歯並びが悪く、笑うときについ口元を手で隠してしまうという方、あなたを悩ませる歯並びは、放っておくと全身の健康に影響するかもしれません。歯並びは遺伝的な要因もありますが、多くは生活習慣によって大きく変化します。噛み合せが悪いまま生活を続けていると、全身にさまざまな悪影響が出てくるので注意が必要です。歯列矯正について詳しくご紹介します。
歯並びは遺伝的な要因もありますが、多くは生まれた後、子どもから大人にかけての生活習慣、クセによって大きく変化します。とくに成長期の骨格がつくられている時期に、不自然なクセをつけてしまうと、不正咬合を引き起こします。逆にこの時期に両方の歯でしっかり噛むことで、あごの大きさのアンバランスさを改善することも可能です。
幼児期 | 遺伝的要因 | 生まれつき歯の大きさ、形、あごが小さい、変形している |
---|---|---|
乳歯が抜ける時期 | 虫歯による抜歯、乳歯がいつまでも抜けない | |
幼児期のくせ | 指しゃぶり、唇をかむ、一方向に向いて寝る、頬づえをつく | |
あごの発達 | やわらかい食事によるあごの未発達 | |
成人 | 虫歯や歯周病などの治療 | 永久歯の抜歯後、そのまま放置している 詰め物やかぶせ物が合ってない 骨折、外傷によるあごの変形 親知らずによって歯が押し出された |
呼吸 | 口呼吸が多い | |
食事のくせ | 一方向ばかりを使って食べる |
人間の歯は、乳歯が20本、永久歯が32本です。生え変わりや成長の時期にきちんと噛む習慣がつかないままだと、あごが小さくなります。すると、成長した歯がおさまりきらず、歯並びが悪くなってしまいます。歯並びが悪ければ噛み合わせも当然悪くなり、歯のすみずみまで磨けないといった弊害も起こります。
上記のように、噛み合わせが悪いまま生活を続けていると、さまざまな悪影響が出てきます。さらにそれが積み重なると、高血圧や肥満などの生活習慣病、不眠、便秘など、全身に影響が及ぶこともあるので、注意が必要です。
日本では、歯並びが悪いからという理由で、仕事やその人自身の評価が下がるということはまずないでしょう。しかし、欧米は異なります。「歯並びが悪い=健康管理ができていない」とみなされ、評価が下がってしまうのです。また一昔前、日本では八重歯=かわいいというイメージがありましたが、それとは対照的に、欧米では古くから八重歯はドラキュラの歯といって嫌われているのだそうです。
矯正は長い時間がかかるため、その間の見た目も重視されるようになってきました。最近では、セラミックの装置が登場するなど、従来の歯列矯正装置のイメージの悪さを克服する工夫がなされています。
歯列矯正は、成長期のほうが短期間に行えるため、子どものころに行うのが理想的です。しかし、この時期の矯正は親の意思によるところが大きく、装置のすき間のブラッシングなど、細かいケアが求められるため、子どもにも負担がかかります。しかし、大人になってから行う矯正は、見た目の美しさや健康のため、噛み合わせをよくしたいという本人の希望によって行うため、根気よくケアを行うことができ、時間はかかっても、うまくいくケースが多いといわれています。
では、歯列矯正はいくつになってもできるのでしょうか――。答えは残念ながら△。 いくら強い意思があったとしても、歯周病が非常に悪化しているケースなど、歯や歯肉といった周辺の支持組織がすでに矯正に耐えられない状態では、行うことは困難です。また、閉経後の女性は、移動する歯根膜の牽引側の骨が新しくなりにくいため、難しいといわれています。また、子どもの歯列矯正に比べ、歯の移動スピードが遅いため、時間もかかるのがネックでしょう。
歯列矯正は、基本的に自由診療のため、病院によって費用は異なりますが、70~100万円程度(病院や歯の状態によって異なる)といわれています。
■健康保険が使えるケース
また、子どもの矯正の場合、申請すれば医療費控除を受けることができますが、大人の場合、美容整形のための歯列矯正(自費)は医療費控除の対象にはならないなどケースバイケースなので、事前に矯正を受ける病院で確認しましょう。
矯正歯科は、自分の歯を正しい位置に動かすことで、きれいな口元にすることを目指したものです。一方の審美歯科は、歯の色や詰め物の色をホワイトニングするなどして、見栄えをよくするのが基本で、一部の歯を削るなどして歯並びを修正する治療も行っています。大きくわけると、口元全体のバランスを美しくするのが矯正歯科で、ひとつひとつの歯をきれいにすることで、口元全体を美しく見せるのが審美歯科と言えるでしょう。