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妊婦と魚の危険な関係~その真実を検証!

妊娠した女性はお薬をはじめ、アルコールやたばこなどの嗜好品、そして食生活全般に注意が必要だ。胎児に悪い影響を及ぼす食品については、とくに敏感に配慮しなければならない。2005年、厚生労働省より「妊婦は魚に注意」という呼びかけがあったのをご記憶だろうか?マグロなどおなじみの魚に有毒な水銀が含まれており、胎児に悪影響を及ぼすというものだ。
ショッキングな内容だけに専門家から消費者まであらゆる層で議論を呼んだ。
いまあらためて、妊婦とお魚の真実について検証してみよう。

水銀はぜったい悪者?

水銀は私たちの住む地球上に、もともと存在するもの。雨といっしょに降りそそいだ水銀は山や地面、海などに蓄積し、植物や海水、火山などから蒸発しまた雨になるという循環をくりかえしている。水銀には人体に無害なものと、悪影響を及ぼすものがあり、後者を「メチル水銀」という。

自然界に存在する無毒な水銀も、川や海で微生物と接触するとメチル水銀に変化し、食物連鎖にしたがって魚の体内に蓄積されていく。
大人であればメチル水銀をたくさん含む魚を食べても、体外に排出できるため問題ない。
ところが胎児の場合はその機能がなく、体に悪影響を及ぼすのだという。実際に海外の調査で、メチル水銀に暴露された胎児は神経発達に影響があると指摘する報告がある。音を聞いたときの反応が1000分の1レベルで遅れるというもので、いのちに関わるような問題ではない。

とはいえ、生まれてくる赤ちゃんの健康には最大限配慮してあげたいもの。すでに妊娠している人、これから妊娠を考えている人はふだんの食生活で気にかけるとよいだろう。

望ましい摂食回数 対象
週に1回まで キンメダイ、めかじき、クロまぐろ、メバチまぐろ
週に2回まで キダイ、くろむつ、まかじき、ユメかさご、ミナミまぐろ

※一回あたり食べる量を 80g程度として

妊娠中だけ注意、あとはむしろどんどん食べよう

「妊娠していると気づかずに、マグロをたくさん食べてしまった!」という人も安心して。
上記の魚に注意が必要なのは、「妊娠したかな?」という時点で十分だからだ。
妊娠に気づくのは一般的に妊娠2ヵ月以降だが、胎盤がととのい、胎児に栄養をはこぶために大量の血液が流れるようになるのは妊娠4ヵ月以降。妊娠に気づいた時点で、上記の魚介類に注意すれば十分間に合うという。
摂取した水銀は尿や便から排出され70日で半分に減るため、水銀値の高い魚を食べないようにすれば体内で次第に減っていくので安心しよう。

「胎児がだめなら、小さい子供は?」と思う人がいるかもしれないが、こちらも心配ない。小さいお子さんであっても、大人と同じようにメチル水銀が体外へ排出されるという見解が食品安全委員会(厚生労働省)から出されている。
そもそも魚類は良質なたんぱく質や、DHA(ドコサヘキサエン酸)・EPA(エイコサペンタエン酸)などの不飽和脂肪酸、タウリン、アスタキサンチンを多く含む、優れた健康食材。妊娠中は注意が必要だが、一般的に、バランスのよい食生活を送る上では欠かせない食材だ。無事赤ちゃんが生まれたら、積極的に食卓にあげるようにしよう。
下記に、さらにくわしい情報をQ&A形式で紹介するので、ぜひとも参考にされたい。

妊婦さんのお魚の食べ方 Q&A

Q. 上記の表にある「1回あたり食べる量を80gとして」の根拠は?

A. お刺身が一人前あたり80g、魚の切り身は一切れあたり80g程度ということから設定された。お寿司、刺身の一貫または一切れは15g程度という。

Q. どんなマグロもすべて危険?

A. マグロの中でもキハダまぐろ、ビンナガまぐろ、メジまぐろについては調査での水銀含有量が低いことから、妊婦であっても普通どおり食べて問題ない。

Q. マグロからつくられているツナ缶は?

A. 加工食品は一般に、いろいろな食材からつくられている。ツナ缶に含まれている水銀濃度は低いのでだいじょうぶ。

Q. 授乳中も水銀値の高い魚を食べない方がいい?

A. 母乳を介して乳児が摂取する水銀量は低い。このため授乳中のお母さんは、今回の注意対象には入っていない。

公開日:2006年3月6日