フルーツといえば、ひと昔前はみかんやりんごだった。今では栽培技術の向上や輸入品目の増加により、いろんな種類にお目にかかれる。なかでも注目株はベリー類。宝石のような見た目と予想以上の健康効果に、多くの期待が寄せられている。今回は、なかでもクランベリーにスポットをあて、その実力を紹介する。
ところ変われば食べるフルーツも変わるもの。クランベリーは、ブルーベリー、コンコードグレープと並んで、北米原産「3大フルーツ」と呼ばれているという。私たち日本人にはピンと来ないが、海の向こうの大陸では、大昔から食されてきたフルーツだ。
しかもクランベリーは食べるだけでなく、ネイティブアメリカンが傷の治療薬として利用したり、船乗りが壊血病予防のためビタミンCの豊富なクランベリーを航海に持っていったというから、その実力のほどがわかる。見た目はまるで赤い宝石のよう。今日まで長く愛され続けてきたのもうなずける。
北米大陸の最初の入植者であったピューリタン(イギリス清教徒)たちは、その大地に春に咲く花が、鶴(crane)の頭とくちばしに似ていることから、“Cran-Berry”と名付けた。それが後世に伝わって“Cranberry”となり、今に至っている。
古くから民間医療で使用されてきたクランベリーだが、現代医学の分野でもあらたな効果が発見されている。歯肉炎や心臓病などの予防効果について研究されているほか、尿路感染症の予防についてはある程度の結果が得られているという。
尿路感染症というと細菌が尿路に入って増えた状態のこと。そのひとつの膀胱炎というと知っている人も多いだろう。過去に行われたいくつかの臨床試験結果をみると、クランベリージュースを継続して飲むことで感染率が低下した、などのデータもある。これは、クランベリーに含まれるプロアントシアニジンという成分が尿路感染菌(大腸菌など)の付着を防いだり、キナ酸という成分が尿を酸性化させて菌の増殖を抑制するためと考えられている。
日本では、クランベリーは「つるこけもも」という和名で呼ばれている。「心痛のなぐさめ」という花言葉も持っているようだ。しかし北米などに比べると、まだまだ私たちの生活には馴染みが薄い。アメリカの食卓をのぞいてみよう。
そのほか、ジュース、クランベリー酒など、いろんな形に加工して使用されている。
日本ではクランベリーそのものを食べるというより、その健康効果が注目されてサプリメントとして輸入されるケースが多いようだ。アメリカほどポピュラーなフルーツとはいえないものの、その見た目、風味、バラエティに富んだ使い方、そしてすぐれた健康効果と、ブレークする日もそう遠くはないだろう。