシでかきださなければ減少しません。キシリトールを口にしていれば、虫歯も歯周病もならないと考えるのは大きな間違いですので、気をつけましょう。

フッ素とは?

フッ素は自然界にも存在し、わかめ、海苔、魚介類、小魚、お茶などに多く含まれる歯を丈夫にする栄養素です。虫歯予防としては、フッ素液を歯医者さんで直接塗る、スプレーする、フッ素入り歯みがき粉・フッ素入りうがい薬の使用などの方法があります。アメリカなどでは、飲料水に加えたりしています。

フッ素の効果は?

  • ●歯の質を強くする
    表面のエナメル質を構成するハイドロキシアパタイト。その結晶の中の水酸イオンに代わってフッ素が入るため結晶が安定し、酸に溶けにくくなります。
  • ●歯の修復をすすめる
    一度溶けてしまったエナメル質が再び結晶化するように、促進するはたらきがあります。ただし、C1程度より進んでしまった虫歯には効果はありません。
  • ●歯垢(プラーク)の生成をおさえる
    歯垢の中にフッ素が停滞し、虫歯菌の活性を阻害したり、酸を作らせないようにします。
  • ●子どもの虫歯予防に役立つ
    歯質が未熟なのに、甘いものが好きで、虫歯になりやすく、歯垢の除去がしにくい子供には、ブラッシングの習慣づけが第一ですが、完全に虫歯を防ぐことは難しく、フッ素を用いることで、かなりの効果が期待できます。もちろん大人にも効きます。

フッ素の注意点は?

  • ●多量に摂りすぎると危険
    成人で約250mgを一気に飲むと、吐き気、腹痛、下痢、けいれんなどがおこることがあります。発がんに関係しているとの疑いもあります。しかしそれには、0.1%のうがい薬でも560ccですので、そんなに多量のフッ素を一気に飲むことは、ほとんどできません。さらに10~20倍のフッ素を摂ると致死量となります。
  • ●効果を過信しやすい
    確かにフッ素は、かなりの虫歯予防効果が期待でき、世界中で使用され成果があがっています。フッ素の主な効果は、歯自体を丈夫にできるということです。歯垢をなくしてくれるわけではありません。なので、歯ブラシもロクにせず、フッ素液でうがいするだけでは、歯垢はとり除けないのです。キシリトール同様、歯ブラシの強力サポーターとして考えましょう。