天然痘、結核…。かつて人々を脅かした多くの伝染病が、ワクチンの開発により、あたかも地上から姿を消したかのように思われている。しかし近年になって、忘れ去られていた感染症がとつぜん、流行し始めてもいる。予防接種は大切な「転ばぬ先の杖」。感染を広げないためにも、なるべくなら受けておこう。
生きたままの病原菌を、毒性を弱めてつくったワクチン。接種することでその病気にかかったときと同じ状態にし、免疫を作り出す。ただし、きちんと免疫ができるまでは時間がかかるので注意が必要。また、接種後は発熱、発疹などが起きやすい。 …BCG、ポリオ、麻疹(はしか)、風疹(ふうしん)など
ウィルスや細菌をいったん殺し、必要な成分だけを抽出してつくったワクチン。病原菌は体内で増殖しないので、何度か接種することで、細胞に抗原を記憶させ免疫をつくる。 …日本脳炎、DPT・DT(3種混合・2種混合)など
もちろん、予防接種を受けることは義務ではない。厚生労働省は、ぜひ受けるように努力してほしい予防接種「勧奨接種」として以下の7つを挙げている。ちなみに対象者なら無料だ。そのほか、できれば受けておきたい任意の予防接種もある。
接種回数 | 標準的な接種年齢 | 対象年齢 | |
---|---|---|---|
BCG | 1回 | 3~4ヵ月 | 4歳未満のツベルクリン反応陰性者 |
ポリオ | 2回 | 3ヵ月~1歳6ヵ月 | 3ヵ月~7歳6ヵ月 |
DPT 3種混合 (DT 2種混合) |
1期初回 | 3回 | 3ヵ月~7歳6ヵ月 |
1期追加 1回 | 1期終了後1年~1年6ヵ月後 | 3ヵ月~7歳6ヵ月 | |
2期(DT)1回 | 小学校6年 | 11~12歳 | |
麻疹(はしか) | 1回 | 1~2歳未満 | 1~7歳6ヵ月 |
風疹(ふうしん) | 1回 | 1~3歳未満 | 1~7歳6ヵ月 |
日本脳炎 | 1期初回 2回 | 3歳 | 6ヵ月~7歳6ヵ月 |
1期追加 1回 | 4歳 | 6ヵ月~7歳6ヵ月 | |
2期 1回 | 小学校4年 | 9~13歳 | |
3期 1回 | 中学校2年 | 14~15歳 | |
インフルエンザ※ | 1回 毎年接種が必要 | 65歳以上、60~65歳の一部 |
※65歳以上、60~65歳未満の人の一部には、「2類勧奨接種」とされている
接種回数 | 対象年齢 | |
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おたふくかぜ | 1回 | 1歳~ |
水痘 | 1回 | 1歳~ |
インフルエンザ | 13歳未満2回 13歳以上1回 毎年接種が必要 | 指定なし(通常6ヵ月~) |
A型肝炎 | 3回 | 16歳~ |
B型肝炎(母子感染予防) | 3回 | 0歳~ |
B型肝炎(一般) | 3回 |
インフルエンザは重症化すると気管支炎、細菌性肺炎などを引き起こしかねない怖い病気。ワクチンは、その年の冬、流行する可能性のあるA型インフルエンザウイルス2種と、B型インフルエンザウイルス1種を混合したものが、毎年あらたに製造される。流行株とワクチン株が一致すれば、予防効果は期待できる。2001年の予防接種法改正以来、高齢者への接種が一部公費負担で実施されるようになった。
これから妊娠・出産をひかえる女性におすすめなのが風疹(ふうしん)、麻疹(はしか)ワクチン接種。ことに大人の麻疹は最近、日本各地でみられるようになり、油断はできない。また、1979年4月2日~1987年10月1日生まれで、風疹にかかったことがない女性も、ぜひ予防接種を受けておこう。ただし、接種後3ヵ月間は避妊が必要。詳しくは専門医に。
このほか海外旅行に行くときにも、ぜひ予防接種を受けておこう。感染症が流行している地域を訪れる場合はなおさら。破傷風、A型肝炎、日本脳炎、ポリオ、ジフテリア、麻疹(はしか)、狂犬病の予防接種を受けたことのない人は、流行状況を調べたうえで、積極的に受けるとよいだろう(ただし、A型肝炎予防接種を受けられるのは16歳以上のみ)。 東南アジア、インド、南アフリカなど、入国に際し、黄熱ワクチンの接種済み証明書を求める国もある。
不健康な状態では予防効果どころか、危険な状態に陥ることも。こんなときは予防接種を避けよう。
予防接種の実施は、市町村によって方法や時期が異なる。集団接種をおこなう場合もあれば、個別接種をする所もある。詳しくは地域の保健センターなどに問い合わせよう。
参考サイト:国立感染症研究所 感染症情報センター