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喫煙者はますます肩身が狭い!?たばこ最新事情

2005年2月27日「たばこ規制枠組み条約」が発効した。たばこ消費量が世界3位の日本でも、社会的に喫煙者へ風当たりが強くなってきている。本人だけでなく周囲の人や子どもへの影響も深刻なたばこ。たばこ規制の実態をみてみよう。

たばこ規制枠組み条約が発効

5月31日は世界禁煙デー。公共の場で禁煙・分煙を進めたり、嫌煙者に有利な生命保険が登場するなど、社会的に喫煙者へ風当たりが強くなってきている。この機会に、いまいったいどこまでたばこ規制が進んでいるかをチェックしてみよう。

最近のニュースとして大きいのが、今年の2月27日、世界保健機関(WHO)が主導する「たばこ規制枠組み条約」が発効したことだ。この条約は、たばこの消費を減らして喫煙による健康被害を減らすことが目的。締約国は、5年以内に広告を全面禁止し、健康警告表示の拡大などをしなければならないなどの内容が盛り込まれている。日本はもちろん、世界167カ国とEU(欧州連合)が署名。うち、日本を含む57ヵ国が批准した。ちなみに日本はたばこ消費量が世界3位。首位の中国、2位のアメリカはまだ署名のみで批准していない。

禁煙が進む国はどこ?

葉巻で有名なキューバ、諸外国からも絶対に禁煙にできないと思われていたアイルランドのパブなど、喫煙者にとって居心地がよいとされていた国・場所でも禁煙が決まり、世界に波紋を広げている。

  • ●ブータン:完全禁煙
  • ●キューバ:公共の場を禁煙、たばこ自動販売機を撤去
  • ●アイルランド:パブを含む全職場内を禁煙に
  • ●ノルウェー、ニュージーランド:職場、レストラン、パブのほとんどを禁煙に

どこまで進んだ?たばこの規制

たばこ規制枠組み条約により、日本ではどこまでたばこ規制が進んだか、最近の新聞記事などから拾ってみよう。

●2005年1月18日 日本経済新聞「受動喫煙対策、全国の公共施設を総点検・厚労省など」

厚生労働省が中心となり、2005年度から公共施設などで、禁煙・分煙がどこまで進んでいるか、受動喫煙対策の実態調査を始める。調査対象は学校、病院、劇場、百貨店、事務所、飲食店、ホテル、鉄道駅、娯楽施設、タクシー車内など。

●2005年2月28日 朝日新聞「未成年の喫煙対策強化」

成人の喫煙率が長期的にみると低下する一方で、増えているのが未成年者の喫煙。2000年時点での高校3年生の喫煙率は、男子36・9%、女子15・8%もいる。政府は、未成年者らの禁煙支援や、中高生向けの健康問題の教材配布などを行う。警視庁は補導を強化する。その他、電車・バス・屋外へのたばこ広告が禁止されるといった、規制強化一般の動きも紹介。JT(日本たばこ産業)は、F1のスポンサーからも2006年秋で撤退の予定。

●2005年4月2日 朝日新聞「禁煙ビーチ増えるかな」

家族客の多い熱海市サンビーチ、鳴き砂で知られる京都府京丹後市の琴引浜と石川県門前町の琴ヶ浜、兵庫県豊岡市の竹野浜海水浴場が、浜辺を禁煙にしている。鳴き砂の浜については、不純物が入ると音がしなくなるとのことで、環境保護の意味もあり花火も含めて火の使用を禁止した。海外でも禁煙ビーチは広がっているらしい。

●2005年4月7日 読売新聞「持ってないと買えません、たばこカード2008年導入」

日本たばこ協会は、協会が成人を対象に発行するICカードがないと、自動販売機でたばこを買えない制度を導入することを発表。実施は2008年4月1日からの予定で、全国のたばこ自動販売機すべてが対象となる。

●2005年5月8日 読売新聞「喫煙所どーする?路上禁煙の自治体」

千葉県柏市、我孫子市では、路上禁煙を禁止したが、駅周辺では喫煙所を整備した。分煙ルールを掲げて喫煙所を整備した東京都渋谷区では、吸殻のポイ捨ては大幅に減ったものの、渋谷駅ハチ公口の喫煙所周辺では、喫煙エリア内の倍以上の喫煙者が路上に広がる。東京都千代田区を先駆けに、首都圏を中心に各地の自治体で路上禁煙を条例化しているが、完全分煙・禁煙を実現するのが難しい実態をレポートする。

深刻な子どもへの影響

たばこの健康被害

受動喫煙が問題とされるのは、もちろん、たばこの健康被害が本人だけでなく、そばにいる人たちへの影響が大きいことからきている。例えば肺がんリスクは、配偶者が喫煙する場合では、女性なら20%、男性で30%程度増加する。職場で喫煙する人がいる場合は、12~19%程度増加すると推定されている。

さらに深刻なのが、胎児や乳幼児への影響だ。妊娠中の喫煙は、赤ちゃんの体重が減少したり、子どもの認識力や行動面での発達、知能指数の低下など、さまざまな悪影響をもたらしてしまう。そして、赤ちゃんに影響を与えるのは、母親だけではない。

肺がんリスク

2005年3月12日の湘南新聞によると、神奈川県では、未熟児の出生率がこの10年で急激に増えている。その原因のひとつとして、妊娠中の妊婦の喫煙または夫・パートナーからの受動喫煙が挙げられている。1日に20本以上喫煙する妊婦は、喫煙しない妊婦に比べて自然流産の発生率が約2倍も高くなるといわれている。

妊娠中の女性とその家族はもちろん、喫煙者はどこで受動喫煙の被害をもたらしているかわからない。やはり喫煙するなら、場所を考えたほうがよいだろう。そして、肩身が狭い思いをするなら、いっそ本気でたばこを止めてはいかがだろうか。例えば、肺がんリスクは、禁煙後10年で喫煙継続者に比べて1/3から1/2にまで減少する。その他のがんもリスクが減少するものが多い。やめることで発生リスクが減る病気も確実にある。いまからでも禁煙に挑戦しても遅くはないのでは。

公開日:2005年5月30日