疾患・特集

ストレスと胃の深~い関係

「納期までに間に合わなかったらどうしよう…」「上司に嫌われているのではないだろうか…」。仕事や人間関係で悩むと、きまって胃がキリキリ痛んだり、もたれたり、といった経験はないだろうか。胃は顔の次に感情が出やすい部分。緊張や不安、恐怖、イライラなどが胃の機能を阻害し、しまいには胃潰瘍など深刻な病気を招くこともある!

ストレスと胃の深い関係

胃の調子がおかしい

なんだか胃の調子がおかしい――そう思って消化器内科を受診し、内視鏡検査をしたところ、診断結果は「粘膜などは異常なし」。こんな症状を、「 NUD : Non-Ulcer Dyspepsia 」と呼ぶ。「潰瘍のない消化不良症」という意味だ。
ストレスがたまると、胃のぜん動運動が弱まったり、胃液や粘液の分泌量に異変があらわれたりすることがある。その結果、潰瘍もないのに胃もたれ、膨満感、むかつき、胸焼けといった症状があらわれるのだ。

そもそも胃は、自律神経の影響を大きく受けている。自律神経とは、内臓、血管、ホルモン、神経、免疫力などのはたらきをコントロールし、 体内の環境を整える神経。緊張するとはたらく交感神経と、リラックス時にはたらく副交感神経に分かれている。ちょうど、「オン」と「オフ」のスイッチのようなものだ。二つは交互にはたらき、バランスを保っている。

ところが、ストレス状態が続くと交感神経もしくは副交感神経のどちらか一方だけが過剰にはたらいている状態になるため、ついにはスイッチが壊れてしまう。その結果、胃にも深刻なダメージが与えられるのだ。ダメージのパターンには、おもに次の2つがある。

ダメージ1…胃もたれ型

ストレスにより、自律神経が必要以上に刺激されると、交感神経の機能が活発に動く。すると、血圧や心拍数が上昇。血行が促進される一方で、皮膚や内臓器官への血管が収縮する。その結果、胃のぜん動運動が鈍くなり、胃液の分泌も減少してしまう。さらに、胃壁の粘膜に血液が行き渡らず、粘膜そのものが弱くなる。
おかげで、食べたものを消化できないばかりか、胃壁も荒れ放題。胃もたれ、膨満感といった症状が出るようになる
精神的なストレス→自律神経の交感神経が刺激を受ける→胃の粘膜に血液がいきわたらなくなる →血行が促進される一方で、皮膚や内臓器官への血管が収縮→胃のぜん動運動が鈍くなり、胃液の分泌が減少→胃壁の粘膜に血液が行き渡らず、弱くなる→胃もたれ、膨満感などの症状があらわれる。

ダメージ2…胸焼け型

副交感神経が刺激を受けると、胃酸の分泌が増加する。なにしろ胃酸のパワーは強力そのもの。分厚い肉片も溶かしてしまうほどだ。胃酸が出すぎた揚げ句、胃壁が荒らされ、胃の中の細い血管が傷つけられてしまう。その結果、胸焼けや胃痛に悩まされるようになる
精神的なストレス→自律神経の副交感神経が刺激を受ける→胃酸の分泌を高めてしまう→胃壁を荒らす→胸焼け、胃痛などの症状があらわれる。
悪化すると粘膜がただれ、胃潰瘍や十二指腸潰瘍といった深刻な病気に発展してしまう。

潰瘍性格ってどんな性格?

几帳面で頑固、勤勉な人は人一倍ストレスをためやすいもの。こうした性格を「潰瘍性格」という。次のような特徴に心当たりのある人は要注意だ。

無口ではにかみや・早合点の傾向がある・すぐ不機嫌になる・深く物事を考え込む
小さいことを気に病む・何かにつけて自信がない

「胃の調子が悪いな」と思ったら

お酒は基本的にNG

●市販の胃薬には注意を

「胃もたれ型」と「胸焼け型」の薬では、効能・効果がまったく違う。間違えて飲むと、かえって症状が悪化することもある。薬を購入するときは、自己判断せず、薬剤師さんに相談を。また、症状が続くようなら専門医を受診しよう。

●お酒は基本的にNG

強いお酒は胃壁を荒らす。とくに空腹時にいきなり飲むと、ダメージは大きい。アルコール度数の低いお酒も、大量に飲むのはNGだ。とはいえ禁酒がストレスになるようなら、適量を守ってほどほどに飲むのはよい。ただし、これは症状がごく軽い人の場合のみ。

●コーヒーは薄めに

カフェインは胃酸の分泌を促進する。したがって濃いコーヒーをがぶ飲みするのはご法度。胃の調子が悪いときは、薄めのもの、ミルクをたっぷり入れたものを飲もう。

●たばこはダメ!

空腹時と就寝時はとくに胃を荒らす。喫煙者の消化性潰瘍にかかる率は、なんと吸わない人の約 2 倍とか。「ちょっと胃がおかしいな」と思ったら、まずは禁煙すべし!

●ストレス解消法を持とう

ストレスをためこんでいる限り、胃のもたれや痛みは根治しない。趣味や気分転換でストレス発散を。ゆっくり入浴したり、音楽を聴いたりと、自分なりのストレス発散法を持とう。

公開日:2006年4月3日