咽頭がんの初期症状や治療法、また上咽頭・中咽頭・下咽頭それぞれの生存率を紹介します。
目次
咽頭がんの初期症状は、のどの違和感や軽い痛みなどで、強い自覚症状が特にないことも少なくありません。がんが大きくなるにつれて、食事の通りにくさや息苦しさ、首のしこりなどが現れます。そのほかに、上咽頭がんの場合は耳がつまった感じや鼻づまり、鼻血、中咽頭がんの場合は片側の扁桃腺の腫れ、下咽頭がんの場合は声のかすれなどが初期症状として現れることがあります。
咽頭がんの病期(ステージ)は、がんの広がりとリンパ節転移の有無、別の臓器への転移の有無によって決まります。進行すると、上咽頭がんは中咽頭、鼻腔、頭蓋骨、副鼻腔、頭蓋内、下咽頭、眼窩(がんか:眼球が入っているくぼみ)へと広がっていきます。同様に、中咽頭がんは喉頭、あごの骨、頭蓋骨の方向、頸動脈のまわりへ、下咽頭がんは食道、背骨の方向、頸動脈のまわりへと広がります。
上咽頭・中咽頭・下咽頭それぞれの役割と、がんができた場合の主な症状、病期(ステージ)ごとの5年相対生存率(※後述)、治療法は以下のとおりです。
※5年相対生存率とは、治療によってどれくらい命が救われるかを示す指標です。年齢や性別が同じ日本人で、各がんではない人と比べて、各がんの人が、診断から5年後に生存している割合がどれくらい低いのかを表しています。100%に近いほど生存の可能性が高く、0%に近いほど生存の可能性が低いことを意味しています。
役割 | 呼吸する 耳の圧の調整 |
---|---|
がんの症状 | 鼻の症状(鼻づまり、鼻血、鼻水に血が混ざるなど) 耳の症状(耳がつまった感じ、聞こえにくいなど) 脳神経の症状(目が見えにくくなる、二重に見えるなど) 首のリンパ節の腫れなど |
出典:国立がん研究センターがん情報サービス 各種がんシリーズ『咽頭がん』
病期 | 症例数(件) | 5年相対生存率(%) |
---|---|---|
Ⅰ | 16 | 83.5 |
Ⅱ | 64 | 92.0 |
Ⅲ | 113 | 66.8 |
Ⅳ | 140 | 52.1 |
全症例 | 335 | 66.2 |
出典:全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2018年9月集計)
上咽頭がんの治療で中心となるのは、がんに放射線を当てる放射線治療と、化学療法(抗がん剤治療)です。
外科手術はリンパ節転移が疑われる場合を除いて、ほとんど実施されません。そのため、中咽頭がんや下咽頭がんの手術後に行われるような再建手術は、上咽頭がんの治療では行われません。
役割 | 呼吸する 正しく発音する のみ込む |
---|---|
がんの症状 | のみ込むときの違和感、のどにしみる感じ、のどの痛み・出血 息が鼻に抜けて言葉がわかりにくくなる 口を開けにくくなる 首のリンパ節の腫れなど |
出典:国立がん研究センターがん情報サービス 各種がんシリーズ『咽頭がん』
病期 | 症例数(件) | 5年相対生存率(%) |
---|---|---|
Ⅰ | 20 | 61.9 |
Ⅱ | 69 | 80.4 |
Ⅲ | 64 | 69.3 |
Ⅳ | 337 | 48.8 |
全症例 | 494 | 56.3 |
出典:全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2018年9月集計)
中咽頭がんの治療では、がんがまだ広がっていなければ、がんに放射線を当てる放射線治療と、化学療法(抗がん剤治療)が中心となります。がんがすでに広がっている場合は、手術が治療の中心となります。
手術では、がんとともにまわりの組織も切除するため、正しく発音する、食べ物を飲み込むといった機能が損なわれることがあります。これらの機能をできるだけ保てるように、切除した部分を、体の別の場所から切り取ってきた組織で埋める再建手術が行われることがあります。
役割 | のみ込む |
---|---|
がんの症状 | のみ込むときの異物感、のどにしみる感じ 耳の周りの痛み、声がれ 首のリンパ節の腫れやしこりなど |
出典:国立がん研究センターがん情報サービス 各種がんシリーズ『咽頭がん』
病期 | 症例数(件) | 5年相対生存率(%) |
---|---|---|
Ⅰ | 28 | 69.9 |
Ⅱ | 71 | 62.1 |
Ⅲ | 71 | 60.3 |
Ⅳ | 335 | 34.6 |
全症例 | 511 | 43.8 |
出典:全国がんセンター協議会の生存率共同調査(2018年9月集計)
下咽頭がんの治療は、中咽頭がんと同様に、がんがまだ広がっていなければ、がんに放射線を当てる放射線治療と、化学療法(抗がん剤治療)が中心となります。がんがすでに広がっている場合は、治療の中心となるのは手術です。
下咽頭がんの手術では、喉頭や下咽頭、食道の一部の切除、または全部摘出が行われることがあります。食道や咽頭を切除しても、体の別の場所から切り取ってきた組織で埋める再建手術を行えば、食事は多くの場合、治療前とほぼ同じようにできます。呼吸がしにくいときは、空気の通り道を確保する手術が行われます。
治療を終えてから少なくとも5年は、体調や再発の有無を内視鏡検査や触診で確認するために、通院する必要があります。再発が見つかりやすい治療後1~2年は、1~2ヵ月に1回の頻度が一般的です。それ以降の間隔は、治療の内容や体の状態によって異なります。
手術で切除した部位の再建だけではフォローしきれない機能がある場合は、退院後もリハビリが必要になります。食べ物が噛みにくい、首や肩の痛みで腕が上がらないといったときは、リハビリ科の医師や言語聴覚士、理学療法士などの指導の下で、リハビリが行われます。
下咽頭がんの手術で喉頭を全部摘出した場合
喉頭を全部摘出すると、治療前と同じように発声することはできません。ただし、食道発声法(喉頭の代わりに咽頭や食道粘膜を震わせて声を出す方法)や、電気式人工喉頭による発声法(小型マイクのような器械をあごの下の皮膚に当て、電気的に振動させて声を出す方法)をリハビリで習得することによって、まわりの人とコミュニケーションをとることは可能です。
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