疾患・特集

なぜなる!?熱中症のメカニズム

毎年、夏になると話題にあがる「熱中症」。炎天下の屋外だけでなく、室内でも熱中症になる危険はあります。「自分はならない」と高を括って、対策を怠っている人も多いかもしれません。酷くなると生命の危険を伴う可能性のある熱中症。自分の対策もそうですが、周囲の人が熱中症になった時に、正しい対処が素早くできるように、原因と対処法を理解しておくことが大切です。

生命の危険もある「熱中症」とは

夏真っ盛り。バカンス気分も満開のこの時期、毎年ニュースにのぼってくるもののひとつに「熱中症」があります。「車内で留守番をしていた子どもが熱中症で重体」「海辺でバーベキューをしていた会社員が熱中症で倒れた」…。

毎年のことだけに、熱中症については多くの人がよく知っているように感じられますが、さて、あなたは、熱中症について、また、その原因や予防、対処法を知っているでしょうか!?

「熱中症」は日射病や熱射病などの総称で、 「高温下での運動や労働のため、発汗や循環系に異常をきたして起こる病気。体温上昇、発汗停止とともに虚脱・けいれん・精神錯乱・昏睡などを起こし、生命の危険を伴うこともある」とされています。
日差しが強く、気温がぐんぐん上昇する夏場は思いがけず症状の進行も早いので要注意です。

熱中症のメカニズム

熱中症を引き起こすそもそもの根底には、ヒトの体温を調節するメカニズムがあります。熱中症のメカニズムを体温調節の仕組みから見てみましょう。

  • 1. 皮膚の表面から空気中へ熱を放出する
  • 2. 汗をかき、その汗が蒸発するときに熱を奪うはたらき(気化熱)を利用する

体温よりも気温が低ければ、皮膚から空気中へ熱が移りやすく、体温の上昇を抑えることができます。また、湿度が低ければ汗をかくことで熱が奪われ、体温を上手にコントロールすることができます。
しかし、気温が体温より高くなると、空気中への熱の放出が難しくなるため、体温調節は発汗だけに頼ることになります。ところが真夏日によくあるように、気温が高いばかりでなく、湿度も75%以上になると、汗をかいても流れ落ちるばかりでほとんどほとんど蒸発しなくなります。そのため、発汗による体温調節すら事実上できなくなってしまうのです。
また、体温が37℃を超えると皮膚の血管が拡張し、皮膚の血液量を増やして熱を放出しようとします。しかし、このとき体温がさらに上昇し、発汗などによって体の水分量が極端に減ると、今度は心臓や脳を守るために血管が収縮しはじめます。つまり、ここでも熱が放出できなくなってしまうのです。

熱中症は、こうして体温を調整する機能がコントロールを失い、体温がグングン上昇してしまう機能障害です。実は、炎天下ばかりでなく、室内で静かに過ごしていても起こり得る病気。実際、高齢者が室内で熱中症になって倒れているのを発見されるというケースも少なくありません。

体温より気温が低く、湿度も低い場合

体温より気温が高く、湿度も高い場合

こんな症状があったら熱中症を疑ってみて

熱中症は、ほぼ次の4つに分類されます。

熱中症の分類

  症状 主な原因
熱失神 めまいがしたり、失神したりする。 高温や直射日光によって血管が拡張し、血圧が下がることによって生じます。
熱けいれん 暑いなかでの運動や作業中に起こりやすい、痛みを伴った筋肉のけいれん。脚や腹部の筋肉に発生しやすい。 汗をかくと、水分と一緒に塩分も失われますが、この熱けいれんは血液中の塩分が低くなり過ぎて起こる症状。水分を補給しないで活動を続けたときはもちろん、水分だけを補給したときにも発生しやすくなります。
熱疲労 たくさんの汗をかき、皮膚は青白く、体温は正常かやや高め。めまい、頭痛、吐き気、倦怠感を伴うことも多い。 体内の水分や塩分不足、いわゆる脱水症状によるものです。死に至ることもある熱射病の前段階ともいわれ、この段階での対処が重要となります。
熱射病 汗をかいておらず、皮膚は赤く熱っぽく、体温は39℃を超えることが多い。めまい、吐き気、頭痛のほか、意識障害、錯乱、昏睡、全身けいれんなどを伴うこともある。 水分や塩分の不足から体温調節機能が異常をきたした状態です。そのままでは死に至ることもあります。極めて緊急に対処し、救急車を手配する必要があります。

ちなみに、よくいう「日射病」は、医師によって見解が異なります。熱失神=日射病とする説、日光によって熱けいれんなどの症状を起こした場合を日射病とする説などがあるようです。いずれの場合も、熱によって引き起こされる機能障害であり、すばやい対処が症状を悪化させない重要なポイントであることに変わりはありません。

また、「熱中症は夏だけの病気」ではありません。激しいスポーツや重労働の場合は季節を問わず、いつでも起こる可能性があります。例えば冬に暖房のよく効いた室内で厚着をしていて起こる場合もあります。

熱中症が危険なのは、自分では「ちょっと体調が悪い」「少し気持ちが悪い」程度と思っている間に症状が進んでしまうケースも多いから。周囲の人の気遣いに「大丈夫」と答えたすぐ後に倒れてしまう場合もあります。
毎年被害が跡を絶たないのは、自分で気づきにくい、または「たいしたことはない」と感じてしまうことが多いからでしょう。

炎天下や暑い場所に長くいる間は、自分で気をつけるのはもちろん、周囲の人間同士で気をつけ合うことが何より大切です。

公開日:2003/08/11