疾患・特集

「心の病」は薬で良くなるの?

近年「心の病」の治療では、特に「薬」はめざましい発展を遂げ、確実に成果を上げています。

今どきの「心の病」の治し方

近年「心の病」は、単に本人の性格や生い立ちだけの問題としてとらえることはほとんどなくなりました。それとともに体(脳など)にはたらきかける治療、特に「薬」はめざましい発展を遂げ、確実に成果を上げています。現在、主に行われている治療方法は以下の通りです。

精神療法

精神分析や行動療法など。主に信頼関係に基づいて「話をする」ということで治療を行います。
自らが不安感をコントロールしていく認知療法なども、最近特に注目されています。

薬物療法

ここ数十年で飛躍的な発展をとげた療法で、現在の精神医療には欠かせません。
専門医が、ドーパミンなど脳内神経伝達物質の活動や解剖学的変化について、想像をはたらかせ薬を処方します。

作業療法

ダンスやお芝居、音楽、美術など、さまざまな活動を通して、社会復帰へのリハビリを行います。
また病状を将来に向け安定させ、再発を予防します。

心と体は分けられない

ところでなぜ、薬で「心」を治すことができるのでしょうか?
心も「脳」という体の一部のはたらきであることを前提として、脳生物学が発展し、向精神薬の種類は増加、そのメカニズムの解明も進みました。
うつ病患者の不安感が脳内物質のはたらきであるなら、それを薬でやわらげ、最悪の事態も避けることができます。

しかし、薬は基本的に対症療法となります。増大する不安感を抑えることはできても、不安に感じる原因そのものは取り除けません。そういった意味で、不安の原因を自ら見つめ直したり、上手に不安感を回避する方法を身につけたりする精神療法が大切となります。
しかしさらに考えると、確かに心は体の一部で、誰でも体調の悪い時には不安になるし、病気になれば落ち込みます。心の病が生活習慣病のひとつと言われるようになったのは、生活習慣の乱れの蓄積が体にも心にも病をもたらすからです。
病気になってしまった場合、不安感や焦り、無気力に取りつかれたままでは前に進めません。ときには薬という防具を身につけ、新たな生活習慣を獲得していきましょう。

主な向精神薬と、その用法・目的

心の病に処方する「向精神薬」は、機能異常(ズレ)の症状を改善・正常化するために使われるものです。

抗不安薬 ベンゾジアゼピン系 主に神経症的症状の治療に用いられる。不安、緊張、抑うつ、焦燥、睡眠障害など。うつ病の抗うつ剤と併用されることも多い。
抗精神病薬 フェノチアジン系、ブチロフェノン系、ベンザミド系など 主に精神分裂病的症状の治療に用いる。薬剤によって、鎮静効果、幻覚・妄想の改善。投与量によって、自発性を高める、引きこもりを改善する作用を有するものがある。
抗うつ薬 イミプラミン系など 意欲を高め、気分を明るくし、不安を軽減する効果がある。脳内伝達物質のノルエピネフリンやセロトニンのはたらきを高める。
抗躁薬 炭酸リチウム 高揚した気分や興奮、それにともなう誇大妄想などの症状を安定化する。抗てんかん剤にも同様の効果があるため、そちらが使われることもある。
睡眠薬 ベンゾジアゼピン系など 単独で使用する他、睡眠障害をともなっている元の病気や状態により、抗うつ薬や抗精神病薬と同時に使用することもある。
公開日:1999年3月27日