疾患・特集

なぜなる?どう違う?左利き・右利き

人間には右利きの人、左利きの人がいますが、これはなぜでしょうか?利き手と脳のはたらきはリンクしているそうです。そんな利き手と脳の不思議な関係に迫ります。

脳のはたらきは利き手で違う!?

利き手と脳は、よく知られているように右手は左脳と、左手は右脳と繋がっている。目や耳もしかり。クロスするカタチで左右の脳と密接に結びついているのだ。だが、目や耳よりも、利き手による脳の違いのほうが圧倒的に大きいことが解明されてきている。では、利き手によって、脳のはたらきにどんな違いがあるのだろう!?まずは、右利き・左利きが決まる時期から見ていってみよう。

利き手は、3~4歳で決まる

右利き、左利き、あなたはどちらだろう!?人間は、世界の国々を見渡してもほとんどが右利きで、左利きの人は、全体の約10%くらいしかいないと言われている。しかも、右利きが圧倒的に多いのは、生き物の中でも人類だけに見られる顕著な特徴だというのをご存知だろうか。

人類は二足歩行をはじめ、道具を使い、言葉を操るようになる進化の過程で、脳が大きく発達し、それとともに右利きが増えたと言われている。この進化の過程は、生まれて間もない子供たちの発達の過程でもうかがい知ることができる。

0~2歳くらいの子供の様子を見てみると、今日は右手で積み木遊びをしていたかと思うと、明日は左手で絵を描いているといった具合で、左右どちらの手もランダムに使っているのだ。その子供たちの利き手がしっかり決まってくるのは、だいたい3~4歳くらい。では、なぜ、このとき、左利きになる子供がいるのだろうか!?

左利きになる原因は、いまだ解明途上

左利きになる理由には諸説ある。ひとつは遺伝説。しかし、これは一卵性双生児でも一人は右利き、もう一人が左利きになる子供がいることで信憑性が少ないとされている。

もうひとつは、利き手が決まる3~4歳くらいまでに左手を使うことが多かった子は左利きになるという環境説。さらには、胎内での成長過程もしくは出産時に何らかの原因で左脳を圧迫する事態が発生し、その左脳のはたらきを補うために右脳が活発になって左利きになるという説もある。

だが、現在のところ、どの説が有力とも言い切れないようだ。
ただ、左利きの場合、脳の作りが右利きと違う人がいることは解明されている。なぜなら、左利きの人の脳は、次の3種類にわけることができるからだ。

左利きの人の脳の種類

  • 右利きの人の脳とあまり変わらない
  • 左右の脳が反対になっている
  • 言語能力(右利きでは左脳)や空間能力(右利きでは右脳)が左右両方にある

右利きと変わらない場合や左右の脳が反対になっている場合は、単に利き手が違うだけともいえる。だが、言語能力や空間能力が左右両方の脳にあるケースでは、右利きの人よりも、左右両方の脳を使う頻度が高いと言えるだろう。これは統計的にも実証されており、話をするときに主に左脳だけを使うのは、右利きの大人の場合90~95%なのに対し、左利きでは約60%と少ないのだ。つまり、左利きの人の残り40%の多くが、左右の脳を駆使して話をしていると考えられる。

左右の脳をバランスよく鍛えて活かそう

せっかく左脳と右脳があるのだ。どちらか一方ばかりを使っているのは少しもったいない。右利きの人も、左手をもっと使うことによって、左右の脳をより良く活かそう!

ただ、右脳と左脳はさまざまな役割を分担してはいるが、最終的に決定を下し、何かを実行に移すには、両方の脳が総合的にはたらいてこそ実現するのだ。どちらの脳が優れている、といった問題ではないことに留意しておきたい。要はバランス。どちらかの脳を活かす、というのではなく、両方の脳を活かしきることを考えよう。

両方の脳を活かす

ちなみに、利き手や左右の脳の違いを病気という切り口で見ると、「左脳より右脳のほうが傷つきやすい」という特徴があげられる。例えば左脳で卒中が起こって右半身不随になるのは、左半身不随になる人の約4倍。脳が受ける損傷も、左脳のほうが約2.5倍も多いのだ。

一方、左利きの人の病気にも特徴がある。左利きの場合は睡眠障害や斜視になりやすく、聴覚障害になる確率は、右利きの約2.5倍。さらに、あらゆることを左手で行うような左利きの場合は、アレルギーや花粉症などの免疫系の病気になる確率が右利きの約2.5倍にもなるともいわれている。利き手によってかかりやすい病気にも違いがあるわけだ。この点は、十分に気をつけたい。

ワンポイント子育て講座:左利きは矯正したほうがいい?

左利きの子供を持つ両親にとって気になるのが、左利きは矯正したほうが良いのか、という問題だろう。確かに左利きは、日常生活のさまざまな面で不便なことが多い。例えば左手では紙に文字を書きにくいし、ハサミも使いにくい。左利き用のさまざまな道具が出回っているとはいえ、右利きでは気づかないような場面で苦労しているものだ。

だが、無理な矯正は、子供の気持ちを委縮させてしまい、ひどいときは夜尿症などの神経症になってしまうこともある、というのが多くの医師の意見だ。

どうしても気になるときで、子供が3歳前後までの幼い間なら、遊びの中に右手を使うシーンを増やし、楽しく練習させるのが一番。遊びなら、楽しく習慣づけられる。
だが、それでも左利きになるようなら、それは子供の個性のひとつとして、やさしく受け入れてあげよう。

公開日:2003年2月10日