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適量を超えてお酒を飲み続けると、どんな「万病」を招く?

お酒は、適量以内なら「百薬の長」、適量を超えて飲み続けると「万病のもと」。では 、適量はどのくらいなのでしょうか?適量を超えて飲み続けるとどんな「万病」を招くのでしょうか?

一番たくさん飲めるのは、アルコール分が少ないビール

ビール 日本酒 ウイスキー ワイン

厚生労働省がすすめているお酒の飲み方は、「日本酒の場合、1日1合まで。1週間に最低2日はお酒を飲まない日(休肝日)を作る」というものです。これをほかのお酒にあてはめると次の表のような量になります。アルコールの含有量が少ないビールが量としては1番多く飲めますが、量が多い分カロリーも多いため、体重が気になる人は要注意です。

1日に飲むお酒の量の目安

日本酒(15.9%) 1合=180g 197kcal
ビール(4.5%) 大ビン1本=約650g 247kcal
ワイン(12%) ワイングラス1~2杯=約240g 約150kcal
ウイスキー(43%) ダブル2杯=約60g 約150kcal

ところで、忘年会などの宴席で1合までというのは寂し過ぎるという方もいるかもしれません。そんな人は、その分休肝日を多くして調整しましょう。ただし、自分に飲み過ぎを許すのは、このシーズンのような特別な時期だけにすること。また、特別の宴席だといって、足が立たなくなるまで飲んでしまうのも禁物です。

飲みすぎるとこうなる!酒は「万病のもと」

脂肪肝

脂肪肝
右側の肋骨の一番下の縁を押してみて、
硬くなっていたら脂肪肝の恐れあり

1日5合以上の飲酒を1週間ぐらい続けていると起こるといわれており、肝臓の細胞内の脂肪量が増えた状態をいいます。酒と一緒に食べる脂っこいつまみが原因のひとつとも言われています。
ただし、この時点では特に症状はなく、お酒をやめれば数週間で元に戻るようです。ひどくなると腫れてきて、超音波検査でも判断できますし、肝臓が大きくなって腫れているようなら、お腹に触っただけでもわかるようになります。

●アルコール性肝炎

脂肪肝の状態では自覚症状はほとんどありません。しかし、そのまま過度に飲み続けると、食欲減退、吐き気、倦怠感、腹痛、発熱、黄だん、肝臓が腫れて重苦しいなどの症状が出てきます。体がだるく、飽きっぽくなるのも症状のひとつです。
これは、肝細胞の一部が破壊されてしまったため。目には見えないものの、肝臓が炎症を起こしているのです。炎症がおさまれば自覚症状もなくなりますが、肝臓は大きなダメージを受けています。
体の表面に傷を負ったときに、傷あとが残るのと同じように、肝臓に炎症の後が硬くなった状態で残ります。何度も肝炎を起こして傷あとが増えると(繊維化という)、肝硬変につながります。

●肝繊維症

肝臓のなかに、目に見えない糸のようなものがたくさんできて、肝臓が硬くなる病気です。このため、肝臓の血液の流れが悪くなり、細胞自体が傷ついてしまいます。自覚症状はアルコール性肝炎と同じですが、倦怠感や発熱、黄だんなどの症状はないようです。

肝硬変

アルコール性肝炎や肝繊維症が原因で起こる肝臓の繊維化が進むと、肝臓全体が繊維でブツブツに仕切られたような状態になります。こうなると、胃腸から肝臓に入ってくる血液が肝臓を通り抜けられずに、胃腸や脾臓にパンパンになるくらいにたまってしまいます。そして、ほかの通り道を求めて、普段は通らない食道の血管を迂回しようとします。これが「食道静脈瘤(りゅう)」と言われるものです。食道の血管もパンパンにはっているから、食べ物が食道を通った摩擦で破裂し、大出血を起こしてしまうことがあります。死につながりうる症状です。
このほか、体に有害なものを処分するという肝臓の役割が失われるため、脂肪の成分の脂肪酸、アンモニア、特殊なアミノ酸など、不要なものが体中にたまるようになります。これが脳内に作用すると、もうろうとした状態から、昏睡状態に陥り、死につながってしまうのです。

●肝臓以外の消化器系の病気

はっきりした因果関係はわからないものの、強い酒を多く飲んでいる人に食道がんが多いのは事実のようです。また、大腸がんや膵臓(すいぞう)がんの原因が飲酒にあるという説もあります。また、急性膵炎などを起こすこともあります。

高血圧

飲酒は、動脈硬化などの原因になる高血圧の原因にもなるようだ。統計的な研究をもとに、1日2合以上飲んでいると血圧が高くなるという説もある。特に心臓に問題のある人には、お酒は危ないといわれているようだ。

急激な飲みすぎも死を招く

お酒を飲むとハイになるのは、脳の理性をつかさどる部分がアルコールによって麻痺するためです。そのまま飲み続けると、運動をつかさどる部分も麻痺、足元がおぼつかなくなったり、吐き気がしたりします。
この状態がまず危険です。泥酔状態で嘔吐したものがのどにつまって窒息!というケースがあります。それでもまだ飲み続けると、昏睡状態、呼吸停止…。という事態に陥る可能性があります。