疾患・特集

風邪と間違いやすい病気

咳や頭痛、ちょっとした発熱。ただの風邪かと思っていたら、じつはほかの病気だった――ノロウイルスや急性気管支炎、肺炎、溶連菌感染症など、風邪にそっくりな病気を紹介します。

くしゃみ連発に鼻づまり
アレルギー性鼻炎

ダニ、家の中のほこり、またはスギ、ヒノキ、カモガヤ、ブタクサなどの花粉によって起こります。くしゃみや水っぽい鼻水、鼻づまりが特徴で、花粉が原因の場合は、のどのかゆみ、発熱も見られます。春先に多いため、初めて発症した人は風邪と思い込みやすいようです。

風邪と違うのはココ!

目のかゆみや充血、涙があれば、まずアレルギー性鼻炎を疑いましょう。このほか、皮膚のかゆみ、下痢などが起こることもあります。発熱はありません。

激しい咳、たんで息苦しくなる
急性気管支炎

鼻やのどの炎症が、気管支にまで達し、咳やたんが出るようになった風邪を急性気管支炎と呼びます。多くはウイルスが原因です。鼻水、のどの痛みのほか、悪寒やふしぶしの痛み、微熱、咳などの症状が現れます。たばこを吸う人、ダイエット中の人、子供や高齢者は発症しやすいので注意しましょう。

風邪と違うのはココ!

最初はコンコンと乾いた咳が出ますが、やがて少量の白いたんが、さらには緑や黄色のたんがからむようになります。気道が狭くなり、咳の後、苦しげなゼイゼイという音や、ヒューヒューという音がし始めます。重症化すると3~5日間くらい高熱が続きます。

風邪の症状から突然高熱、チアノーゼ
肺炎

細菌やウイルスに感染して、肺に炎症を起こすことで起こる病気です。原因は、肺炎球菌がもっとも多く、次いでインフルエンザ菌、肺炎マイコプラズマなどがあります。子供やお年寄りでは、入院治療を要するほど重症化する場合もあるので十分に注意しましょう。日本人の死因としては第3位※を占めており、侮れません。咳、たん、悪寒、発熱などの症状は風邪にそっくりです。※出典:平成28年(2016)人口動態統計

風邪と違うのはココ!

胸の痛み、高熱がしばらく続き、さらに呼吸が浅く速くなって次第に息苦しさを感じるようになります。重症化すると唇や爪が紫色に変色するチアノーゼが起こることもあります。ただし、お年寄りの場合は、さほどはっきりした変化がないこともあります。「食欲不振」「なんとなく元気がない」といった些細な症状から、いきなり悪化するケースもあるようです。

いきなりの高熱とのどの痛み
溶連菌感染症

原因はA群β溶血性連鎖球菌という細菌です。小さな子供がかかりやすい病気です。発熱、のどの炎症や痛み、頭痛、ふしぶしの痛みなどは風邪とまったく同じです。

風邪と違うのはココ!

いきなり39度前後という高熱が出るのが風邪と違うところです。のどの痛みがひどくなり、首のリンパ節がはれ、中耳炎が起こる場合もあります。決定的な違いは、やがて出現する赤くて細かい発疹です。全身に広がり、かゆみを伴います。舌の変化にも注目しましょう。最初は白い苔のようなものが広がりますが、やがていちご状に赤くブツブツが現れます。

38度以上の発熱に筋肉痛
インフルエンザ

インフルエンザウイルスが原因の感染症で、重症化することもある油断できない病気です。とくに気をつけたいのはお年寄りや、慢性の呼吸器疾患や心臓病の人。さらに子供の場合は中耳炎や熱性けいれん、ときには急性脳症を起こします。

風邪と違うのはココ!

突然、38度以上の発熱が起こります。加えて頭痛、関節痛、筋肉痛、全身の倦怠感があったら、インフルエンザの可能性がありますので、速やかに病院を受診するようにしましょう。

39度以上の発熱に全身の赤い発疹
麻疹(はしか)

麻疹は、麻疹ウイルスに感染して引き起こされる感染症です。発熱、咳、鼻水や発疹などの症状が現れます。7~10日で治まりますが、妊婦の場合は流産や早産が起きることもあります。
感染力が強く、免疫をもたない人が感染すると、ほぼ100%発症すると言われています。麻疹が疑われる症状が現れた際は、受診前に医療機関に連絡して、麻疹の可能性があることを伝えましょう。もし麻疹だった場合、受診に来ていた人たちに感染してしまう恐れがあるからです。医療機関からの指示に従い、受診するようにしましょう。

風邪と違うのはココ!

