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遺伝が原因となって発症する乳がん・卵巣がん

乳がんや卵巣がんのほとんどは細胞に起きる異常であり、子どもへと遺伝されることはありませんが、乳がんと卵巣がんの約1割は、遺伝子の異常によって発症すると考えられています。これらの「遺伝性乳がん・卵巣がん」の特徴を解説します。

乳がん・卵巣がんの約1割は遺伝性

女性のがんとして知られる乳がんや卵巣がんのほとんどは、乳腺や卵巣の限られた範囲内の細胞に起きる異常であり、子どもへと遺伝されることはありません。しかし、乳がんと卵巣がんの約1割は、BRCA1とBRCA2という親から受け継がれた遺伝子の、どちらかの異常によって発症すると考えられています。これは「遺伝性乳がん・卵巣がん」と呼ばれ、次のような特徴があります。

遺伝性乳がん・卵巣がんの特徴

  • (1)40歳未満の若い年齢において乳がんを発症する
  • (2)家系内に複数の乳がん、卵巣がん患者が認められる
  • (3)片方に乳がんを発症後、反対側の乳がんあるいは卵巣がんも発症する場合がある

出典:独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター

リスクを知ることができる遺伝カウンセリング・遺伝子検査

自分が遺伝性乳がん・卵巣がんである可能性を知る方法として、遺伝カウンセリングおよび遺伝子検査があります。遺伝カウンセリングでは、カウンセラーに家族の病歴などを伝え、それをもとにリスクや病気に関する情報の提供を受けることができます。相談の結果、リスクが高いと判断された場合、遺伝子検査を勧められることもあります。遺伝子検査は採血により行われ、前述のBRCA1とBRCA2という遺伝子に異常がないかを調べます。

なお、遺伝カウンセリングや遺伝子検査を行っている医療施設は限られているため、まずは近くに実施しているところがあるかを調べる必要があります。納得したうえで受けるためには、医療施設に問い合わせ、費用なども含めて情報を集めておきましょう。

今後も議論が必要となる、がん予防としての乳房・卵巣切除

今後も議論が必要となる、がん予防としての乳房・卵巣切除

遺伝子検査の結果、遺伝性乳がん・卵巣がんが疑われると、予防が勧められることがあります。医療施設を受診し、遺伝性乳がん・卵巣がんの予防を行う場合、その方法としてタモキシフェン(抗エストロゲン薬)の服用があります。ただし、乳がんや卵巣がんを発症していない人が予防としてタモキシフェンを服用する場合は、治療の場合とは異なり保険適用外であるため、全額が自己負担となります。

海外では、予防のために乳房や卵巣の切除が行われることがあります。日本でも、各医療施設内の倫理委員会の承認を経たうえで実施した例はあるものの、保険適用外のため全額自己負担であることに加え、異常のない乳房や卵巣を切除することに対する心理的な抵抗もあり、一般的に行われているとは言えません。国内ですでに実施している、あるいは実施を計画している医療施設を中心に実施のルール作りが進められていますが、倫理的な面も踏まえ、社会全体で議論が活発に行われる必要があります(2013年6月現在)。

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公開日:2013/06/17