疾患・特集

がんとたばこ

前世紀から容疑は濃厚

19世紀末までには、多くの外科医が喫煙は舌がんの原因かもしれないと考えるようになっていましたが、喫煙とがんの科学的な研究が始まったのは第2次世界大戦のころからです。その最初とされるのは、ドイツ人ミューラーの研究で、それによると非喫煙者は肺がんになった人のうちで3.5%と低く、一方、喫煙者は65.1%と高率でした。
たばこが、がん発生のどの段階に作用するのかは、現在も詳細なメカニズムは分かっていません。しかし、ミューラー以降行われてきた、たばこと疾病の優れた対照研究や、たばこの煙による発がん実験の成績などから、たばこが発がんに関与していることはまず間違いないとされています。
今日では、人の発がんに関与する因子の3分の1はたばこで、3分の1は食べ物だといわれています。

DNAの複製の失敗ががん化のポイント

近年、活性酸素の及ぼす害について取りざたされています。
たばこの中に含まれる物質によっても、活性酸素が精製されます。そしてそれによりDNAが傷つけられるという説や、たばこの中のベンゾピレンなどの発がん物質が、体内で活性体に変わり、DNAに結合して発がん性を示すといった説も唱えられています。
いずれにせよ、たばこに含まれるある種の物質が、細胞分裂の際にDNAの複製を正しく行わせない作用をしているようです。
また、たばことがんというとすぐに連想されるように、肺がんの重要な因子であると指摘されてきました。しかし、喫煙者は肺がん以外にも口こう、こう頭、食道、胃、すい臓、腎臓、ぼうこうなどのがんにかかるリスクが、非喫煙者に比べて高いことも明らかにされてきています。