発熱、咳、鼻水、のどの痛み、目の充血などの風邪に似た症状が現れ、口の中に1mmほどの小さな発疹ができます。熱は2~3日続いた後にいったん下がるものの、再び上がり39度以上の高熱となり、それと同時に全身に赤い発疹が現れます。

発熱、咳、息切れ
MERS(中東呼吸器症候群)

MERSコロナウイルスに感染して発症し、発熱、咳、息切れのほか、下痢などの消化器症状が引き起こされます。感染しても、必ずしも症状が現れるとは限らず、症状が出たとしても軽症の場合もあります。ただし、高齢者や糖尿病、慢性肺疾患、免疫不全などの基礎疾患(持病)がある人は重症化しやすい傾向があります。
なお、流行地域※からの帰国後にMERSが疑われる症状が現れた際は、潜伏期間である14日がまだ経っていない場合、医療機関を受診してはいけません。感染を広げないためにも、必ず最寄りの保健所に電話で連絡をして、指示を仰ぐようにしましょう。

風邪と違うのはココ!

主に中東地域で報告されている感染症です。流行国※への渡航歴のある人、その人と接触した場合に注意が必要です。
中東呼吸器症候群(MERS)に関するQ&A(厚生労働省)

咳・たん・微熱が2週間以上
肺結核

かつては「国民病」と恐れられた病気でした。 いまだに1日に50人以上の新しい患者が発生しています。初期症状ははっきりしておらず、「咳やたんが続く」「なんとなく体調が悪い」「倦怠感がある」といった程度です。まさに風邪の初期症状とそっくりです。

風邪と違うのはココ!

ポイントは「2週間以上続く咳やたん」。食欲不振、体重減少、微熱が長期間にわたって続く、就寝中に大量の汗をかく、といった症状も見られます。咳をすると黄色や緑色のたんが出るようになり、やがて血が混じります。息切れや胸痛なども起こります。

発熱、関節痛、手足のしびれ
膠原病

厚生労働省の特定疾患に指定されている、全身の血管や皮膚、筋肉、関節に炎症が起こる病気です。原因不明ですが、最近の研究では遺伝やウイルス、紫外線などの影響が指摘されるようになりました。発熱や関節の痛みなどは風邪の症状と似ており、初期に混同されやすいようです。

風邪と違うのはココ!

日光があたると皮膚に赤い斑点ができます。特徴的なのは両頬に出現する、蝶が羽を広げた形のあざ。脱毛、口内炎も見られます。手足の先が冷えると白くなり、しびれる「レイノー現象」もあります。このほか、目や口の乾燥、握力低下、爪の変形などです。

たんに血が混じる
肺がん

たばこや化学物質が原因で起こる、恐ろしい病気です。隣接する臓器や、遠くの臓器までもが浸潤を起こし、最終的には死に至ることになります。初期症状は咳。どうせ風邪だろうとタカをくくったために、取り返しのつかない結果を招くこともあるようです。

風邪と違うのはココ!

症状が進むと咳やたんが激しさを増します。しまいにはたんに血が混ざります。胸や肩の痛み、上腕部の内側に痛みがある場合は肺がんを疑いましょう。さらに瞳孔の縮小がある場合も要注意です。汗かきだった人が急に顔から汗が出なくなった場合も危ないようです。

ノロウイルスと風邪の違いは?

ノロウイルスと風邪の違いは、激しい吐き気や嘔吐

一年を通して発生しますが、特に冬季に流行しやすい傾向があります。抵抗力の強い大人などは軽症で回復しますが、幼児や高齢者などが「お腹に来る風邪」などと放置すると症状が悪化するケースがあります。軽度の場合は、発熱など軽い風邪のような症状にとどまるのでなおさら厄介です。風邪と違うのは、激しい吐き気や嘔吐、腹痛、水様の下痢です。

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公開日:2007/01/29更新日:2018/05/14