ドクターヘリとは、別名・空飛ぶ救命室とも呼ばれ、医師や看護師が同乗して事故現場にかけつけ、即座に治療に当たる救急救命システムを備えもつヘリコプターです。事故や災害の現場において患者さんの救命や障害の軽減に大きな効果をもたらします。
みなさん、一度は耳にしたことがあるかもしれないドクターヘリ。別名・空飛ぶ救命室とも呼ばれるように、医師や看護師が同乗して事故現場にかけつけ、即座に治療に当たる救急救命システムを備えもつヘリコプターです。
半径50km圏内なら15分以内で現場に到着し、患者さんに対する「初期治療」までの時間を大幅に短縮でき、救命率を高めることができます。けわしい山道や離島から患者を救出する勇姿は頼もしいばかりです。
わが国では平成13年より厚生労働省の「ドクターヘリ導入促進事業」が開始され、現在、日本全国において十数ヵ所でドクターヘリが運行しています。その重要性が徐々に認められ、今後導入予定の地域も増加していくと期待されています。
それではドクターヘリが出動するのはどのような事態のときなのでしょうか?基本的には列車衝突事故、航空機墜落事故、船舶事故、爆発事故などの重大な事故をはじめ、自動車事故やオートバイ事故などであってもドクターヘリが必要と消防、警察、医療機関が判断した際に出動が要請されます。つまり、いくら目の前に大ケガをしている人が居たとしても、一般市民が呼べるのは救急車までで、ドクターへリを呼ぶことはできません。
ほかにも、救急車とは異なる点がいくつかあります。ドクターヘリは有視界飛行に限られた運行のため、出動時間は午前8時半~日没前までと定められているので、夜間に出動することはできません。また、悪天候の場合には、通常の出動時間内であっても飛べない場合があります。人命救助に大きな役割を果たすヘリコプターだけに、安全性が最大限に確保された上での出動となるわけです。
救急車に比べてふだん身近に見ることのないドクターヘリですが、事故や災害の現場においてどのような威力を発揮しているのでしょうか?平成16年度厚生労働科学研究によると、ドクターヘリは早期に医師による救命治療を可能とするため、患者さんの救命や障害の軽減に大きな効果をもたらすといいます。
参考までに、下記の表を見てみましょう。ドクターヘリで搬送された患者さんのうち、死亡は363名となっています。これがもし、ドクターヘリではなく救急車や船などで長時間かかって搬送されていたとすると、496名が死亡したと推定されるということを表したものです。
社会復帰 | 中等度 後遺症 |
重症 後遺症 |
植物状態 | 死亡 | 合計 | |
---|---|---|---|---|---|---|
ドクターヘリ | 872 | 246 | 89 | 22 | 363 | 1,592 |
陸水路推定 | 603 | 290 | 168 | 35 | 496 | 1,592 |
効果(%) | 44.6 | -15.2 | -47.0 | -37.1 | -26.8 | ― |
資料:益子邦洋ほか「平成16年度厚生労働科学研究」、平成17年3月
ドクターヘリの先駆国である米国の546ヵ所拠点(04年)、24時間体制という充実ぶりには遠く及びませんが、ひとりでも多くの命を救うために、わが国におけるさらなるドクターヘリ導入の拡大が望まれます。