日本酒には体を温めるほか、多くの栄養成分が摂取できたり、生活習慣病などの予防にもつながったりとほかのお酒にない健康効果を期待できます。日本酒の効用や上手なつき合い方を紹介します。
温かい鍋物などがおいしい季節になってきました。となれば、まずは熱燗で一杯といきたいところ。飲めばお酒が体にしみわたっていくような…。実はこんな気分には、ちゃんと根拠があります。日本酒には、体を温めるのはもちろん、ほかのお酒にはないさまざまな健康効果まで期待できるのです。その秘密は原料と製法にあるようです。
お酒は、製法によって醸造酒、蒸留酒、混成酒の3種類に分けられます。簡単に言えば、醸造酒は原料を発酵させたもの。蒸留酒はその発酵液の蒸気が酒になります。混成酒はいろいろな酒を混ぜたり、果実などを加えたものです。
醸造酒 | 日本酒、ワイン、ビールなど |
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蒸留酒 | 焼酎、ウィスキー、ブランデーなど |
混成酒 | リキュール、梅酒など |
お酒は嗜好品なので、基本的に好きなものを飲めばよいのですが、健康効果を期待するなら醸造酒である日本酒がおすすめです。醸造酒には原料や発酵で生じる栄養成分がそのまま含まれているから。さらに、米と米麹を発酵させて造った日本酒はとりわけその栄養成分が多く、なんと700種類も含まれているという説もあります。アミノ酸、ビタミン、肝臓によいペプチドといった新陳代謝を高めるものや、体に必要な微量栄養素であるミネラルも豊富です。特にアミノ酸はワインの10~20倍もあるといいます。
種類 | 造り方 | 成分 | アルコール度数 |
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醸造酒 | 米、麦、ブドウ、サツマイモなどデンプンや糖分を含む原料を発酵させた発酵液を絞って造ります | 原料に含まれていた成分に加え、発酵過程の変化で生まれた多様な成分が溶け込んでいます | 低い |
蒸留酒 | 原料を発酵させた発酵液に熱を加え、蒸発した湯気を冷やして造ります | 微量成分が多く存在しますが、蒸発しない糖分、アミノ酸、脂肪、ミネラルは含まれません | 高い |
お酒のアルコール分は、体内でアルコール脱水素酵素によりアセトアルデヒドに分解されますが、このアセトアルデヒドには血管を拡張させる作用があります。お酒を飲んでしばらく経つと体が熱くなるのは、そのせいです。日本酒には、このほかアデノシンという核酸の一種がほかのお酒と比べて圧倒的に多いようです。このアデノシンには血管の収縮を阻害させる作用があるため、ほかのお酒より長く体が温まった状態が続きます。
血管が開いて体が温まるということは、血行がよくなるということ。冷えや肩こり、腰痛、肌の分泌がよくなる美容効果や老化防止も期待できそうです。
日本酒は生活習慣病などの予防にもつながると言われています。糖尿病、がん、心臓疾患、アレルギー抑制、ストレス解消、うつ病…。そして、特に注目されているのが動脈硬化予防です。動脈硬化は血中のコレステロール値が高くなることで促進されますが、このとき問題になるのが悪玉コレステロールです。
だからと言って悪玉コレステロールがひたすら悪者というわけではありません。最近の研究では、悪玉コレステロールそのものが悪いわけではないことがわかってきています。悪玉コレステロールを摂り過ぎると血中に長く留まることになります。すると、活性酸素の影響を受けて酸化変性を起こし、動脈硬化を引き起こすのです。日本酒など醸造酒に含まれる抗酸化物は、悪玉コレステロールの酸化変性を抑制してくれます。そして日本酒には、血栓を溶かす作用もあり、生活習慣病予防には心強い味方と言えそうです。
さまざまな健康効果を紹介しましたが、日本酒もアルコール飲料のひとつであることに違いはなく、飲み過ぎは禁物です。個人差はありますが、人間の体が一晩(8時間)に分解できるアルコール成分は35~36mm程度です。この量が日本酒だと約2合が目安となります。日本酒が二日酔いしやすいと言われるのは、焼酎など蒸留酒は水などで割って飲むことが多いのに対し、ストレートで飲むことが多いからでしょう。
また、日本酒は肥満や糖尿病の原因になると誤解されることがあります。しかし、これもアルコールが食欲を麻痺させるために、つい食べ過ぎてしまうことが原因です。食中酒として飲まれることが多いため、日本酒は、肥満の原因と思われてしまうのです。お酒を飲むときほど食べ過ぎに気をつけること。上手な食べ方としては、最初にアルコールの吸収をゆっくりさせる油料理を少量摂り、後はさっぱりしたたんぱく質食品、野菜を摂るように心がけましょう。特に、たんぱく質、ビタミンA、D、E、Kを含む食品をいっしょに摂るとよいと言われています。
日本酒といえば和食を連想することが多いが、実は洋食との相性もよいようです。なかでもチーズとの相性はバツグンだとか。健康や美容のためだけではなく、さまざまな料理に日本酒を合わせてみましょう。意外なハーモニーを発見でき、飲む楽しみが増えるかもしれません。ただし、くれぐれも飲み過ぎにはご注意ください。
取材協力/資料提供:日本酒造組合中央会