人間の体に入ったダイオキシンは主に脂肪組織に溜まりますが、いつまでもそこに留まるわけではなく、常に血液とともに体中を回っています。母乳はこの血液が濃縮されたものなので、ダイオキシン類も一緒に赤ちゃんの体に移動することになるのです。
人間の体に入ったダイオキシンは主に脂肪組織に溜まりますが、いつまでもそこにとどまるわけではなく、常に血液とともに体中を回っています。母乳はこの血液が濃縮されてできるのです。特に脂肪は、血液中の約10倍に濃縮されており、ダイオキシン類もそれと一緒に赤ちゃんの体に移動することになります。
次の表は、母乳中の脂肪1gに含まれるダイオキシン類(ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフラン)の量を国別に比較したものです(1989~1990年調査)。日本のダイオキシン汚染度は世界でもトップクラスですが、母乳にも顕著に現われています。ただし、日本国内でも汚染の度合いには差があるようです。
国名 | 量(pg)※ |
---|---|
日本(大阪) | 51 |
日本(福岡) | 24 |
アメリカ | 15~17 |
イギリス | 17~29 |
ドイツ | 28~32 |
インド | 6 |
南ベトナム | 7~32 |
赤ちゃんは、母乳から毎日どのくらいの量のダイオキシンを摂取してしまうのでしょうか。次の表は、日本のある4都市における母乳中のダイオキシン類の濃度と、赤ちゃんが摂取すると推定されるダイオキシンの量を示したものです。いずれの都市も厚生労働省の耐容1日摂取量(一生の間毎日摂取しても健康に影響がないとされる量/体重1kg当たり10pg)より何倍も多いことがわかります。
場所(人数) | 母乳中濃度 (pgTEQ/g脂肪) |
乳児の摂取量 (pgTEQ/kg/日) |
---|---|---|
A(7) | 10.9 | 49.1 |
B(6) | 28.1 | 126.5 |
C(3) | 18.3 | 82.4 |
D(15) | 15.0 | 67.5 |
しかもこれは、ダイオキシンとポリ塩化ジベンゾフランのみの数字です。コプラナ-PCB(ダイオキシンと分子構造が似ていて毒性もある物質)も加えると、体重1kg当たりの摂取量は67.1pg~149pgにまでなるのです。
ダイオキシン類の濃度が高い母乳で育った赤ちゃんは、人工乳育児の赤ちゃんに比べて血液中ダイオキシン濃度も高くなります。血液中の脂肪1グラムあたりのダイオキシン類の量が9倍ぐらい高いという調査もあるくらいです。やはり母乳育児はやめたほうがいいのでしょうか。
しかし、母乳にはさまざまな免疫抗体が含まれているというメリットもあります。赤ちゃんは母乳を飲むことで、病気などと戦う力をつけていくのです。また、「おっぱいをあげる」ということは、母と子の愛情関係を確立していくうえで重要な過程のひとつでもあります。
現状では、例えば3ヵ月くらいまでは母乳中心、あとは少しずつ人工乳に変えるなどの工夫をしていくしか方法はないようです。