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眠くなる病気「ナルコレプシー」

もしあなたが会社で商談中、突然相手が眠ってしまったらどう思うでしょうか?「緊張感が足りない」「失礼だ」など、その相手に対する印象はいっきに悪くなることでしょう。その原因が病気と聞いて適切な対応ができるでしょうか?今回は、昼間に眠くなる病気「過眠症」のなかでも代表的な「ナルコレプシー」を中心に、その実態と対策について解説します。

3日間徹夜したような、強い眠気

寝る時間が遅いなど、生活リズムの乱れから昼間に眠気を感じる人は多くいます。どんなに眠くても「今眠ってはダメ」という状況下でこらえることができれば、それは正常な眠気です。

一方、睡眠のリズムに乱れがあるために、時と場合にかかわらず突然眠りに落ちる症状、それがナルコレプシーです。眠気の程度はとても強く、「丸3日間徹夜で過ごした後のような眠気」とも表現されます。また不意に驚いたとき、「やったー!」と喜んだときなど、強い喜怒哀楽をきっかけに手足の力がカクンと抜けるというのもナルコレプシーの特徴です。

はっきりした原因は不明ですが、遺伝的体質と、ストレスなどの環境因子がくわわって発症するとされています。

ナルコレプシー患者が眠りに落ちるシーン

  • 移動中
  • 人との会話中、電話中
  • 会議の途中、試験の途中
  • 歯の治療中
  • 食事中

進学や就職に悪影響も

ナルコレプシーがつらいのは、周囲から誤解を受ける点です。本人の意識とは無関係に大事な会議や人との会話中で眠ってしまうため、周囲に悪い印象を与えかねません。目が覚めているときは実力を発揮できても断続的に眠気に襲われるため、集中力に欠ける、記憶が断片的になる、事故や作業ミスを起こしやすくなるなど、進学や就職にも悪影響をおよぼします。
また喜怒哀楽をきっかけに全身の力が抜けたりするのも、人と会うのを躊躇させ、精神的につらい状況に追い込まれてしまいます。
ナルコレプシーの患者に必要なのはまず、家族や友人、周囲の人間が病気について知り、患者本人がどんなにつらい状況にあるかを理解してくれることだといえるでしょう。

ナルコレプシーの診断フローチャート

ナルコレプシーの診断フローチャート
内山真、編.睡眠障害の対応と治療ガイドライン.じほう;2002

薬を用いて、昼夜にメリハリを

ナルコレプシーは根本的な原因が不明なため、根治させる方法はまだわかっていません。
眠れないという症状からはじめに内科を受診する人が多いのですが、ナルコレプシーは睡眠をコントロールする脳の機能に異常を来たす病気です。神経科や精神科を受診するとよいでしょう。睡眠障害を専門に扱う医療機関であれば、なお安心です。夜は軽い睡眠導入剤などぐっすり眠るための薬、昼は精神活動を活発にさせる薬を使い、昼夜にメリハリをつけるようにしていきます。
病態に応じた適切な治療を行えば、確実に症状は改善できます。単に眠くなる病気と軽視せず、専門家のもとで治療を受けてみましょう。

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公開日:2006年8月14日