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子供の命にかかわることも…風邪とよく似た「RSウイルス感染症」

乳幼児を持つお母さんは特に注意!風邪とよく似た症状がでるRSウイルス感染症は、重症化すると命に関わる恐れがあります。RSウイルスの基礎知識と予防法、対処法について解説します。

ただの風邪かと思いきや、肺炎などが引き起こされることも…

小さな子供が風邪をひくと、親としてはとても心配ですが、数日で治ると分かっている点で、少しは安心できるのではないでしょうか。ただし、それが風邪とよく似た病気「RSウイルス感染症」であれば、話は別です。
RSウイルス感染症は、RSウイルス(Respiratory Syncytial Virus:呼吸器合胞体ウイルス)の感染が原因で起きる、乳幼児に流行する感染症の一つです。通常は発熱や咳など、風邪と同じような軽い症状が出ますが、重症化したり、重い合併症が現れたりすると、命に関わる恐れがあります

流行のピークとなるのは冬ですが、7月頃からかかる子供が増え始め、8月の終わりから9月の初め頃の、秋を迎える時期に流行することもあります。RSウイルスは感染力が強く、1歳までに半数の子供が、そして2歳までにはほぼ全員が、一度は感染すると言われています。大人がかかることもありますが、ほとんどの場合は風邪と同様の、軽い症状しか出ません。

RSウイルスの主な症状

【軽い症状】

  • 熱が出る
  • 鼻水が出る
  • 咳が出る

【悪化した場合の症状】

  • 喘鳴(ぜんめい:ゼーゼーという呼吸音が聞こえる状態)がみられる
  • 呼吸困難になる
  • 呼吸が速くなる

【重い症状】

  • 細気管支炎
  • 肺炎   …など
  • ※突然死の恐れがある無呼吸発作や、意識障害やけいれんを起こす急性脳症などの、重い合併症が現れることもあります。

重症化しやすいのは、初めて感染する生後数週間から数ヵ月まで

重症化しやすいのは、初めて感染する生後数週間から数ヵ月まで

RSウイルスに初めて感染した子供の約7割は、鼻水などの軽い症状が出るだけですが、約3割は咳が悪化し、喘鳴(ぜんめい)や呼吸困難症状などが現れます。RSウイルス感染症は、何度も繰り返しかかることがある病気ですが、もっとも症状が重くなりやすいのは、初めてかかったときだと言われています。生後数週間から数ヵ月までの早期の乳児期は、細気管支炎や肺炎などの重い症状が引き起こされやすいので、早めに医師に診てもらいましょう。また、早産による低体重、心臓や肺の病気がある、神経や筋肉の病気がある、免疫機能が生まれつき正常に働かないというような子供も、重症化の危険性が高くなります。

RSウイルス感染症にかかった場合は、それぞれの症状を抑える薬による治療が行われます。実際はRSウイルスに感染していながら、風邪の治療だけを続けている場合は重症化の恐れがあるため、心配であればRSウイルスの検査をしてもらえるよう、医師に申し出ましょう。

ワクチンはないため、予防にはRSウイルスとの接触を避けることが大切

RSウイルスに対するワクチンはないので、予防するには、RSウイルスと子供を接触させないことが大切です。RSウイルスは、感染した子供の咳やくしゃみのしぶきを吸い込んだり、RSウイルスがついた手指や器具と接触したりすることで感染が広まります。そのため、感染した子供や、その子供が使った食器やおもちゃとの接触を避けることは、予防に有効です。ただし、まわりの子供や器具が感染しているか見た目では分からないため、日頃からアルコールや消毒液による身の回りのものの消毒、流水と石鹸による手洗い、赤ちゃん用マスクを付けられる1歳半以上であれば、マスクの着用などをこころがけることも大切です。
早産であることや、呼吸器や心臓の特定の病気があることなど、RSウイルスに感染した後の重症化リスクが高い場合は、パリビズマブという重症化を防ぐ薬の投与の対象となります。流行が始まる秋を迎える時期から、まだRSウイルスに感染していないうちに、月1回注射します。投与の対象となる条件など、詳しくは医師に問い合わせましょう。

RSウイルス感染症は、一般的には医師が書く「登園許可証明書」を幼稚園や保育園に提出する必要がない病気とされています。そのため、症状が治まったと判断されれば、幼稚園や保育園に通っても問題ないと考えられます。ただし、自治体および幼稚園・保育園によっては、保護者が記入した「登園届」の提出が求められることや、登園可能な回復状態の目安が設けられていることがあります。詳しくは、幼稚園や保育園に直接問い合わせてみましょう。

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公開日:2015/10/05