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快適な旅行のための「エコノミークラス症候群」予防と対策

エコノミークラス症候群を予防するには、こまめに水分を取ったり、動いたりすること。中高年がなりやすいと思われていたが、若い人にも起こる。また飛行機以外の乗り物でも要注意。

エコノミークラス症候群を防ぐ!

せっかくの旅行が台無しにならないよう、エコノミークラス症候群を防ぐポイントをチェックしておこう。

◆水分を補給しよう

特に女性は、水分を摂るとトイレに行きたくなるため、乗り物に乗ったときに水分を摂らないようにするケースがある。これではかえって血液濃度が濃くなり、血液がどろどろになってしまう。
そこで大切なのが水分補給。長時間乗り物に乗るときは、水やソフトドリンクなどを1時間ごとにコップ1杯程度飲むのがベスト。とはいえ、コーヒーや緑茶などカフェインの入った飲み物は利尿効果があり、飲んだ以上に水分となって体外に出ていってしまう。またビールやワインなどのアルコール類も同じように利尿効果があるため、避けたほうがよい。
ある実験によると、水よりもイオン飲料のほうが尿量が少なく、体内に残っている水分量が多くなるという結果が出ている。
こまめに水分補給するよう、心がけよう。また、搭乗前に軽い食事を摂っておくとよい。

◆体を動かそう

狭い機内でしかも窓側に座ると、「ちょっとすいません…」と言いながら、席を立つのを遠慮してしまいがち。ついつい座りっぱなし…という結果が血栓をつくる原因になる。
本当は、席を立ってちょっと動いたりできるとよいのだが、なかなかそうもいかない場合には、座ったままでもよいので足を動かすようにしよう。血のかたまりはふくらはぎやひざの裏にできやすいため、足のかかとやつま先を上下させたり、足の指を動かすことでも効果あり。さらに、ふくらはぎをもんだり、足首をぐるぐる回してみよう。

◆体をしめつけない服装で

窮屈な服は、血液の流れを悪くしてしまう。できるだけゆったりとした服を着よう。

◆思い当たることがあるなら、主治医に相談を

動脈硬化や高脂血症、糖尿病などを患っていたり、大きな手術をした、足を骨折した、など血が固まりやすい危険因子に思い当たるなら、血を固まりにくくする薬もあるので、一度主治医に相談してみよう。

万が一、危険を感じたら…

もし、飛行機を降りるときに太ももより下の足が痛かったり、腫れたり、妙に赤くなっていたりしたら、まず立ちあがらないで乗務員に相談しよう。動くことによって血栓が肺に移動してしまう可能性があるので、おかしいな?と思ったら遠慮せずに伝えること。
また、胸が苦しいとか呼吸困難などの症状があるときも同じだ。
ちなみに、エコノミークラス症候群は着陸直後だけでなく、1週間くらいしてから苦しくなることもあり、我慢していると呼吸困難になってしまうこともあるので、早めに周りの手を借りて医師の診断を受けよう。

エコノミークラス症候群の事例

1994年から2000年までに起きたエコノミークラス症候群の事例(成田赤十字病院調べ)

  • ●男性2例、女性19例。平均60.3±9.8歳で、1例を除いて40歳以上
  • ●平均身長156.8±6.5cm、平均体重59.3±8.2kg
  • ●すべて8時間以上の飛行時間。座席はエコノミークラスだった。発症前に席を立った回数は、14例が0回
  • ●呼吸困難、胸痛、動悸、意識消失など。機内で起こったのが10例、残りの11例は空港内で起こった。ほとんどの症例は、初めて席を立った直後に発症

この報告によると、女性の19例のうち、15例は身長160cm未満で体格は肥満気味という特徴があった。「背が低い人は座った姿勢の時に足が圧迫され、血液がうっ血しやすくなるのでは?」とみられている。

日本人が肺塞栓症を起こす確率は人口100万人に対し、年間28人とされている。また、厚生労働省によると肺塞栓による死亡はこの10年間に2.8倍に増加している。

公開日:2003年7月7日