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太陽の恵みを冬に味わう~レーズンで楽しいクリスマスを!

クリスマスを演出するお菓子に欠かせないレーズンは、さまざまな栄養成分を含み、健康を保つうえで重要なはたらきをする。流通や冷蔵技術が発達していなかった時代、長く寒い冬を過ごすヨーロッパの人々の貴重な栄養源だった。

名作「クリスマス・キャロル」に登場

クリスマス

ヨーロッパの人たちにとって、昔からの風習の上に成り立つクリスマスは、日本人にとってのお正月のようなもの。国や地域によって祝い方もさまざま。
例えばイギリスなら、人々が真っ先に思い浮かべるご馳走は、恐らくクリスマス・プディングと七面鳥だろう。これは、19世紀にディケンズが書いた名作「クリスマス・キャロル」によって、当時すたれかけていた風習が復活したものだとか。それほど、「クリスマス・キャロル」では、クリスマス・プディングや七面鳥が生き生きと描かれているのだ。

なかでも、クリスマス・プディングの登場シーンはまさにその極み。主人公の金持ちでケチなスクルージが、クリスマスの幽霊と共に見る部下の家のクリスマスディナー、そのハイライトとして現われるのが湯気に包まれたクリスマス・プディングである。しっかりと中身が詰まったプディングを、貧しい一家は幸せそうに大満足で平らげるのだ。

昔の人の知恵が詰まったドライフルーツ入りクリスマス菓子

レーズン

イギリスの人たちが楽しみにしているクリスマス・プディングは、レーズンなどドライフルーツとナッツなどがいっぱい詰まったクリスマス菓子。特徴的なのはケンネ脂という牛の脂肪を使うこと。材料を合わせたタネを1ヵ月間風通しのよい日陰に吊るしておき、クリスマスに蒸し茹でにするというなかなか手の込んだ料理。

イギリスのクリスマス菓子で私たち日本人に馴染みが深いのが、ドライフルーツがたっぷり入ったフルーツケーキだろう。ケーキ屋でもよく見るだろうし、お菓子の作り方を書いた本を見れば載っているので、作った経験のある人もいるのではないだろうか。

イギリスに限らず、ヨーロッパのクリスマス菓子には、ドライフルーツがたっぷり使われていることが多い。それは、新鮮な果物や野菜が手に入りにくいこと、また厳しい気候が続く冬の間、保存食であるドライフルーツが貴重な栄養源だったからだ。

ミネラル・食物繊維がたっぷり

ドライフルーツの栄養価はどのぐらいあるのだろうか。今回は、私たちが最も親しんでいるレーズンでみていこう。

レーズンの糖分は、砂糖より吸収されやすく効率のよいエネルギー源である果糖・ブドウ糖である。アメリカでは、マラソンなどスポーツの栄養補給源としても活躍している。また、天日干しをしたレーズンは、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛などミネラルがあり、生のぶどうの5倍から20倍も含んでいる。食物繊維も豊富だ。しかも、脂質は低く、コレステロールはゼロ。まさに天然のサプリメントというわけだ。

レーズンの栄養成分(可食部100g当たり)

レーズンぶどう(生)
エネルギー(kcal)30159
脂質(g)0.20.1
カリウム(mg)740130
カルシウム(mg)656
マグネシウム(mg)316
リン(mg)9015
鉄分(mg)2.30.1
食物繊維(g)4.10.5

出典:五訂食品成分表

生活習慣病予防にもレーズン!

生活習慣病予防にもレーズン!

最近は、レーズンに含まれるさまざまな成分の作用が、生活習慣病のリスクを低減することが分かり、注目を集めている。皮ごと食べるレーズンには、ワインで有名になった抗酸化作用のあるポリフェノール化合物の1種、エピカテキンも含まれている。清涼飲料や菓子の酸味料としても使用される酒石酸は、途中で吸収されずに結腸まで達し、腸内を健康な弱酸性状態にすると考えられている。食物繊維との相乗作用で、がんなど生活習慣病を予防するうえでも理想的だとも言われている。

さまざまな栄養成分を含み、健康を保つうえで重要なはたらきをするレーズン。流通や冷蔵技術が発達していなかった時代、長く寒い冬を過ごすヨーロッパの人々の貴重な栄養源であったのもうなずける。大切な保存食品をたっぷり使ったクリスマスのお菓子はちょっと大げさかもしれないが、生きる喜びを大切な人たちと分かち合う存在でもあったのだろう。

さあ、クリスマスには、そんな歴史に思いを馳せながら、栄養が詰まったレーズン入りお菓子を食べてみてはいかが?

参考文献:「クリスマスのお菓子」今田美奈子著 金の星社
「クリスマス・キャロル」ディケンズ作 脇明子訳 岩波少年文庫
カルフォルニア・レーズン協会資料

公開日:2003年12月8日