再生医療研究の応用として、琉球大学の再生医療研究チームでは、ヒト脂肪組織に由来する幹細胞の培養液を原料とした安全で高品質な化粧品を開発して発売しています。再生医療から生まれた化粧品にどのような特徴があるのでしょうか?
琉球大学の再生医療研究チームは、顔面陥凹性病変(がんめんかんおうせいびょうへん)に対する再生医療の臨床研究を実施しています。再生医療については、さまざまな細胞に分化する能力を持つ幹細胞を脂肪組織から抽出して、細胞培養により数十万倍に増殖させたのちに顔面に注入するというものです。
さらに、同チームでは、脂肪組織に由来する幹細胞の培養液を原料とした安全で高品質な化粧品を開発して発売しました(第17回日本再生医療学会総会学術集会の発表をもとに本記事を作成しました)。
幹細胞はさまざまな細胞に分化する能力を持つ特殊な細胞ですので、再生医療の研究に用いられて、さまざまな難治性の病気に対する効果が期待されています。
顔面陥凹性病変に対する再生医療の臨床研究では、脂肪組織に由来する幹細胞を細胞培養技術により増やしていきます。
幹細胞を培養した後に細胞成分を取り除き、残った液体部分を抽出したものを「培養上清」といいますが、培養上清に含まれている成分にはヒト脂肪組織に由来する幹細胞が分泌した多種類の成長因子や免疫を調整する因子などが豊富に含まれています(図)。
図:幹細胞が分泌する多様な成長因子
脂肪幹細胞 培養上清は多種類の成長因子を豊富に含む
提供:琉球大学医学部附属病院 野村紘史先生
これらの成分は人工的な化粧品原料と異なり、生体内で常に機能している物質です。成長因子という、人体が本来持つ仕組みを利用した化粧品原料は、エイジングケアなどを目的としたスキンケアに画期的な成分として、近年、たいへん注目を集めています。
また、ヒト脂肪組織に由来する幹細胞は実際の美容医療においても治療に用いられており、有効性と安全性が実証された幹細胞です。たくさんの種類がある幹細胞の中から、美容効果が証明されており、かつヒトの肌に機能することができるヒト由来の細胞の効果を、医薬品ではなく気軽に使用できる化粧品に応用することは多くの人々が切望していました。
幹細胞の培養上清中に含まれる上皮成長因子や線維芽細胞増殖因子などの生体内で機能している成長因子は美容やエイジングケアに非常に有用な成分です。そこで、琉球大学ではヒト脂肪組織に由来する幹細胞の培養上清から化粧品を製造するための研究開発を実施しました。
さらに、再生医療の研究に関わってきた琉球大学医学部附属病院の野村紘史先生が代表となり、琉球大学医学部発ベンチャー企業の株式会社GRANCELL(グランセル)を設立して、公式オンラインストアで2018年3月から、製品名COSME ACADEMIA(コスメ アカデミア)の販売を開始しました。
同社の製品の特徴は以下の通りです。
同社では、ヒト脂肪組織に由来する幹細胞の培養上清を原料とした安全で高品質なスキンケア製品を提供するために、化粧品に最適な幹細胞の適性の研究、高い品質を担保した培養法や製造・保存法開発、コスメ アカデミアの美容皮膚科学的検証などを課題に、琉球大学医学部で研究から製造までワンストップ体制で取り組んでいます。